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61 ホラン村

文中に残酷な表現があります。ご注意ください。


 ラフェリアからホラン村への帰路について3日目、アドリアたち家族は、背の高い草むらの中で昼食のための休憩を取っていた。アドリアが剣で草を刈ったところにチェック柄の敷物を広げ、妻のメイリがそこに座ると小さなルイーセとドロシーが 「「おかーさん!」」 と言いながら左右から抱きついてくる。


「ちょっと待っててねあなたたち、今ごはんをあげるから」

 そう言ってリュックの中からパンを出すメイリ、二人の子供たちはそれを1つずつ受け取ると両手で抱え、もしゃもしゃ食べ始める。


「はい、あなたも」

「うむ」

 メアリが座ったまま差し出すパンを、アドリアは立ったまま周りを警戒しつつ受け取り、かじる。


「本当に懐の広いお方だったなタロー様は、ラフェリアもいいところだ」

「ええ、お祭りでいただいた美味しい食べ物にお菓子、泊めていただいたお家の暖かな寝床、本当に夢のようなところでしたわね」

「ああ、そうだな。はやく村の皆を連れて行ってやりたいな。そしてあのお方の元で働けたら、、」


「あなたたち、ミキヒロさまからいただいたクッキー、最後の1枚ずつだから大事に食べなさい」

 そういってメイリは木の実がちりばめられたクッキーをルイーセとドロシーに一枚ずつ渡す。

「おいしーね」「うんおいしーね」

「でももうなくなっちゃったね、」「うん、なくなっちゃった、、」


「あらあら、あなたたち、村の皆とラフェリアへいけばまた食べられるわよ」

「うん!」「あ、あたし、ミキヒロさまの弟子になる!」

「あ、ずるーい、私も!」「うん、いっしょに弟子になろ! そしておかしつくろ!」

「うん! いっしょにつくる!」


「さて、そろそろ行くぞ、お前たち。村までもうすぐだ」

「はい、あなた」「「はい、おとーさん」」

 一息ついた後、家族はホラン村へと帰るために再び歩き出した。




「ん? お前たち、下がっていなさい」

 森の中を移動中、アドリアがそう言って腰を落としタメをつくる。

 メイリの足元に素早く駆け寄る子供達、それを母のメイリが包むように抱きかかえる。


 ビュン!!


 その脚力で、まるで矢のように飛び出すアドリア、狼のような魔獣が一瞬驚いたかのように目を見開く、が次の瞬間にはアドリアは跳躍の勢いのままにその脇を通り過ぎ、一瞬後に狼の首から血が吹き出した。

 悲鳴をあげる間も無く、ドウと倒れる狼のような魔獣、、


「グレーウルフか、、」

 倒れた大きな狼の魔獣を見て警戒するアドリア


「あなた、、」

「メイリ、気をつけろ、こいつは群れる魔獣だ、近くに仲間がいるかもしれない。ここをすぐに離れよう」

「ええ、そうね」

 アドリアは家族を連れて、その場をすぐに発った。



◇◆◇◆◇


 数時間後、魔獣を倒しながら進むアドリアは、違和感を感じていた。

「おかしい、、さっきから一匹ずつしか魔獣に出くわさない、まるで散り散りになったような、、」

「それにもともと怪我をしている魔獣も多かったわ、、何かに追い立てられたのかしら?」


「ん? おい、あの水を飲んでいる魔獣をみろ、あの体の傷、、明らかに剣や槍の武器によるものだ!」

「まさか、冒険者達の集団が近くに?」

「わからん、、とりあえず、始末しよう」

 そう言って飛び出すアドリア、これまでと同じように、一太刀で魔獣の命を絶った。


「…村は、、私たちの村は大丈夫かしら?」

「わからん、、、行ってみよう、」


 そして、、


 村の入り口にたどり着いたアドリア達は、いきなり現れた数十名の兵に囲まれていた。



◇◆◇◆◇


(こ、この鎧、サウザーラの正規軍か?!)

 アドリア達の一家を囲む兵達は、皆一様に揃った白銀の鎧を身につけていた。

「私はこの村の住民、アドリアです。サウザーラの方々、何が起きたかお教え頂きたい!」

 鎧をつけた兵達に呼びかけるアドリア、しかし兵達からは何の答えも帰ってこない。


(かなり練度の高い兵達だ、、明らかにゴロツキのような一般兵とは違う。何故こんなところに、、村を攻めるのには過剰すぎるだろうに、、)


「ほう、まだいたか」

 兵達の後方から、白馬に乗った男が現れる。白と金で装飾された豪華な鎧に、燃えるように真っ赤なランスを右手に携えた金髪の美丈夫、だがその顔はどう猛な笑みを浮かべている。


「…お教えください、私はこの村のアドリアと申します、この村で何があったのでしょうか?」


「……おい、ゼルバン」

「はっ! シュルマイアー殿下!」

 その男はアドリアの言葉には何も答えず自分の後ろへと声をかける。すると皮鎧をつけたゼルバンと呼ばれた冒険者風の男が白馬の側へと走り寄り、そして跪く。


「確か、ノルマは達成したと言っていたな」

「はっ! 今回依頼された50名の奴隷は全て集まっております!」

「そうか、、なら後はもう奴隷として保護する必要は無いな」

 そう言ってアドリアとその妻子を舐め回すように見るシュルマイアーと呼ばれた男。

 その歪んだ笑みを見た瞬間、アドリアはゾクリと寒気を感じた。


「おい、お前、俺に勝てたら家族は見逃してやる」

「っ! メイリ! 子供達連れて逃げろ!」

 馬上でランスを構えるシュルマイアーに対し、2本のサーベルを抜刀し両手で構えるアドリア。

 メイリは子供達を連れて元来た道を駆け出す!


 アドリアはシュルマイアーに対して真っ直ぐ突っ込み、直前で右へ回避、ランスのないシュルマイアーの左側へと回り込む!

 そして、、まずは馬の腹を狙って斬りかかる!


 ガギギィン!


 硬質な金属音が響き渡り、斬撃が防がれた。見るとシュルマイアーの左手には細長い剣が握られており、それが斬撃を防いだようだった。


「くっ!」

 今度は後ろへと飛び、地面を蹴って飛び上がりシュルマイアーの背後から首を狙うアドリア、しかしシュルマイアーは左手の細剣を下から後方へと切り上げてこの斬撃を難なく弾く。


 ならば! とアドリアは騎馬の周りを跳躍し、正面からすれ違いざまの斬撃を試みる!


「がっ、、」

 アドリアの腹部へと深々と突き刺さった真っ赤なランス、


「ぐぁぁああ!!」

 赤いランスは急に炎を吹き出し、アドリアの体を内側から焼き始めた!!


「ふんっ!」

 ランスを高く突き上げ、さらに深く差し込もうとするシュルマイアー、アドリアはそれに逆ら、、おうとせず自ら深く差し込ませるように一度力を抜く! そしてシュルマイアーへと近づいたアドリアは最期の力を振り絞り、

 ザシュ、、

 シュルマイアーの眉間を狙った剣は逸らされ、わずかに頬を切ったのみだった。


 シュルマイアーが、ブンッ! とランスを振ると、胴体を焼かれたアドリアの体は2つにちぎれ、草むらの上を転がった。



「はあっ! はあっ!」

 ドガガッ! ドガガッ!

 走って逃げるメイリと2人の子供達の後ろから騎馬隊が数騎襲い来る。

「くっ!」

 子供達を先に行かせ、クルリと転換し両手を広げて騎馬の前に立ちはだかるメイリ


 ザクッ

「ああっ!」

 ザクッ、ザクッ


 槍で数度突かれても、悲鳴を上げながらも、突き刺さった槍を掴みとって奪い、そのまま支えにして立ち続けるメイリ、

 子供達を襲おうとする武器を減らそうと槍を掴みとり、少しでも逃げる時間を稼ごうと立ち続ける。

 メイリの体には幾本もの槍が突き刺さり、、

 それを支えにして立ったままメイリは絶命した。



 

 ルイーセとドロシーの2人は手を繋いで走って逃げた。でもそれは子供の足ではわずかな距離のこと、、

 すぐに疲れと恐怖で足が動かなくなり、大きな木の根元で手を繋ぎうずくまり震える。



 カッ、カッ、カッ、カッ、、

 騎馬がゆっくりと近づいてきた。


 大木の下にあるピンク色の小さな2つの丸まりを見て、シュルマイアーはその美麗な顔を醜く歪めて笑みを浮かべた、

 そしてランスを構え、、、




お読みいただきありがとうございます

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よろしければこちらもどぞ  すっぴん召喚のヤマナさん
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