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流れた涙
重そうなドアを全身の力を籠めて開けてくれた店員さんが
「こちらからどうぞ、ありがとうございました。」
と、声をかけてくれたとき、私の頬には涙が伝った。
ぎょっとする店員さん。
そりゃあそうですよね。目の前でお客が泣き出したりしたら、ビックリしますよね。
でも、ああ、やっとこの店員さんの笑顔が見られたと思ったら、なんだかほっとしたのか気が抜けたのか、涙が筋を作って頬を伝わり、止まらなくなってしまった。
「す、すみません。あの、こんなギリギリに、ありがとうございました。」
やっとの思いでそう言い切ると、改札口を目がけて私は駆け出した。
「あの、いえ…」という声が、かすかに聞こえた。
おろおろとし始めた店員さんを見るのは忍びなかった。




