冬の女王さまのかくしごと(小学2年生版)
あるところに、季節の塔と呼ばれる大きな塔がありました。
その塔はそれはそれは不思議な塔でした。
春の女王さまがいるときは春。
夏の女王さまがいるときは夏。
秋の女王さまがいるときは秋。
冬の女王さまがいるときは冬。
女王さまがいるときに、季節がかわるのです。
みんなで話し合い、一年を四つに分けた、三ヶ月ずつ、それぞれの季節にかえようということになりました。
しかし、ある時、いつまでたっても冬がおわらなくなってしまいました。冬の女王さまが季節の塔から出てこなくなってしまったのです。
ずっと雪はふりつづけ、食べ物がそだちません。これでは食べるものがなくなってしまいます。みんなはとてもこまってしまいました。
「春にならないと食べ物がなくなってしまうよ」
「雪合戦も、雪だるま作りもあきちゃったよ」
みんなはなんとかして冬の女王さまに、季節の塔から出てきてもらおうと考えました。
そして、冬の女王さまのともだちの、一人の男の子が会いに行くことになりました。
「冬の女王さま~! どうしたの~!?」
塔についた男の子が、大きな声でよびかけます。
男の子が声をかけると、冬の女王さまがドアをあけてくれました。
「わたし、どうしよう……」
「どうしたの、冬の女王さま?」
「ここから出れないの」
冬の女王さまといっしょに、男の子は季節の塔に入ります。そこには、だんろの前で丸くなる、白いウサギさんがいたのです。
「外はさむいよぅ。出たくないよぅ」
白いウサギさんは、だんろの前からうごこうとはしません。冬の女王さまはなきそうになってしまいました。
「春の女王さまはきっとウサギさんをおいだしちゃうから季節をかえられないの!」
「それならだいじょうぶ!」
男の子はむねをはって答えます。
「春の女王さまもきっとウサギさんを好きになってくれるさ!」
冬の女王さまは、男の子をしんじることにしました。季節の塔に春の女王さまを呼びました。
「わー! ウサギさんだ!」
春の女王さまは、白いウサギさんを見ると、うれしそうにだきつきました。
これには冬の女王さまもひとあんしん。ぶじに季節を春にすることができます。
「春になったぞ!」
「さくら、きれいだな~!」
みんなも春になったことをよろこんでいます。
そして、季節の塔には白いウサギさんがすむようになりましたとさ。
めでたしめでたし。