ホウシンガキマラヌ
「しかし,でっかい毒沼だな」
「この毒沼でどのようにすれば生活できるのでしょうか。埋め立てでもしてみますか。領主殿」
「いや,それはだめだ。この毒が地面を侵食するとも限らないし。とりあえずどうしてここが毒沼になっているかを確認しなきゃな」
そもそもこの沼はどうして毒沼になったのだろうか。自然に毒沼になることはないと思う。水中に毒が溶けているなら分かるが,こうも毒が中心の沼は見たことがない。
「どうやってこんなに広い毒沼を探索するんですか。対岸も見えませんよ。なんでも一周するのに一年以上かかるという話も聞きます。領主殿」
「そりゃあ,歩いて回ったらの話だろ」
「船で行きますか。領主殿」
「いやいや,そんなことして船が侵食されたらヤバイだろ。こういうときは毒に触れずに魔法で飛べばいいじゃないか」
「魔力の扱いが上手い領主殿なら長時間の飛行も可能かもしれませんが我々には無理ですよ。もしかして領主殿だけで探索するんですか。」
「俺だけで探索をすると時間が足りないもんな」
確かに俺以外が対岸も見えないところまで飛ぶのは危険すぎる。いや俺ですら魔力切れで毒沼にドボンしてしまう可能性がある。そもそもこんな広いところを一人で探索とかどれだけ時間がかかるか。
「食料の確保だけでもしないとな」
早くここでの生活をやめて毒沼で生活をしなければならない。作物を育てるには時期が大切だ。食べ物の備蓄は今までの領地で余剰生産したものが俺の収納魔法に入っている。だが無限に保つものでもない。だがそれ以上に沼の手前で止まっているのは問題がある。
「早く探索を終わらせる方法とか,毒沼の中で生活できる方法が見つかるといいんですが,わたしには思いつきません。領主殿」
「そうか。奇遇だな俺にも思いつかないぞ。マジで今回は困ったな」
「本当にこんなところに住めるんですかねぇ…」
こうして何も方針が決まらぬままただ時間だけが過ぎて行った。