13 手四つで勝負です!
「オラァ! にんげんを牢から出せ! 俺がぶっ殺してやる!!」
そう言って土佐犬のような面構えの男が、牢番のところに駆け寄り、いきなり掴みかかった。
「ガルドワン、このバカモンが、、」
「ん? 牢の中に誰もいねえじゃねぇか? 長、にんげんはどこだ?」
「アホ、客人ならここにおるわい、、」
「ん? オオオ! 勝負だにんげん! ぶっ殺してやる!!」
やかましい奴だな、、
「タロウ殿、すまんが、、手加減してやってくれんかのぉ、、ガルドワンはワシらを守るために戦い抜いて傷だらけなんじゃ、、」
「…いや、、こう言う手合いは手加減したら怒ると思うけど?」
「しょうがないのぅ、、殺さん様にだけは頼みます、、」
「そこは気をつけるよ」
「何ごちゃごちゃ言ってんだ! 長! そいつから離れろ! 巻き込まれるぞ!」
「ほいほい、」
ガルドワンの身長は2mぐらいか? 172cmの俺よりだいぶデカイ。筋肉質でゴツイ体、着ている皮鎧は至る所に刀傷や矢や槍が刺さった跡があって、その下の肉体にも、未だに血で滲んだ傷がある。
「ウオオオオ!」
いきなりショルダータックルをかまして来るガルドワン、ヒョイっと避けてその横っ面を左手でぶん殴る!
ガゴン! ゴロゴロ、パガン!!
ガルドワンは10mほど吹っ飛んでいき、物置のようなところへ突っ込んだ。
「いでで、、ちっくしょう! やったなぁ!!」
バラバラになった建物から出てくるガルドワン、なんか憎めない奴なんだよなぁ、、
「いいぜ、来な」
そう言って、俺はスコップを横の地面に突き刺し、両手の指を目一杯広げて構えた。
ニイッと笑うガルドワン、
「わかってんじゃねぇか、、」
ガルドワンも指を開いて構える、、
両手の指を広げながらジリジリとにじり寄る俺とガルドワン、、
ガッ!!!
ガルドワンの右手と俺の左手、ガルドワンの左手と俺の右手、『手四つ』に組む!!
よし、左手は内側、ガルドワンの親指を俺の親指と人差し指で掴むように取った! そのまま親指側から握りつぶす!
右手は、ガルドワンに内側に入られたので、親指を潰されないよう注意しつつ、相手の人差し指から小指を握りつぶす!
「グァァァアアア!」
「うおぉぉぉぉおお!」
ステータス差があっても、体格差があるため、拮抗した! ガルドワンの筋肉が膨れ上がる! 俺の全身もそれを受けて筋肉が鋼のようになっていく!
「ガァァァアア!!」
「うるぁぁぁあああ!」
ガルドワンの皮鎧が膨れ上がる筋肉を抑えきれずはじける! 俺の腰ミノが二人の力の振動でワサワサ震える!
「痛ででっ! てっ、てめえ爪立てんの反則じゃね?」
「グ、、ウルセェ、勝ちゃいいんだよ!」
「あ、てめ、開き直ったな、このクソ犬!」
「るせぇ! 外道人間!」
「こんのぉおお!!」
「ガァァァー!」
「でやぁぁぁああ!!」
「グァッ!!」
ガルドワンがついに片膝をついた。
「あー、ちくしょうめ! ガァァァ! 負けた!」
「はぁはぁ、くそ、しぶとかったな、、」
力尽きて地面に大の字で倒れるガルドワン、俺は立ったままそれを見下ろしていた。
「どうじゃった? ガルドワン、タロウ殿の実力は?」
「…ああ、強え、、俺の得意な力比べてこのザマだ、、その気になったら此処なんてあっという間に制圧されるだろうな、、」
「あー、すまない、邪魔をした、、村に迷惑かけてゴメンよ。長、俺もう帰るよ、この村のことは誰にも言わないから」
そう言って帰ろうとすると、、
ガシッと腕を掴まれた。
「おう、晩飯食ってけ。ろくな食いもん無くってすまんが、ケンカ売った詫びだ」
「余裕無いのに俺にメシ奢ろうってのか、、」
「ああ、今日は鳥が数羽取れたからな、村人みんなで分けるからちょっとしか奢れんが、、」
周りを見渡すと、、みんな瘦せぎすでろくに食っていないのがわかる。
「長、村人は何人居るんだい?」
「?? 27人ですじゃ」
俺のクラスメートと同じ数かよ、、
「よし、わかった!! 食材は俺が出す!! 宴会しよう!!」
「? オメェ何も持ってねえじゃ、、」
ガルドワンが言い終わらないうちに念ずる。
『ネコ』、イモ全部! ホーンラビット3羽! モヒカンベアの肉が入った袋全部! 出して!
ドサドサドサ!
あんぐり口を開ける長とガルドワン、
「おめ、魔導師だったのか? なのに俺と腕力で、、」
「いや、違うけど」
「だってそれって収納魔法、、」
「あー違うって言ってんだろ、細かいことはいいから、メシの準備しろよ、みんな腹減ってんだろ?」
「あ、ああ、すまん」
そうなのだ、、この村のほとんどの犬人が『状態異常:飢え』がついていた、、その辛さは俺もよくわかる、、
村の真ん中の広場で何箇所も火が焚かれ、肉とイモが焼かれた。特にモヒカンベアの骨は大人気で、食事が終わってもみんなかじりついていた。やっぱり犬なんだ、、
シウバとターニャもお母さんと一緒にやってきた。真っ白な毛並みの綺麗な人だったなー、左右の手を子供達とつなぎながらやってきて、しきりに頭を下げていた。まだ本調子じゃなさそうだから、追加の薬草と食べ物をたくさん持って家に帰ってもらったけど。
日が暮れても俺は焚き火の前で長たちと話をしていた。この世界の事、長たちの今までの事を聞いていたのだ。長たちはエオリアの更に南の国、サウザーラで迫害を受け、ここまで逃げてきたらしい。サウザーラは数十年前に樹立した純人間の国家、そこは獣人や亜人を蔑み、村を襲って連れて行き奴隷にするという、外道の国家だった。
「タロウ様、感謝致します、、」
「ん? いや、宴会、俺も楽しかったし」
「いえ、、皆のこのような笑顔、数年ぶりに見ました。腹一杯食べさせる事が出来なかったのはこの私が無能だったからですじゃ、、」
「んなこたネェ! 長のお陰で俺たちは今日まで生きてこられたんだ! 誰にもバカにさせねぇよ!!」
「ガルドワンの言う通りだと思いますよ、 長、もし何かあったら、、ここから北東へ逃げてきてください」
「しかし、、北のほうにはこれも純人間至上主義の『エオリア』が、、」
「その手前に俺の拠点があります。エオリアには手を出させません」
「わかりました、、いざという時は頼りにさせていただきますのじゃ」
「今日楽しませてもらったお礼だよ。遠慮はしないで」
「タロウ様、、」「タロウ、、オメェ、、」
「あ、ところで、仕事を一つ頼みたいんだけど、」
「何の仕事ですかな? 私どもで出来れば、」
「毛皮を一枚、鞣して欲しいんだけど、この村で出来る?」
「はい、鞣す事が出来る職人が居ますので、大丈夫ですが」
「良かった、じゃあこれお願いします」
そう言ってモヒカンベアの毛皮を出す。
「「……」」
無言になる長とガルドワン、
「ちょっと大きすぎた? 無理かな?」
「いえ、できます、できますのじゃが、、」
「参ったな、、俺、こんなん倒すヤツに喧嘩売ったのかよ、、」
どうやって倒したかは秘密にしておきました、、
お読みいただきありがとうございます。




