36/63
揺るがない
「青いハイヒール、…履いてみたいんですが。」
「…どうぞ。」
店内のお店のスペースへ招きいれてはくれたけど、視線は冷ややかで、そんな濡れ鼠で本当にこの店に入ってくるの?という風だった。
けれど私はもう引き下がらない決心ができていた。
高級そうな低めのクッション、明日のオープンのためにすでに清掃済みの風だったけれど、ずぶ濡れの態で平気でどっかと腰かけてやった。
跪いて私のずぶ濡れの靴を脱がせてくれた。
塗れて冷え切った、ストッキングに包まれた私の爪先に触れてしまったことを申し訳なさそうに、慌ててふわふわのハンドタオルをもってきて温めるように拭いてくれた。
けれどその態度は冷ややかなままで、視線は下に向けられたままで、私としては始終居心地の悪い想いから逃れることはできなかった。




