2、晩餐会へのお誘い
連載投稿の手順に、まだまだ右往左往。
私は魔王討伐の密着取材を明日に控え、ワンディール学園寮の自室で最後の持ち物検査をしていた。
「えーっと、魔法石動式カメラOK。途中補充するだろうから三日分くらいの行動食OK。着替えも三日分くらいのと、寒暖着と〜、あとは、、、宿題の魔術式ドリルと、古代語の書取りノートと、音読の本と筆記用具で、大体オッケーかな。」
「ええ〜、全然足りな〜い。」
「!そっか、おやつだ。購買行ってくるか!」
「ふふふ、違う違う。お年頃なのに、お肌ケア用品は?まだまだ持ち物が足りないじゃない。それと食後の茶葉も持たずに行くの〜?」
声の方へ目を向けると、あの美脚美人が居た。
私は再びガン見しながらも、今度は手近にカメラがある事を確認しつつ、最速最短で必要最小限の問いかけをした。
「こんにちは。えーっと、あの美脚さまの、その、、、お名前を伺いたく、、、」
すると、美しい美脚の人は、クスクスと笑い出した。
笑い方も可憐で良いなぁ。背も高いし男の子の声だけど、こんなに可憐に笑えるんだ、と私は思わずまた最初の出会いの時のように、しばし見惚れてしまった。
「ごめんなさい。あなたみたいに言ってくる子が珍しくてつい、、、。私はレンモンド・ファラディ。レンって呼んでくれていいわ。」
私はレン様に、きちんと向き合って、自己紹介をした。
「私はハル・リーベント。皆からは「エネ子」って呼ばれています。」
レンは、またクスクスと楽しそうに笑った。
「一文字も被ってないじゃない。面白い人ね、エネ子さん。一緒に旅をするのが楽しみだわ。」
私もレン様に同行密着出来るのが大変楽しみで、、、という言葉を私は飲み込んだ。
出立を前に、ドン引きされたら堪らないからである。
撮影の効率的にも大変良くない。
しかし美脚の人は、今日も惜し気もなく短いスカートから、美しい肢体を曝け出していた。
私の前世居た『ニホン』では八百万の神が居た。
きっと脚の神様が居たら、拝んだかもしれない。
いや、今拝みたかった。
お賽銭箱、何処ですか?
「今夜は顔合わせも兼ねて、寮の食堂でちょっとした晩餐会があるのよ。そのお誘いに来たの。」
あれ?国を挙げての魔王討伐の行幸なのに、そういえば国王の招きが無いような、、、?
「わざわざありがとうございます。えっとドレスコードは、、、」
私が少し焦って言うと、レン様はにこりと優しく微笑んだ。
「制服で構わないわ。本当に関係する人らだけの、ごく小さな晩餐会だから。」
そう言ったレン様の、美しいブルーの目に、ほんの少しだけ、影が落ちた気がした。
美しい人は何やっても絵になるよなぁ。と再び私はその様子を、この国のヒストリカルな記憶として残さねばと言わんばかりに、自分の目に焼き付けた。
「じゃあ、晩餐会で会いましょうね。いつもの食事時間に来てもらえれば良いわ。」
「はい。わかりました。」
去って行くレン様の残り香が、私の自室にフワッと広がった。
美人は去った後も美人だよなぁと、独りごちて、私は指で愛用のカメラを、そっと撫でた。
お読みいただき、ありがとうございます。