4/63
反射光は
もう11時を過ぎていた。
真向いのビルの麓に来たのは偶然。
否、この前を通り過ぎたかったのは、分かってる。
通り過ぎた突き当りの角を曲がったところにある古びた郵便ポスト、懸賞葉書を出すのは今日じゃなくたっていいのに。
自らの歩みもなんだか遅い。
ふと、8階を見上げると、目の前にある非常口が音を立てて開いた。
人影が颯爽と反対側へ突き進む。
ハイヒールが階段を駆け下りてくる音が響く。
反対がへと突き進む男の人の後ろ姿はどことなく荒々しく、羽織るスプリングコートは風を孕んでいた。
「杉崎さん!」
目の前に立ちはだかる青いハイヒールが一筋の光を放つ。
甲高い女性の声が叫ぶかのように発した名前。
振り返る男。
陽の光が差す。
彼の顔全体が陽の光を反射させる鏡のようで、表情は少しも見えなかった。




