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優しくない
「知らないよ。」
立ち上がりながら杉崎さんはそう言って、私のことを見下した。
なんだか冷たく響いた。
「大丈夫でしょうか?」
「なにが?」
「あの子、あんなに雨に打たれて、風邪ひかなきゃいいけど。」
杉崎さんは私のことを見下ろしたまま、右手を徐に振り落して、前頭をぽんぽんと2回はたいた。
そして、背中を向けて
「優しいんだな。」
って。
優しい?
私が?
杉崎さんは見ていないだろうに、私はぶるんぶるんと頭を大きく横に向けた。
優しくなんてない。
ほんとはあんな子の心配なんてしてない。
杉崎さんに何か話をしたかっただけ。
そんな風に思ったら、涙が出てきた。




