04 タローはにげだした、しかし、、
王城を出て城下町をブラブラ歩く、異世界見学って感じだ。まずは外に出るための門を目指そう、
「あ、、あの! すみません!」
おお、城塞都市を出る門の近くの通りで、明るい茶髪を肩ぐらいに切りそろえた若い女性に声をかけられた。俺と同じぐらいの歳かな?
純朴そうな町娘って感じの子だ。
「? はい、なんでしょう?」
「あ、あの、あたしのおばあちゃんがそこの路地で転んじゃって、動けなくなっちゃって、、お願いします! 助けてください!」
「いいですよ、どこですか?」
「こっちです!」
女の子に手を引かれてワクドキで連れていかれる俺、、
マジでこんときの俺をぶん殴ってやりたい、、
◇◆◇◆◇
「よう、にーちゃん、フトコロのもん全部出しな」
「……」
城を出て30分でこれかよ、、
路地裏で俺は6人のごろつきに囲まれていた。
俺をここに連れてきた女は路地の向こうへと走り去っていった。
やたらと計画的だ、、
「早く出せ、って言ってんだろ!」
正面の男が蹴りを放ってきたので、さっとよける。
「ちっ、すばええな、、」
「ああ、素早さはEらしいぜ、逃げられんように気を付けろよ、お前ら」
「わかってまっさ、 おい、おまえら! もうちょい包囲縮めろ!」
「「おう!」」
男たちがにじり寄ってくる、、
「うら!」「おりゃ!」
男たちがブンブン手足を出してくるのを避けたり、スコップの柄で防御したりする。
「はぁはぁ!」「くそ、素早い、、」
チラリとやって来た方向の大通りへと目をやる。大通り側の3人が通すまいと腰を落として両手を広げる。動きが固まった瞬間を狙って、、反転してダッシュ!!
男たちが警戒していた逆側の、路地の奥へと走る!
「くそ!」「逃げたぞ!!」「追え!!」
よし! あいつらは追いついてこれない!
「…なるほど、レベル1にしては早いな、、」
男どもを確認するために走りながら左後ろへ振り向いた時、その反対の右側から不意に声をかけられゾッとした、
全力で走る俺と並走するこの女、、俺をこの路地に連れ込んだ女だ!
さっきまでとは打って変わった冷たい声、虫ケラでも見るような無機質な目、
「武技、『チャージ』!!」
ガィィィイイン!!
「ぐはっ!!」
全力で走っている最中に、並走する女から真横への体当たりを食らう!
左へ吹き飛ばされた俺は建物の壁に一度激突し、走っていた勢いのまま地面を転がる!
「が、あっ、ぐ、、」
そのまま10メートルほど転がり続けて、、やっと止まった、
「いっつ、ぅ」
「死んでないよな?」
倒れている俺の上で、冷たい声が聞こえた。死なれると困ることでもあるのか?
それよりも、、くそ、立てない!
追いかけて来た男どもが追いついて来た。
「はぁはぁ、畜生め!」「この野郎、逃げ出しやがって!」「オラァ!!」
ボグッ!
「ぐはっ、がっ」
倒れた俺の腹を蹴りとばしやがった!
「おら、立てよ!」
一人が俺の髪を掴んで引っ張りあげ、無理矢理立たせる、
「ふんっ!」
ボグッ! バガッ! ドスッ!
顔を殴られるたび、目の奥に火花が散り鼻がツーンと痺れるような感覚に襲われる。
腹を殴られるたびに嘔吐し、耐え難い長く続く痛みに苦しむ。
ガッ! ゴスッ! ドズン!
くそ、、意識が、、
「おら! なんとか言えや!」
「……」
髪を掴んで無理矢理顔を上げさせられるが、、腫れ上がった目ではまともに前が見えない。
「お、結構持ってんじゃねーか」
懐をあさっていた一人が、銀貨の入った皮袋を見つけた。
やめろ、、それは尾崎君が俺のことを思って持たせてくれた、、
震える手を伸ばす、、
「…か、えせ、、」
「あ? 死んでろ、てめーはぁ!!」
ドゴン!
蹴られた勢いで壁まで吹っ飛び、崩れ落ちる。
「おい! 殺すなと言ったはずだ!」
「へい、すんません、
おい! お前ら、さっさと剥ぎ取ってズラかんぞ!」
「「おう、」」
殺すなと言ったこの声、あの女だ、、ちくしょう、やっぱり俺を狙ってやったな、王城の関係者か、、
追い剥ぎどもが去って、だんだんと意識がしっかりしてくる。それにつれ、負った傷の痛みがはっきりしてくる。
「い″っでぇ、、、ぢぐしょお、、ぢっ、、ぐしょお、、」
あいつら、トランクス一枚だけ残して服まで持っていきやがった。
身体中アザだらけ、止まらない鼻血、口中はズタズタで血の味がする、開けなくなるほど腫れた両目から悔し涙が止まらない。
「尾崎君、、ごめん、、、
せっかく貸してくれたお金、取られちまった、、
テンプレってやつで路地裏も危ないって言ってくれたのに、、
俺、、バカだ、、」
手を横に伸ばすと、、スコップがあった。
「これは? なんであいつら盗っていかなかったんだ?」
スコップを杖代わりにヨロヨロと立ち上がる。
ダメだ、ここは、、敵の懐もいいところだ。下手すると殺される、、この都市を出よう、、
幸い朝早いため、まだ人通りは少なそうだ、、近くの門からすぐ出て行こう、、
周りの人間は、、トランクス一枚でスコップを杖代わりに歩く俺を見て目をそらす、、
城塞都市の門番も、俺が出て行くのを、見て見ぬ振りを決め込んだ。
こうして俺は王城の都市、エオリアからパンイチで逃げ出した。
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