表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/11

祈り子の聖域/拠点確保

 精霊の村、またはその中央にある『祈り子の聖域』、そこが私の暮らす場所になるらしい。

 らしいのだが……


……豪華過ぎるのである。


 よくアニメやら漫画やらで、豪邸に庭があって、プールがあって、だだっ広い食堂があって、何の意味があるのか分からない絵画があったりする。

 今紹介されているのは先ほど挙げたもののプールだけが抜けているだけの、正真正銘の豪邸なのだ。

 いくら知り合いである茶髪の少女に、

「ここ前に貴族が住んでた家なんだけど、どっかに引っ越してから誰も買わないんだよね。村の人たちが壊して祭壇やら教会やら、どちらも出来ないならせめて畑にして食料を増やしてくれって言うんだよ」

なんて言われて大した物じゃないと説明されても、それにしては手入れが行き届いているので気軽に使えないのだ。

 まあ、金がないから他の場所に住むことも出来ないし、転生者はなるべく騒ぎを起こして欲しくないという理由で家賃はかなり低くなるらしいのでこの家に住まわせてもらっている。


   ☆


 さて、こんな豪邸では落ち着かない。

 ではどうすれば良いか?

 簡単だ。部屋の一室だけでも心休まる場所を作り、そこで主に生活したらいい。

 そこで木製の机とイスだ。それがあれば錬金術を使いやすくなる。別に机もイスも無くたって地べたに座れば錬金術は使えるのだが、地べたに座って使うときとイスに座り机と向かい合って使うときでは、かなり感覚が違う。

 錬金を精霊との交渉と侮ることなかれ。

 まず、これは本からの受け売りなのだが、『精霊を呼び込むには精霊と同属性のマナを送り込まなければならない』。

 精霊に直接声を届けることが出来る私は無視出来る工程なのだが、私があの木製家屋から出てきたのは基本を覚え、応用を使え、万全の状態で無からの錬成を行うためだ。

 話を戻して、このマナを送り込む行為は体制が楽な方が送り込み易い。

 例を挙げるなら立っている時よりも座っている時、座っている時より寝っ転がっている時、というようにマナが送りやすいのだ。

 本来、私のように少し体制が違うだけで違和感を覚えることはないだろう。実際地べたに座って錬金術を使うより、立って錬金術を使った方が使いやすかった。

 多分、これは精神的な要因があるのだと思う。

 錬金術という神から祝福された術を行使するのに、地べたに座るなどというあまりに不遜な態度をとることに後ろめたさを感じるのだろう。

 ともかく、そんなわけで飾りっ気のない机とイスが必要だ。

 ついでに腹ごしらえと服を買わないといけない。けど金がない。

 ということで──


「……さすがに泣きつくの早くないかな」


──知りあいに泣きつきました。

 仕方ないじゃないか。働いたってどうせ払われるのは後になって。日給の働き手に行こうとも、今の女の体では力仕事も出来ないだろう。

 最近急速に思考が女らしくなったが根本ではまだ男、男に媚びて物を買ってもらうことなど出来ない。

 必然的に助けを求める訳になるのだが知りあいは一人しか居ない。

「分かった、分かったよ! 私の仕事を手伝ってくれたら食事おごってあげるから!」

……持つべきは友、昔の人は的を射たことを言うものだ。

「ありがとう! ありがとう!」

「わわ!? 抱きしめないで──ほ、ほら村長様だって見てる!」

「さっきまで居なかった──え?」

 知りあいである褐色の肌をした少女の指さす先には、先程までは居なかった老人がいた。

 その服装はいくつもの刺繍をされ、あるものは明確な形で縫われ、あるものはあまりにも曖昧で何を模っているのか分からない形で縫われている。

 そんな変な服を着た老人は、ニッコリした笑顔で、私に言った。

「お元気そうで何より。ここ『精霊の村』村長、もとい『祈り子の聖域』宮司の雨之宮誠道あまのみやせいどう)と申します」

 とっさにこの場から逃げ出したいという気持ちを、初めてここで知った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ