50/63
視線
コトン。
カウンター向こうのおねぇさんは二杯目のシンガポール・スリングを青いハイヒールの女の前に置いた。
彼女は慌てずに両手で冷たいグラスを包むようにもって、そっと口元へグラスを運び、ゆっくり、ゆっくりと口を開いた。
呑むかと思った瞬間、あたしの方を向いた。
瞬時にあたしは目を反らした。たまたま、カウンター向こうのおねぇさんを見ちまった。
おねぇさんは少しぎょっとした感じで顎を引き、さりげなく視線を床に向けた。
青いハイヒールの女は何も言わず、また、グラスを口元へゆっくりと持って行った。
下唇が下方向へ向かって下げられ、正にグラスの縁に触れるだろうその瞬間、またもや私の方へ視線を投げた。




