68 憑いてきちゃった
# カルロンさん視点から始まります
「「「うぉおおお! タロー陛下バンザーイ!!」」」
歓喜に沸くラフェリアの住民たち。
それにしてもこの熱気は凄まじい。それもそのはずだ、私はエオリアの外相として様々な国の王や将軍、賢者、英雄と呼ばれる方達と会ってきたが、、タロー陛下は明らかに格が違いすぎる!
なんだ? この圧倒的なまでの風格と圧力は!!
今までの気さくで触れ合いやすい感じはこの方の優しさ故の演技だったのではなかろうか?
気づけばラフェリアの住民ではない私まで、全身が粟立ち、熱気に汗を流し、手を握りしめて感動していた。
簾の中から出てきたタロー陛下の姿は、、頭部以外はその鍛えられ引き締まった体にフィットした黒の鎧で覆われていた。それは六角形を基調とした漆黒のプレートが組み合わさって作られており、胸には太い金の光のラインが走っている。
そして腰から下はまるで宝石を砕いてふりまいたかのように白く輝く美しい獣の毛皮を履いており、腰の後ろからは獣人のような長い尻尾?が生えていた。
極め付けは首の付け根から背中にかけて生えている翼だ。タロー陛下が姿勢を正すと、赤から橙、黄色のグラデーションが美しい光の翼は大きく左右に広がり、左右の翼をつなぐように光の輪がタロー陛下の後ろに現れる! これは、、日輪! 朝日の輝き! 私は、、神の降臨でも見ているのか?!
右手に持たれているスコップも、今までの物は普通の木の柄のスコップが時々青く輝いていた風だったものが一変していた。全体が青く輝く美しい鱗で覆われ、見ているだけで吸い込まれそうな、だが天から落ちる雷の様に人が触れてはいけないものの様な、これは、、そうだ、聖光天神教の総本山で見た光り輝く神器のようだ!
ただ、1つだけこの歓喜の渦にそぐわないものがあるとすれば、、
タロー陛下が一瞬見せた、悲しみを隠した様な瞳と苦悩を隠した様な表情だった、、
◇◆◇◆◇
…戦争、そんなものを起こして、仲間を連れて行って、敵と戦って、死なせて、、、罪の意識に押し潰されそうだ、、
だけど、、戦うって決めたんだ!!
一度、力一杯奥歯を噛み締めるとギュリッッ、と音がした。そして顔を上げ目を力いっぱい開き胸を張ると、それに呼応するように背中の翼が開き、朝日の様な光が俺のシルエットを浮かび上がらせる。
俺は一度大きく息を吸ってみんなに告げた。
「ラフェリア軍、全軍に告ぐ!! ラフェリアは、、非道国家サウザーラの現政権である王政を叩き潰す! もはや彼らの非道は挙げ連ねる必要もあるまい!
ラフェリアの兵士たちよ!
立て!!」
「「オウッ!!」」
武者座りをしていた兵士たちは、飛び上がる様にして立ち上がり、拳を天に突き上げて叫ぶ。
「「「「ラフェリア、万歳!! タロー陛下、万歳!!」」」」
住民たちも声を張り上げてラフェリアと俺の名を叫び続けた。
…ラフェリアは、、どこへ向か、、
違う!! 他人事のように言うな!!
ラフェリアの人々の先頭に立って歩いているのは俺だ!
間違えるな!!
「太郎さん、、お疲れ様」
城へ入り、住民たちから見えなくなった後、城内の暗い廊下で雫が立ち止まり、俺の左手を両手で握りしめてくれた。
「ありがとう、雫、、」
雫に向かって微笑むと、、雫は両手を伸ばし、そっと俺の頬を優しくなでてくれた。
「ラフェリアの太郎さん、みんなの太郎さん、そして、私の、、愛しい太郎さん、、」
「ああ、」
「こんなに、、顔をこわばらせて、、まるで氷みたい」
そう言って俺の顔と首筋をゆっくりと両手でさすり、ほぐしてくれる、、
ああ、、氷のように強張っていた顔の筋肉が、、ゆっくり融けていくようだ、、
「太郎さん、、大丈夫だから、みんな太郎さんを信じているから。だから、、太郎さんも自分を信じて、」
「ああ、ありがとう、、もう大丈夫だ、雫」
晴れ晴れとした顔と心で返事をする。
ほんとうに、、雫がいてくれてよかった。
◇◆◇◆◇
「…… オーリ8世からいただいたサウザーラ軍の資料から考えるとだ、敵の作戦はこんなところだ。奇策などの危険は冒してこないだろう、その意味がない。まあぶっちゃけて言うと、だ、相手は数万から数十万、こちらは良くて数百、数の上では全く相手にならないってこった」
ここはラフェリア城内に設けた会議室。大きなテーブルに広げた地図と、手元の資料を見ながら照夫が解説していた。
「やっぱり俺がまっすぐ叩き潰しに行くか?」
「いや、太郎、それは愚策だ。国と国の戦いじゃなく、ただの災害級の化物が暴れただけと同じになって相手の団結を誘い、結局その後何も変わらなくなる。民衆も皆殺しにするならともかく、この世界を変えたければ、ラフェリアの兵達もしっかり戦って、ラフェリアの勝利にすることが大事なんだ」
「そうか」
「そのためには、だ、ラフェリア軍をオフェンスとディフェンスの2つに分けて、片やサウザーラを攻略、片や攻めてくる敵軍からラフェリアを防衛する。大軍であればいくつも軍を分けることが出来るが、ラフェリア軍は寡兵で2つが精いっぱい。まあ、太郎の機動力と戦闘力なら両方兼ねられるだろうが、そこはオフェンスに専念してくれ」
なんかスポーツみたいな例えだな。そういや照夫、バスケ部だったかな?
「そうか、で、俺以外のオフェンスは?」
「ラフェリア兵50に俺たちのチームが5人、そこに太郎を合わせて56名だ。カルロンさん達を入れても60名というところか。
それでディフェンスの方だが、、春野さん」
「田中です」
う、、雫の微笑みが怖い。照夫も一瞬フリーズしている、
「ええと、田中雫さま、この城をお願いしても? 太郎陛下以外にこの城の防衛機能を使えるのは雫様だけなので」
「はい、留守は任せて下さい」
まあ、この城はかなり頑丈に作った上に、四神様たちの加護もあるからそう簡単に落ちんだろ、それに、、
「雫! 私も手伝うからね!」
「一緒に頑張ろうね!」
「んふふ、、屈強な殿方達を好き放題できるのですね、、」
「女王陛下は私が守る!」
雫には柳田が連れてきた女子5名(勇者)がついている。デザートドラゴン戦でも活躍していたツワモノ達だ。一部アブナイ奴もいるので、敵兵がちょっと気の毒になってきたが、、
で、当の柳田はというと、、
「ほっ! へやっ! とう!」
「…何やってんだ柳田、さっきから俺の後ろで」
「もーー! タロちゃんシッポモフらせてよー!」
俺の後ろで、袴から生えている長いシッポにあしらわれていた。
「よう、頭使うと腹減るだろ、お茶にしようぜ」
そこへ幹宏が大きなトレーに菓子パンを沢山乗せて持ってきた。モニカさん達もワゴンにお茶を乗せて幹宏の後ろに続いている。
「やたっ! うわーすっごいモフモフ!」
ピタッと立ったまま動きの止まった尻尾を捕まえて頬ずりする柳田、と思いきや、、
ヒュン!
尻尾が伸びて菓子パンを3つ掴み取ると、素早く俺の腰のところに持ってきた。
「こ、これもうめーな! さすがミキヒロだな!」
プロレスのチャンピオンベルトのように、俺の腹の上に現れた白虎様の顔が菓子パンにかじりつく。
俺の腹に生えた白い虎の少女の顔を見て、全員が目を見開いて固まる、
あちゃー、、、
「た、太郎、、それ、、」
「白虎様だよ、、この袴、実は装備じゃなくってな、、」
「憑いてきちゃった、てへ」
可愛く言ってもダメです、白虎様
お読みいただきありがとうございます




