↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/81

15 信じられる理由

 王都エオリアにて、

「全員集合! これより戦闘訓練を始める!!」

 城内の広い訓練場において、召喚された26名の勇者たちが集められていた。

「これより騎士との模擬戦を行う! 5名ずつ前に出ろ!」




「火の聖霊よ!! はあああぁぁあああ!! クリムゾンセイバー!!」

「ぐあぁぁああああ!!」

 神田俊介が聖剣を振るうと、赤い一筋の光が走り、対魔法装備で固めた青い鎧の騎士がダメージを受けて倒れる!


「煌めけ! エンジェルスマッシュ!!」

「がっはぁぁああ!!」

 柳田由美が白く輝く2対4枚の羽根が生えた長柄の棍棒を振るうと、ぶ厚い鎧とタワーシールドを装備した重騎士が、直撃せずともその衝撃だけで訓練場の端まで吹き飛んでいった!


 救護班が倒れた騎士に駆け寄り、担架で運んでいく。

「う、うむ、、シュンスケとユミは、1対1では無類の強さになったな、」




「よし、次はタクヤか、そうだな、カマセルヌ! お前が相手をしろ!」

「はっ!」

 ガイストスが尾崎拓也の相手に、赤い鎧を着た細身の騎士を指名する。


「なんだ? 俺の相手はお前か? ふん、オークかトロルみたいに太ったやつだな。それになんだ、その変な武器は? そんなぐにゃぐにゃしたもので戦えるのか?」

「…マグネを変な武器と?」

 尾崎にとっては自分の事より、ユニーク武器の事をバカにされたことの方がカチンときたみたいだ。


 漆黒の槍に変形させたマグネを構える尾崎、それに対しカマセルヌは教科書通り右手に剣、左手にカイトシールドを構えて半身で立つ


「行くぞ! 丸いの!」

 盾を前に突進するカマセルヌ! 尾崎は突進するカマセルヌの左上から槍を叩きつけた!


「フン!」

 左手の盾で黒い槍をはじこうとするカマセルヌ!

 槍をはじいた! と思ったがその手ごたえのなさに驚いて顔を上げた瞬間、頭上から黒い塊が襲ってきた。

 カマセルヌが盾で受け止めた時、尾崎は衝突部分のマグネの硬度を極限まで柔らかくしてぐにゃりと曲げ、槍の穂先部分をツリガネ状に変形させて頭の上からかぶせてきたのだ!

 ぶ厚いゴムの様なマグネに頭部を覆われたカマセルヌは、マグネを必死ではぎとろうとするがマグネはより顔にぴったりと張り付いていく!


 マグネの上から顔を抑えて苦しみもがくカマセルヌ。

「うごっ、、む~~~~!! ~~~~~!!!」

「どうですか? 僕の『マグネ』は弱いですか?」


「~~~~~!! ~~~~~!!!」

「どうしました? 早く、まいった、しないと死にますよ?」


「それまで!! 勝者、タクヤ オザキ!!」

 騎士団長のガイストスが模擬戦の終了を宣言する。尾崎はマグネを解除し、元の槍状に戻した。


 マグネを解除されたカマセルヌは、その場に崩れ落ちた。白目をむいて口から泡を吐き、失禁までして気絶している状態であった。


「カマセルヌを医療室へ!!」

「「はっ!!」」



「タクヤ オザキ、おまえの武器が強いのは十分わかった。だが、、」

「ガイストス教官殿、言いたいことはわかります。マグネの熟練度も必要ですが、僕自身も強くならなければいけないという事でしょう。」

「うむ、」

「遠慮はいりません、ビシバシお願いします」

「よし分かった。それだけ自由に扱えるんだ、マグネを鎧として使うことはできるか?」

「はい出来ます、マグネ、アーマーモード!」

 槍状から変形し、尾崎の皮鎧をさらにその上から覆って黒い鎧となるマグネ。


「おい! レベル20から25の騎士10名集まれ!!

 これよりオザキ タクヤとの木剣による10人稽古を行う!」


「俺が!」「俺も行く!!」

 カマセルヌの仇とばかりに尾崎のところへ騎士達が集まってくる。


「お願いします!!」

「頭部、および鎧のない部位への打撃は禁止だ。では1人目、はじめ!!」


 次々にかかってくる騎士たち。当然木剣による稽古では尾崎が相手になるはずもなく、ボコボコにされ続けた。




「ごふっ、、げっ、、おぇ、、 は、あ、ありがとうございました!」

「うむ、たいした奴だ、不利な状況で騎士達を相手に本当に10人稽古をやり遂げるとはな」


「あいつ、、すげえな、」「根性あるぜ、、」「吐きながらでも戦うとは、」「俺はあいつ認めてもいいと思う」

 騎士達の間での尾崎の評価も変わったようだった。




「ずいぶん自分を追い込むんだな、尾崎君」

 訓練場の隅の水場で、桶で水を頭から被った後、その場にへたりこんでいる尾崎に神田が話しかけた。


「彼と再会した時に、一緒に肩を並べて戦いたいですからねぇ、、悠長な事は出来ないんですよ」

「彼って? ひょっとしてタロー君の事か?」

「ええ、僕の予想では、田中君は今頃最強への道を駆け上がっているはずです」

「最強? 王国最強のあの騎士団長よりもか?」

 神田の言葉に尾崎が首を横に振る。


「ガイストス? イヤイヤイヤイヤ、あんな雑魚、どうでもいいでしょう。あの程度のステータス差、僕や神田君ならやりよう次第で今でも倒せますよ。僕が言っているのはこの世界で最強だという事です。それこそ先日からの座学で出てくる、魔王や古代龍、神獣などと言った人智を超える相手を倒すぐらいに、です」

「まさかぁ、、」


「信じないならいいですよ、でもそんな存在になった田中君と再会した時、庇護ひごされる側になるか、共に戦える存在となるか、という事です。僕はもちろん後者を目指しています」

「……そうか、、君が言うならそうなんだろうな、、でも一つ教えてくれ、なぜそんなにタロー君の事を信じられるんだい?」


「それこそ、神田君には、、いや田中君にも言えない話ですよ」

「?」




 1年生の頃、僕がトイレの個室で上から水をかけられていじめられてた時、「てめえら、くだんねぇ事やってんじゃねぇ!」と上級生のいじめっ子達を一喝して蹴散らしてくれたのは田中君だったんだ。

 僕はドアの隙間から田中君を見てたけど、あの怖いいじめっ子達がビビる田中君の事がとても怖くて、、、田中君が去るまでトイレから出ることが出来なかったんだ、、、だから田中君はあのときトイレにいたのが僕だったってことを多分知らないし、それ以前に誰だったのかってことも気にしてないと思う。


 ふつう、いじめの現場なんて、ダメだと思ってもみんな見て見ぬふりをするさ、大人たちだってそうだった。だけどあの状況でただ一人、自分の正義を貫き通して、顔も見えない僕のために戦った田中君は、その時僕の中で世界で一番信じられる人になったんだ。だから神殿で僕の事を頼りにしてくれた時は、、本当にうれしかったんだ、、




「僕は、神田君に嫉妬しています、田中君の事を『タロー君』と親し気に呼び、いつも仲良く話していた神田君に、です。田中君が超越した存在になったとき、僕は頼れる仲間になりたい、彼の隣に立ちたい、神田君は、、ついてこないなら置いていくまでです」


「……ちょっと危機感持った、俺も10人稽古行ってくるわ」

「僕と一緒なんて、ぬるいですねぇ」

「ガイストス教官にも10人同時(・・)の内に入ってもらうさ、」


 尾崎へ左手をひらひらと振りながら右手に聖剣『エターナルブレシンガー』を握りしめ、教官たちのところへ向かう神田。戦う気になった神田が歩いただけで精霊たちは祝福し、いろんな光が体の周りを飛び交い、幾重ものバフがかかっていく。


「ずるいですねぇ、、天才が本気で頑張ったら伸びるに決まっているじゃないですか。凡才で愚鈍な身を持つ者としては、さらにもうひと頑張りしなければ、ですねぇ、よっこら、っと」

 そう言って尾崎はマグネを支えに再び立ち上がる。



◇◆◇◆◇


 その頃、太郎は、、、


「ふんふんふーん♪ ザックザクー♪ ペッタペター♪」

 適当な鼻歌を歌いながら、築城を続けていた。


「やばい、、自分の好きに作れるって、、超楽しい!」

 城壁にするために積み上げた土の表面をスコップの背でならしていく。均された土は真っ平らな垂直の壁になり、表面はまるでコンクリートのようにガッチガチに硬化していた。


 築城を開始してから3日、南側の深い空堀と巨大なコンクリートの城壁が完成しようとしていた。


 ピロリロリーーン♪


「お、またレベルが上がった。どれどれ、、 よっしゃあ! 48いったぁ! ステータスもほとんどAからCか、、俺をクビにしやがったガイストスの野郎にはもう追いついたかな? あいつのレベルいくつだったっけ? しまったなぁ、、よく覚えてねえけど50以下だったと思うんだけどなあ、、」


 戦わなければ経験値が入らない勇者達とは違い、スコップを振るって建造物を作れば経験値が入る太郎は、ステータス上ではとっくにエオリア王国最強の人間になっていた、、、


お読みいただき、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
よろしければこちらもどぞ  すっぴん召喚のヤマナさん
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。