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おんぶ
そしてまた、何事もなかったように沈黙が訪れた。
外の雨はもうすっかり止んでいた。
月は朧に光を放っていた。
杉崎さんはコルドンルージュを飲み終えていた。
すくっと立った姿はやっぱり背が高くて、すらっとしていて、…格好良かった。
黒光りするキレイな長財布から取り出した1000円札3枚をカウンターに置いた。
釣りは要らないと、掌を1度押すようにおねぇさんに見せていた。
酔い潰れた女の方に背中を向けて、渋い声で地面に向かって言った。
「頼む。」
おねぇさんがカウンターから出てきて、酔い潰れた女の腕を杉崎さんの方にかけさせて、それから、おんぶさせた。




