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美しい月
朝が近づいてきた。
黒い闇が段々と明るんで、灰色になりつつある。
白い月が薄らんで、反対側から太陽が昇ってこようとしている。
「チチチチ」と聞こえるのは鳥の泣き声か、朝の音がしている。
眠りたいという気持ちは、どこかへ失くしてしまったみたいだ。
杉崎さんへの気持ちも。
青いハイヒールの女は、青いハイヒールを脱がせてもらって、きっと今はただの女だ。
それでいい。
美湖さんが彼女の想い出も一緒にゴミ箱に放り込んでやった。
それでいい。
朝が始まる。
新しい一日。
あたしはまだ新しくない。
あたしらくし、あたしの朝を迎える。
今夜またきっと、美しい月に会えますように。




