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75 先鋒戦

 白い塔を正面に見据えて設置された、正面が開いた大きなテントの中から、シュルマイアーは二人の戦士が近づいていく様を見ていた。

「ほう、マクダイン閣下、先鋒は『首狩りアインス』こと、アインス卿ですか」

「ガッハッハ、これまで戦場で数多の首をとってきた彼奴であれば初戦を景気良く飾ってくれよう! なんせ奴が手にしている魔剣『ラーシュ』は、どんな時でも真っ直ぐ相手の首へと向かって行くからな。最初の一太刀で終わるであろう!」


「それにしても、敵の先鋒は鎧もつけていない? 女?」

 この距離では鑑定も使えないため、シュルマイアーは眉をひそめて咲夜を見ていた。


◇◆◇◆◇



「はあっ!」

 ドガッ! ドガガッ! ドガガッ!

 2m以上はあろうかという長剣を振りかぶり、見定めた敵へと真っ直ぐ馬を走らせるアインス卿


<ヒヒャ、ヒヒャヒャ! オオ女、女ノ細首ダァ!>

(うるさいぞ、ラーシュ、ガタガタ動くな!)

 アインスは頭の中に響いてくる魔剣『ラーシュ』と会話をしていた。


<オ、オオオレニマカセロ! アノ、シロクテ、ヤワラカソウナ、、>

(もうすぐ接敵する! 行くぞ!)


 ドガガッ! ドガガッ!


 構える咲夜の左側に抜けるように馬を走らせ、右手で握った長剣を薙ぎ払うように振りおろす!


<クゥビィィィイイイ!!!>

 吸い込まれるように咲夜の首へとまっすぐに空中を走る銀色の線!

 これに対し咲夜は左下から右上へと大きく切り上げる!!


 バギィィィイイン!!!


「ぐぁっ!!」

 咲夜の光の剣にはじかれ、剣を握ったアインスの右腕が大きく跳ね上げられた!

<ギッ、、、ギャアァァァアアアアア!!!>

 アインスの叫び声に続いて魔剣ラーシュが悲鳴を上げる!

 昨夜の光の剣に跳ね上げられた魔剣は、切っ先から30cmほどの位置が半円状にえぐられていた。

<イギャア! イデェェェエエエ!!>


「はぁぁああ!!」

 ヴォン! ヴォヴォン!!

 馬上のアインスが怯んだと見るや、光の剣を2mほどに伸ばし、斬りかかる咲夜!


 バギン! バギガギン!

「ぐっ があっ!」

 剣と盾を削られ、防戦一方になる馬上のアインス

 魔剣はいたるところが半円状にえぐれ、盾は当たったところからへこみゆがんでいく


<ギャッ! ギギャッ!! サ、サガレ、サガルンダヨ! アインス!!>

「くっ、わかってる!」

 アインスは馬上よりスクラップとなった金属製の盾を咲夜へと投げつけて馬を走らせ、離脱を計った。


<マ、マホウダ! マホウヲ打ッテソノウシロカラツッコメ!!>

「ああ! 判っている!」

 アインスが離れたところから咲夜へ向かって左手を伸ばすと、その手首の周りに3つの赤い魔法陣が現れた!

 数秒後、魔法陣は燃え上がり、3つの炎の球が浮かび上がる!


「行けっ!!」

 アインスの指が咲夜を指差す!

 ボッ! ボボッ!!

 3つの炎の球が高速で飛翔し咲夜を襲う!


 咲夜は真っ直ぐに立ったまま、襲いくる炎の球へと左手をかざした。

「…アドリア、メアリ、ルイーセ、ドロシー、この力、貴方達と共に、」

 咲夜の前の空間が厚みを増していくかのように歪んでいく!


「オオオオオ!」

 炎の球に遅れて魔剣を振りかぶり突撃してくるアインス!


 ポシュゥ、ポポシュゥゥ、、


 歪んだ空間に触れた炎の球があっけなく消えていく!


「オオオオオオオ!!」

「はぁぁああああああ!!」


 バギィィィイイイインンン!!!


 剣と剣が合わさり、打ち合いに負けたアインスが、馬上から吹き飛んでいく。


<ギャアアアアアァァァァ、、ァ、ァ、>

 アインスの手を離れた魔剣も真っ二つに折れ、飛んで行った。



「勝った、か、、」

 平原に仰向けになって倒れたアインスを見ながら咲夜がつぶやく。


 数人の兵士たちがサウザーラの陣から走り出してきて、咲夜の方をチラチラと見ながらアインスの方へと走り寄る。

 怯えた目で咲夜を見ながらアインスを介抱する兵士たち。中には涙目になっているものもいる。アインスの家の者達だろうか、震えながらも、倒れたアインスをかばうように咲夜との間に立つ少年や老兵もいる。


「…トドメはささん、連れて行け」

 咲夜の言葉を聞き、兵士たちがアインスを抱えて陣へと早足で引いていく。一番後ろにいた老兵が、咲夜に向かって深々と一礼をしたのに対し、咲夜は小さく頷いた。

 アインス達が去った後、残心をしていた咲夜も引き上げた。





『タロー、』

「ああ、白虎様、わかってるよ」

 他の連中には聞こえていなかったようだが、俺は戦闘中ギャアギャア喚くうるさい声に辟易していた。悪意の塊のような声だ。

 今、その声の主である剣はボロボロになって折れた状態で土の上に転がり、、黒いモヤのようなものを発している。

 俺は城門の上の櫓から降りて引き上げて来る咲夜を見ながら警戒をしていた。


<グ、グ、、、グビヲヲヲ!! ヨゴゼェェェエエエ!>


 黒いモヤは不安定ながらも人のような形を作って咲夜の背中から襲いかかってきた!

 頭でっかちで細い体と長細い手足、そして体と同じほどの長さに伸ばした爪を振りかざす!


 ベィン!!

<グギャッ!!>


 門の下にいる俺の袴から、白い虎の腕がシュバッと伸び、咲夜に襲いかかろうとしていた黒い魔物を地面に叩きつける! そしてスナップを効かせて爪に引っ掛け、素早く俺の元へと運んできた!


<ギャ?! ギャギャ?>

『ゴァアアアア!!』

 俺の腹の前で顔を出し、大口を開ける白虎様、


<ギャピ! 雪原ノ白姫シラヒメ!! ナゼココニ?!>

『ガフッ! ガフガフ、、』

<ギャ、、ヒッ! ヤメ、タベナッ、アッ、ギャッ、、、アァ、、>

 …食っちゃったよ、、白虎様、、


「うまいの?」

『マッズ、、めちゃマッズ、、まあでもこんなチンケな悪魔でも現界するためのエネルギーの足しにはなったかなー? あー、口直しにミキヒロのスイーツ食べたいなー』

「はいはい、幹宏に頼んでおくよ」


 さてさて、次鋒は誰で行くかな、、と考えていたら、、



「ヒャッハーー! 次は俺だぁ!」

 あ、、、黒浩二が勝手に飛び出しやがった! 炎の球を体の周りに数十と浮かべてグルグル回している。

 サウザーラ軍からはまだ誰も出てこない。

お読みいただきありがとうございます

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