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02 異世界?なんですかそれ? って感じなのですが

『武器を、手に取りなさい、、あなたが最も信じる武器を 』


 白い空間に投げ出された後、いきなり女性の声が頭の中に響いてきた。


 みんなは、、聞こえているのか?

 あたりを見回すと、バスに乗っていた30人ほどの人間がみんな居るようだ。

 …いや、運転手と先生が居ない、、

 生徒だけか?


 立ち上がった者、座ったままの者、様々だが、、皆一様に虚空を見上げている。おかしい、みんな虚ろな表情で、夢遊病か催眠術にでもかかったようだ。


「神田君! しっかりしろ! 神田君!!」

 神田君の両肩を掴んで呼びかける、明らかに普通じゃない!


「…ぶ、き、、俺の、、」

「神田君!!」


「…ゆう、しゃ、、そうだ、俺は勇者、、」

「神田君! 何を言っているんだ!」


「そして、、精霊の祝福を受けた、剣を持つ男、、」

「イタいぞ! 神田君!!」


「来い、『エターナルブレシンガー』」

「なっ!」

 神田君の体から光がいきなり放たれ、俺は5mほど弾き飛ばされた!


「くっ、神田君、」

「精霊とともに、、」

 そこにはゴテゴテと装飾の入った白銀の大きな剣を持って立っている神田君が居た。目はまだ虚ろなまま、虚空を見上げている、、



「スマッシュぅ~~、マギガーール!!」

「!!」

 今度は柳田か!!

 なんか、短いピンクのステッキを持ってポーズを決めたまま虚空を見上げている。そういうの、小学校低学年までだと思うぞ、、


 その隣の春野は、、ボーっとして立ったままだが、、拳や肘、足先などがぼんやりと赤く光っている?


「、、キタ、異世界召喚キター!、チート武器、チート武器、、」

 少し離れた所で、ポッチャリメガネが叫んでいた。あれはみんなからオタクと言われている尾崎 拓也、彼の体の周りでは、なんか禍々しい黒い塊がウネウネと、剣のような形になったり、杖のようになったりとうごめいている。


「◯ォースと共に!」

 青白く光る棒を持つ女子


「ひと狩り行くぜ!」

 馬鹿でかいトゲトゲしい鉄の塊を持つ男子



『あなたも、信じる武器を、、』

「くっ!!」

 なんだこの声、今度は俺にピンポイントで話しかけてきたようだ。極めて不快な声だ、無理矢理頭ン中に入り込んで何かを変えようとするような、、


『…どうやら、あなたは他の方たちのように夢を見る時期は過ぎつつあるようですね、、ですが、武器を選んだ方が良いですよ、、『エオリア』この国に来た時に不利になるだけですから、、』


 武器とか言われても知らねーよ!

 何か、何か無いのか? あ、頭の中に先週使っていたスコップが思い浮かんで来た。

 くっ、武器を、

 ダメだ、あの古びた剣スコが頭から離れない、それどころか、金具のサビや柄のシミなどがより鮮明に思い出されて行く。コンクリ落とすために手洗いしていた時の記憶だ、、


◇◆◇◆◇


「「「勇者様、バンザーイ!!」」」


 気がつくと俺たち28名の生徒は、教室ほどの広さはある白い台の上に立たされていた。

 周りを見渡すと、体育館ほどはある広さの建物の中のようだ。俺たちの周りは人で埋め尽くされていた。まるで、テレビで見たボクシングかプロレスの会場みたいだな、、


 クラスのみんなはその手に、何かしら持っている。先ほどの武器だ。

 俺の手には、、剣スコが握られていた。木のグリップを持つと、その慣れたフィット感と温もりに少し落ち着いた。



「勇者様方、ようこそ、この『エオリア』へおいでくださいました」

 純白のドレスを着て、頭にティアラをつけた金髪碧眼の美女が、俺たちのいる壇上に登り挨拶をしてきた。


 コイツだ、、、、

 頭ん中に響いて来た声の主、、そして恐らくこの集団誘拐の首謀者、、

 みんなはまだ催眠にかかっているのか、ボーっとこの女性を見つめている。


「私はこのエオリア王国の第1王女、アリシアと申します」

 そう言って優雅に挨拶をする王女様、


「王女サマキター!」

 うるさい、だまれオタク尾崎


「皆様の中で代表者の方はいらっしゃいますか?」

 そう王女に問われ、俺以外のほとんどの奴が学級委員の神田君の方を見る。


 アホかコイツら!

 相手のこともよくわからんうちに神田君を差し出すような真似すんじゃねー!


「お名前をお伺いしても? 聖剣の勇者様、」

「あ、ああ、私の名前は、神田 俊介と言う。『シュン』と呼んでくれ」


「ああ、勇者シュンさま! あなたに出会えたこの日は、、なんと素晴らしい日なのでしょう!」

「「「ワアアアアア!!!」」」


 体育館ほどの建物内に、万雷の拍手と歓声が響き渡る。派手な歓迎に頬を赤くする神田君、、

 騙されるな、コイツら集団誘拐犯だぞ! なんでみんな不安にならないんだ? なんかの術にでもかかっているのか?


 チラリとこちらを見るアリシア、慌ててにこやかな笑顔を作る俺、

 ヤベェ、背中を冷たい汗がつたっていく、、



「それでは勇者の皆様方、神官よりこの後の説明をさせていただきますので、よろしくお願いします」

「神官の『テオルード』と申します。皆さま、それでは別室にご案内させていただきますので、私に続いてお願いします」

 そういって白髪白ひげ、長い帽子を被った老神官風の男が挨拶をし、先導して歩き出した。


「シュンさま、また後ほど、」

「はひ! アリシアさま!」

 …ヤベェな、神田君、完全にロックオンされてるぞ、、と言うかその剣、大丈夫か? 他の奴らの武器に比べて存在感ハンパないぞ?




「どうしよう、、私、何も持って無いよぅ、、、」

「…安心して、雫っち、あたしが絶対守るから、、」

 連れて行かれる廊下で、春野が泣きそうな顔で呟くと、柳田が寄り添うようにして元気づけようとする。春野はスコップどころか、何も持たずにこの世界に来てしまったようだ。



◇◆◇◆◇


「皆様、到着いたしました、まずはこちらで皆様のステータスを計らせて頂きます」

 うやうやしく頭を下げるテオルード、


「ステータス、キター! フォー!」

 うるさい、オタク尾崎、ていうか、なんでコイツこんなにこの状況を知った感じなんだ?


「では皆さん、こちらに一列でお並びください」


 …よし、尾崎の後ろに並ぶ。幸いコイツ、キモオタとか言われてクラスのみんなからは避けられているからな、簡単に後ろが取れた。


「おい、尾崎君、ちょっと教えてくれ」

 小声で話しかける。


「ん? なんだい? 田中君」

「声でけーよ、、、ていうか、ステータスってなんだ?」


 信じられない物を見るような目で俺を見るオタク尾崎。


「ほら、俺ってバイトで学費稼いでるから、ゲームとかアニメとか知らないんだよ、

 頼む、教えてくれ、」


 尾崎は表情が一変し、ムッフーな顔へ、ちょっとムカつく


「しょうがないですね、田中君、ステータスというのはですね、、、」





「すまんな、色々教えてもらって」

「いいのですよ、田中君に頼られるのは悪い気がしないのです。僕で答えられることならなんでも聞いて下さい」

「ああ、また頼む」


「それにしてもスコップとは、、田中君もツウですね」

「? 何のことだ?」


「突いてよし、殴ってよし、埋めてよし、スコップ一本あれば事足りる、と言われているぐらいなのです。あのゴ◯ゴ13も使っていたぐらいなのです、」

「なんか怖いこと言ってるな、、」


「ここだけの話、異世界では君みたいなのが活躍する事が多いのです。でも負けませんよー、僕のこの『マグネ』もなかなかのものですからねー」

 そう言って黒い粘土のような物をグネグネ動かす尾崎


「あ、ああ、ところでそれ、なんかのゲームの武器なのか?」

「んっふっふー、違います。こんな時のために僕が考案した武器なのです」

 なんかスゲーなコイツ、、




 そして尾崎の順になった。

 水晶に手をかざす神官と合い向かいに座り、中に浮かんだ文字を見ながら矢継ぎ早に質問している。

 クラスでこいつが話をしているところはほとんど見なかったのに、、、

 ここに来てから急に饒舌になったな。


「おお! 田中君! 見てくれ、これが僕のステータスだよ」

 尾崎が振り返って自分のステータスを見るように言ってきた。

「あ、ああ、これが? ステータス?」


タクヤ オザキ

レベル1

職業:召喚されし勇者

HP:5/5

MP:25/25

攻撃:G

防御:G

魔力:F

素早さ:G

ユニーク武器:マグネ(熟練度F)

スキル:鑑定G


「ほお、どう見るんだ? これ、」

「聞いたところ、HPとMPは10ぐらいがこの世界の一般人の平均みたいですよー、

 異世界ではMPが大事なのです!

 レベル1で常人の2.5倍ということは、レベルが上がった時が楽しみなのです!」

「そ、そうなんだ」

「そして大事なのが武器に熟練度があるところ! 初期値がGだという事なのですが、ずっと動かしていたので早くもFに上がったようです!」

「う、うん、」

「最後に鑑定!! 異世界と言ったら鑑定なのです!」

「へ、ヘェ~、、」


「あのー、早く次の方お願いします」

 そりゃそうだ、後ろつかえてるしな。さて、次は俺の番だ。



お読みいただき、ありがとうございます。

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よろしければこちらもどぞ  すっぴん召喚のヤマナさん
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