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電車に乗った
「行って」
「え?」
「お願い、行って!」
遠ざかる足音が聞こえた。ううん、響いた。早くも遅くもなく、足音は段々小さくなって行った。
胸に抱えた靴箱が入った紙袋を、強く強く抱きしめた。
足音が聞こえなくなったとき、涙が止まった。
顔を上げた。
定期は鞄の中にあった。
改札を颯爽と通り過ぎた。
ICカードが検知されなかったのをもろともせず、通り過ぎた。
階段を駆け上がった。
夜風が冷たかった。
ホームにはそこそこに人がいた。
夜9時半、居て当然なくらい、多くも少なくもなく、人がいた。
誰かに見られているんだろうか、涙が乾いた頬を?
もうどうでも良かった。
電車がきた。
乗り込んだ。




