キカンシタヒトリメ
仲間の帰還を待つこと数日
「おーい,ウズラー!!アサリー!!」
一人が帰ってきたようだ。俺らの名前を呼びながら,ぶんぶんと手を振りながら,近づいてくる。
「元気だったか,お前ら」
「おう,元気だぞ,お前も元気そうじゃねぇか」
「あたぼうよ」
こいつはハチヨウ。俺の部下の中でも付き合いが最も長いやつだ。
「ハチヨウ殿,領主殿を呼び捨てにするのはやめろ!!」
「アサリは相変わらず,ウズラを溺愛してんな。悪かったよ,悪かった,ウズラ様って呼ぶから。なっ,ウズラ様」
「やめろ,今更お前に様付けされても気持ち悪いだけだ。お前もいいんだぞ,俺を呼び捨てにしても。名前の呼び方くらいなんだっていい」
「領主殿をよ…呼び捨てに!?……ウ…ウズ………ウ……ウー…………」
何故かアサリは遠くへ行ってしまった。
「あいつは何をやってんだ。まぁいい。ところで何か有益な情報でも手に入ったか?」
「どうやらここ数日,カステイラとワラスーボが小競り合いを起こしていたらしい」
「そうか,ワラスーボのやつが自分の領地を通るやつを素通りさせるなんておかしいと思ったが,そんな事情があったのか」
「ただ,その争いも収束したらしいぞ。ウズラ」
「なるほどな,早いうちにここから逃げ出さないとな」
「ん?行けるところが見つかったのか?」
「ああ,そうだ。この件については他の二人が帰ってきてから詳しく話すが…毒沼の中の冒険だ」
「毒沼の中ぁ?」
帰還した一人目の仲間と共に他の仲間の帰りを待つのだった。