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今日から学校と仕事、始まります。①莞

嘘な声

作者: 孤独


「はい、皆さん!よくぞお越しくださいました!!」



私は弓長晶ゆみなが あきら

わけあって今から商売のお手伝いをすることになりました。手短にではありますが、



「今日の目玉商品はこちら!!このゴキブリ駆除グッズ!”ゴッキーホイホイ”!!」


世も寒いですね。中々売れない商品。造られて使われるためにあるというのにもうすぐ廃棄間近。その処理を私に頼まれたわけです。


「皆さん!ご家庭には害虫なんて、ゴキブリなんてやってこない!そー思っていては困ります!奴等はどこからでも、あなたのご家庭に入り込んでくる!空き巣と同じ手口でやってきます!あなたを脅かすこの害虫!人事ではないですよ!目の届かないところにもう奴等はいるんです!」


正直、商品とセールストークはまったく別物です。


「卵を産みつけ、数を増やし、その繰り返しであなたの家に侵食していきます!寝ている時、ゴキブリが寄ってきて眠れますか!?洗濯機の中にゴキブリがいたらどうですか!?料理をする台所でゴキブリがいて、その料理をお子様に提供できますか!?」


基本的なことではありますが。商品とは目的のために使われるべき物。私はあくまで過度な言い方をしています。

目的がないというのなら作れば良い。それをやるのがセールスマンのお仕事。商品を造り上げた者達のためでも、その商品のためにも。最終的にお客様のためにもです。



「そーいった不安を一掃するのが、この”ゴッキーホイホイ”!これにはゴキブリの大好物な餌があり、奴等は食べにやってきます!しかし、大好物なこの餌の中には猛毒があり、食べて数分後には死滅する強力なものです!これでゴキブリ共は全滅です!!」



お客様を不安にさせる。つまりは心を弱くさせる。不安はやがて差し出される希望を信頼し始める。



「ご家庭の害虫対策の一つとして、どうかお買い求めください!はーい!今からタイムセールです!4割引きでの販売です!これだけ残っています!ほとんどのご家庭に配置できますよ!この効果、効き目はしっかりと保障します!!」


期限切れ間近ではなく、ここに置く場所と金がもうないと言ってください。想定されている売却値を大幅に下回っていますが、これもまた仕方のないことです。金にさせるだけで私も手一杯です。全部使われると良いですね。





タイムセールとセールストークから3時間後。なんとか私はこの山のようにあった”ゴッキーホイホイ”を売り切った。正直な話ですが、売り上げ金額よりも私がもらった日当の方が遥かに高いです。半日商売人。これが達成できなければ半分も金はもらえない契約。本気でやらなければなりませんでした。


「おや、三矢さんに酉さん。お出迎えに来てくれたんですか?」


この仕事を終えると私の仕事仲間のお2人が出迎えてくれました。


「難儀な仕事を任せて悪かったな」

「大丈夫ですよ、三矢さん。私はこーゆう道ですから」

「見事なトークだったわね。嬉しそうにしてた主婦がいて、あなたも嬉しいんじゃない?」

「あははは、酉さんは意地悪な方ですね」



知っている者は少ない事実。

商品とは正確な物であるのが良い。しかし、稀にある。そのさらに稀に大量に現れることがある。



「あの商品はあまりにも強力な匂い出して、近隣の害虫までも呼んでしまう危険物だ。早急な売却処理が必要だった」

「ふふふ。害虫がやってくる原因が、害虫対策にあるなんて言えるモノじゃないわよね」



スーパー側が置けなくなっている大きな理由がこの欠点であった。封をしてても寄ってくることもあったため、早急な廃棄か、隠匿な売買のどちらかが必要だった。

結局、店側はお金を得るために隠匿の売買を行なった。弓長はそのために呼ばれた。



「しょうがないですよ、お金の方が重要な世の中ですから」


辛いこともしなくちゃならないのが仕事なんです。そう、改めて弓長は心に留める。

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