32 太郎とタロウ
[スキル:救命 消費MP50 瀕死、死亡(1日以内)状態を回復する、ただし臓器や頭部に重大な欠損などがない場合に限る
発動方法:対象の両胸の素肌に両手のひらを密着させて発動させる]
くっ!
『発動方法:対象の両胸の素肌に両手のひらを密着させて発動させる』
なんて!
『両胸の素肌に両手のひらを密着させて』
恐ろしいスキルなんだ!
「……難しいな、、、」
目を開き、シリアスな顔で思わず呟く。
「えっ?」
「おにいさん、シズク、助からないの?」
「頼む! 私はどうなってもいい! シズクを助けてやってくれ!」
「シズクぅ〜」
メイドさん達が泣きながら懇願してきた。
そうだよな! 春野さんを助けるんだ!
「……わかった、初めて使うスキルなんだ、落ち着いてやらせてくれ」
「う、うん」
「春野さん、ゴメン、今から春野さんを治すためのスキルを使う。ちょっと嫌なことがあるかもしれないけど、、ゴメン」
俺の言葉に弱々しく首を横に振る春野さん。
「だ、、じょ、、ぶ、お、ね、、ぃ」
HPが回復しても春野さん辛そうだ、、そうだ、助けるんだ!
「モニカさん、春野さんの胸を出して、、」
「え?」
うん、、変態の発言だよな、
「スキルを使うのに必要なんだ、お願い」
「わかりました!」
素直に春野さんのブラウスのボタンを外し、服を脱がし始めるモニカ、俺は横を向いて見ないようにしていた。
「次はどうすれば良いですか?」
視線を戻すと、、そこには横たわった状態で胸をはだけた春野さんが、、
ぐはっ!
なんか今日はHP以外のものがゴリゴリ削られていくような気がする。
服の上から見てた以上に、春野さん、ウエスト細っ、そして結構胸があるんだ、、
いやいやいかん! 見とれている場合じゃない、早く治療しろ!
両手を春野さんの胸の上にかざす、
くっ、腕が、腕が下りない! まるでもう一人の俺が必死に腕を上に引っ張りあげているみたいだ!!
思わず顔が険しくなる、額にもびっしり汗が浮き出てきた。息も荒くなっている。
まるでホンモノの変態さんじゃないか!
「こんなに真剣なご主人さま初めて見るにゃん、、ファイトにゃん」
励ましてくれる、ミーシャ
「治療、難しいんだ、、」
「シズクぅ〜」
……ゴメンなさい、治療まだ始まってません、太郎とタロウが戦っているだけです、、
手のひらをゆっくりと下ろす。触れた、のか?
「…んっ」
春野さんの声に、手を下ろし過ぎたことに気がついた。あまりの柔らかさに触れたことに気がつかなかったぞ!
くっ、、この感触、指を動かしたい!
いやダメだ! バカ、タロウ! お前何考えてんだ!
「スキル、『救命』発動!」
さあ、こいっ!!
ドクンッ!!
その瞬間、春野さんの胸の真ん中から小さな光がきらめいたかと思うと、それは光の柱となり、だんだんとその輝きを増していった。
◇◆◇◆◇
「おお!! これは! 生きて再び見れるとは、、」
城の外では、グリューンが夜空を見上げて涙を流していた。
城から白い光の柱が立ち上ったかと思うと、雲の高さに達し、そこに真っ白で巨大な魔法陣が現れたのだ!
「エルフの子達よ、見よ!! あれこそが我が祖父、大魔導士グリュンワイズ様が行使された究極の白魔法『リサスティション』の魔法陣とその輝きじゃ! タロウ陛下はそれを再現された!」
「「「おおー!!」」」
◇◆◇◆◇
「成功した、のか?」
「タロウくん、、」
春野さんを見ると、、ゆっくりと呼吸をしながら涙を流していた。土気色だった顔色も赤みを帯びて健康的な色になっている。
とりあえず、春野さんを鑑定
シズク ハルノ
レベル32
職業:空拳の勇者
HP:465/465
MP:158/158
良かった、、取り敢えず成功したみたいだ。ん? HPが全快している? すごいな、このスキル。
「ありがとう」
春野さんはそう言って胸の上にある俺の手に、自分の手を重ねてきた、、ってタロウのアホ! いつまで胸触ってんだ!
「ご、ゴメン!」
そう言って手を離し、後ろを向く
「ありがとう、、」
春野さんがそのまま背中に抱きついてきた、ってええー!! 背中がぁー! 背中がぁー!
くっ、柔らかい双丘の感触に、俺の全神経が背中に集中していく、、しばらく動けないでいると、
ざわっ、、
なんだこの感じ、、冒険者達に城を攻められた時と同じ感じだ。
「春野さん、ゴメン、仕事が出来た、行かなきゃ、、」
名残惜しいが春野さんが大丈夫になったからにはこっちが優先だ。
「ミーシャ、春野さん達に食事の用意を頼む、俺は城の防衛に行ってくる」
「了解にゃん、いってらっしゃいませにゃん」
「あ、、」
「春野さん、俺のベッドで休んでていいからここで待ってて、メイドさん達も一緒にいてやって、」
そう言って自分の部屋を後にした。
部屋を出ると、グリューンとエルフの一同が膝をついて待機していた。
「陛下! 『リサスティション』の成功、誠にお見事でございました、つきましては、、」
「ああ、グリューン、あとで聞くよ。それより城外で何かおきてるのか?」
「城外ですか?」
そこへ走り込んでくるシウバ
「タロウ兄さん、大変だ! 他の獣人達がやってきて、ガルドワンさん達が出て行った!」
「どういうことだ? なぜガルドワン達が城を出る?」
「わからない、でも南門の内側で長が待っているからそこで聞いたほうがいいかも、」
「わかった、ありがとうシウバ、非常時だ、引き続き交代で見張りを頼めるかい?」
「もちろん!」
「グリューン、先に行くから南門まで来てくれ」
「かしこまりました、陛下!」
南門へ向かうと、犬獣人の長、シュタイナーが待っていた。
「長、何がおきたんだい?」
「タロウさま、申し訳ございません、この広大な森に隠れ棲んでいる者達が、魔獣に追われ、避難してまいりました。城内に入れるわけにいかず、表におるのですが、、」
「そいつらと戦闘になったからガルドワンは出たのか?」
「いえ、逃げてくるものを助けたり、城外で魔獣に襲われたりしているのを守ったりしております」
「そうか、よくやった、俺も加勢に行くとしようか、ところで避難してきたのはどんな奴らで、何人ぐらいいるんだ?」
「今のところ、約50名、狐や狸、カワウソの獣人や、ドワーフ、ホビットなど、獣人や亜人と呼ばれる種の者達です、」
「長はそいつらをどうしたい?」
「願わくば、、助けてやっていただけないでしょうか? タロウさま」
「わかった。長はグリューン、ディンガンドと一緒に南門で指揮をとってくれ。まずは虎口に避難民を受け入れよう、その先までは通さなくてもいいだろう。城内の者を使って干し肉とスープなどの食事を用意させてくれ、避難民は腹減ってるだろうしな」
「おお! なんと寛大な!! 仰せのままに」
城門を飛び越えると、、南門へと通じる橋の上に避難民が押し寄せていた。本当にいろんな人たちがいる。その人たちを襲おうと魔獣達がウロウロしているが、堀にかかった橋に近づくと、バシンッ! という音とともにはじき出されていた。玄武さまの加護だな。
「ママー、腰ミノだけの変な人がいるー」
「しっ、指さすんじゃありません!」
……オーバーオールを着た可愛らしいキツネのお嬢ちゃんに指さされた、、
「、、そげ!」
「くそ、、、つこい!」
ん? 近くで戦っている?
シュトト、15mほど空中を駆け上がると、、お、ガルドワン達がこちらへ走ってくる。ん? なんかでかいイモムシに追いかけられてるぞ、アイツら、
すぐにイモムシの上へと移動して、『ネコ』からダンプカー1杯分ほどの土砂を落とす!
キュエエエエ!
反り返って口から緑色の液を吹き出すイモムシ、うわ、キモ!!
「た、タロウ! 助かった!」
玄武さまの加護の内側へ走り込んでくるガルドワン達、よく見ると、みんな小さな熊の獣人を背負っている。クマさん達、ぴったり背中に張り付いているもんだから、なんかそういうリュックを背負っているみたいだ。
キュアエエエア!!
魔獣:ジャイアントクローラ
ランク:B
玄武さまの加護にバチバチ弾かれながらも、ガルドワン達を襲おうとする、紫と緑の縦縞のでっかいイモムシ、、
うわあ、、こいつ触りたくねー、、
とはいえランクBを城の周りで野放しにするわけにいかん!
「スキル、『ハツリ』発動! くらえ、『削岩脚』!!」
ズギャガガガガガガガ!!!
空中から打ち込まれる無数の赤い鉄杭!
身体中に穴を開けられ、緑色の粘っこい体液を撒き散らした後、ジャイアントクローラは動かなくなった
ついでだ、この周りの魔獣も片付けるか、、残り50秒で魔獣の認知できない速度で動き回り、ハンマーフックで頭を消し飛ばして行く。
30体ほど倒したところで、ようやく他の魔獣達が引いていった。
「おおーい、ガルドワン、貴重な毛皮と肉だ、回収しろ」
「……タロウ、、おめーまた強くなってねーか?」
「はっはっは、気にすんな」
橋の上に近づくと、避難してきた人たちが俺の姿を見て、スザザ、と後ずさる。
「あー、ゴメン、怖がらせちゃったか、、長、グリューン、ディンガンド、あとは受け入れ頼んだよ、腹一杯食わせてやってくれ」
「はい、タロウさま」「かしこまりました、陛下」「ははっ! 殿!」
「あの方こそ、この白亜の城の主人タロウ陛下である。先程の戦闘を見た諸君は怖い方だと思っただろうが、非常に慈悲深く優しい方だ。その証拠に陛下は諸君を受け入れ、食事を与えるよう我らに下された、さ、順にこの門から入りなさい、、、」
ま、あとはグリューンたちに任せておけばいいだろう、避難民とガルドワン達が城内に入るのを見届けてから南門を閉める。
今日は疲れた、、帰ろう、
部屋に戻ると、白いワンピースに着替えた春野さんが一人でベッドに座っていた。
「あれ? 他のメイドさん達は?」
「ミーシャさんに使用人部屋を案内してもらって、、今夜はそちらに泊まるって、、」
「そっか、、ええと、春野さん、この部屋使っていいよ、俺は、、」
「……いて、」
「え?」
「一緒にいて、、」
ええと、、とりあえず、、
俺のベッドで手を繋いで寝ることになりました、、
寝らんねーーよ!!
※本作品は決して医療行為を貶める意図などはございません。思春期DT男子の割り切れない葛藤を描いたつもりです。
お読みいただきありがとうございます。




