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03 勇者失格、、らしいです

 ステータス確認の列が進み、俺の番が来た。


「僕も見ててもいいですか? 田中君」

「いいよ、尾崎君」


タロウ タナカ

レベル1

職業:ガテン系

HP:32/32

MP:10/10

攻撃:F

防御:F

魔力:G

素早さ:E

ユニーク武器:スコップ(熟練度C)

スキル:鑑定G


「ふおお! 凄いのです! 田中君!

 高いHPに戦士系のステータス!

 何より武器熟練度C!」

「そ、そうなん?」

「なんか、田中君には期待させる予感がしますねー」


 ??

 尾崎君の言葉に神官たちが苦笑している。何かあるのか?


◇◆◇◆◇


「よし、全員集まれ!!」

 豪華な鎧と赤いマントをつけた兵士が入ってきていきなり大声をあげた。


 ワラワラと集まる俺たち。


「私はエオリア王国騎士団長のガイストスだ。全員、私を鑑定してみろ!」


ガイストス

レベル32

職業:騎士

HP:122/122

MP:35/35

攻撃:C

防御:B

魔力:F

素早さ:E

武器:大剣(熟練度C)

スキル:鑑定C 武技D


 つえーな、俺たち要らないんじゃ、、


「よし、全員鑑定出来たな。召喚された勇者は全員鑑定のスキルがついているが、レベルは低い筈だ。鑑定は下位の者が上位の者を見ることはできないが、今のように上位の者が許可を出した場合は見る事が可能だ」

 なるほど、、

 あ、鑑定がみんなに割り振られている事を知って尾崎が沈んだ


「かと言って他人にむやみに鑑定をかけるなよ。上位のものにはかけられた事がわかる。その時は斬られても文句は言えないからな」

 みんなの中に一気に緊張感が走った。斬る、殺される、そんな世界に来てしまった事を感じたからか。



「ああ、それから、勇者ではないタロウ タナカ、武器を持っていないシズク ハルノ、二人は勇者としての訓練を受けさせるわけにはいかない。この後のことをそこの神官と相談しろ」

「「!!」」


 若い神官が一人進み出る。


「連れて行け」

「雫っち!!」

 ガシャガシャ!

 柳田が駆け寄ろうとしたが、鎧の騎士たちに阻まれた。


「心配するな、本人の選択次第では君らと一緒にいられるかもしれん」

「雫っち! 絶対私達と離れちゃダメだよ!!」

 青い顔でコクコクと頷く春野


 俺と春野は神官に連れられ、部屋を出た。後ろからは騎士団長の声が響いている。


「では勇者の戦闘訓練について説明する! ステータスでわかるように諸君たちはまだまだ弱い! だが我々よりもはるかに高い伸びしろと、何よりレベルアップにつれてどんどん強力になっていくユニーク武器を持っているはずだ! ではまずは班分けを、、、」



◇◆◇◆◇


「お二人には二つの選択が御座います。この城に仕えるか、この城を出て行くか、です」

 狭い部屋で、俺と春野は粗末な椅子に並んで座らされ、神官から説明を受けていた。春野は黙って俯いたままだ。


「この城に仕えるとは? どんな身分で何をするのですか?」

「皆様が召喚された神殿は、王城の中にあります。そこでシズクさまはメイド、タロウさまは下男になっていただきます。給金は出ません」

「それは奴隷とは違うのか?」

「食事と住むところ、安全は保証されておりますので、、」

 ……春野のメイド服姿は見たいような、、じゃなくて、、


「仲間たちと会うことは?」

「メイドのシズクさまは、勇者様方のお世話をすることも多いので、会う機会は多いでしょう。ですが勇者ですらない下男のタロウさまはこの都市の城郭の手入れや工事についていただきますので会う機会はそれほどないかと、、」


「春野さん、君は残った方が良さそうだ、、」

「え? 田中君は? 出て行っちゃうの?」

「……」

「ダメだよぉ、、危ない世界なんだよ、、」

 そう言って俯く春野


「ゴメン、バカな意地だよ、俺、下男は耐えられない。春野さんのメイド服は見たかったけどね」


 ポカッ、猫パンチだ、、

 俯いて鼻をグスグス言わせながら肩を叩かれた


「死んじゃ、やだよ、、」

「ああ、頑張ってみる、、

 神官さん、この城を出て行く時の条件とか教えてください」

「は、はい、わかりました。まずは、、、」



◇◆◇◆◇


「早くも思い切りましたねぇ、田中君」

「タロー君、考え直すんだ!」


 みんなと夕食を食べた後、神田君と尾崎君に、明日の朝この城を出る事を告げた。

 尾崎君はこの展開が読めてたようだ。

「スコップを認めないとは、、無能な奴らなのです。で、どういう条件で出て行くのですか? 田中君は?」

「尾崎君!!」

 神田君が尾崎君をとがめようとするがそれを制する。


「ああ、勇者召喚でこの世界に来たことは口外しない事、この世界の人間として生きて行くこと、あと、少しだけだがお金をもらったが、、価値がわからないんだ」

 そう言って皮袋を出す。


「どれ、中身は、、銀貨5枚ですか、日本円で5千円と言ったところですかねぇ」

「そうなのか?」


「尾崎君は今日、教官を捕まえては質問責めしていたからな、ひょっとしてタロー君の為だったのか?」

「いえ、情報を掴むのは早ければ早いほど良いのですよ」


 …今日尾崎君に話しかけて良かった、、


「給金前借りして来ました、貸すので持って行ってください」

 そう言って銀貨を20枚だす尾崎君


「い、いやいいよ、借りるわけにはいかないよ!」

「意味があるんです、テンプレどおりなら、これから君は間違いなく想像を絶する苦難に見舞われます。

 特にレベルが低いうちは幾度も死にそうになるでしょう。だから少しでもその助けとなるために持って行ってください。

 僕はここで衣食住が保証されてますから当分お金は要らないんですよ」

「尾崎君、、」

「ああ、あと貸した金は返してくださいね。そう言っておけば律儀な田中君は返すまで死なないでしょ、そういうお守りでもあります」

 ヤベェ、コイツ、こんないい奴だったなんて、、、


 その晩は遅くまで尾崎君と神田君から色々とレクチャーを受けた。


 尾崎君からは、ユニーク武器はどんどん使って熟練度を上げるべきである事、それにより固有スキルが目覚めるかもしれないこと、ユニーク武器で経験を積めばレベルが上がりやすいこと、異世界ではどんな能力が開花するか分からないから、なんでも試して検証してみると良い事、、


 神田君からは、この国は王国とは言えそんなに大きくない事、広さはせいぜい日本の県レベル、人口も数万規模で町村レベル、人々は魔獣を恐れて壁に囲まれた都市や町で生活している事、魔獣たちは討伐対象で時に肉として狩られる事もある、勇者は魔獣や魔族の脅威に対抗するために召喚されたが、時には国家間の争いにも駆り出されるかもしれない事、などなど、、


 そして翌朝、王城の門の一つで、、

「タロー君、、、生き残れよ」

「田中君、ご武運を」

「ああ、神田君も尾崎君もありがとう、また会おう」

 そう言って俺は召喚された王城を後にした。

お読みいただき、ありがとうございます。

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よろしければこちらもどぞ  すっぴん召喚のヤマナさん
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