13.使い魔
城に帰還して、すぐに気がついた。
鶏の羽が散らばっている。
数を数えると、三羽足りない。
「……襲われた!?……誰に!?」
すぐに、ミリアに会いに行く。異変に気がついているかも知れない。
「ミリ……ア……?」
ミリアは、小さなドラゴンと戯れていた。
「あ、お帰りなさい。
ギィタ、ご挨拶」
「ギィ!」
……まさかとは思うが。
「ミリア。コイツは?」
「前にリューイが贈ってくれたドラゴンの雛。
可愛いでしょ?」
「ソイツの飯は?」
「……ゴメン、さっき、鶏を食べてた」
犯人は判明した。別に、大した損害でもないから、さほど気にすることはないが。
「……そうか。
ミリアの使い魔にしたのか?」
「うん!」
ミリアは嬉しそうだし、わざわざ問題にすることもあるまい。
「……今度から、食事については相談してくれ。
活餌しか食べないのだとしても、知らないうちに食われると困る」
「うん。
決して、誰かが忘れていたから、急に思い出して困ったわけではないでしょう?」
うん、そうだね。作者が忘れ……ケホンケホン。
「……中々、優秀だろう?」
「うん。可愛い。
賢いし」
「……で、ギィタって名づけたのか?」
「うん。『ギィギィ』鳴くから、ギィタ」
「死肉は食うんだろうか?」
亜空間から、レッドバニーの肉を取り出す。
「ギィ?」
「食べていいの?だって」
「ああ。そのために出した」
「いいって、ギィタ。良かったね」
「ギィ!」
死肉を食うことにも、全く躊躇いのない様子。良かった。活餌しか食べないのなら、何か対策を考えなければならないところだった。
「使い魔としては、最高峰だからなぁ。
僕用にも、欲しいぐらいだよ」
「……欲しいの?」
ミリアがギィタを大事そうにギュッと抱きしめる。
「取らないから!」
「……ホントに?」
「そのうち、自分で探しに行くよ」
「……一人で?」
「……ついて来たいの?」
「うん……。私、いっつも置いていかれるから」
「う……ゴメン」
ミリアは、ギィタの顎の下を撫でると、ギィタは気持ち良さそうに啼いた。
「……そういえば」
ミリアがそう切り出す。
「何?」
「カルフィナさんとスティンクさんとセリンヌさん、もうそろそろメンテナンスの時期だ、って言ってた」
「……メンテナンス?」
「うん。大人になる準備だって。身長もぐーんと伸びるんだ、って言ってた」
「ふぅん……」
「その代わり、その後は成長がほとんど無くなるとか……」
「……ステータスの、って意味かな?」
「うん、多分」
十歳になる頃に、ということになるだろう。
ロークは確か、あの三人より一歳若かったはずだから、まだなのだろう。
「大人、かぁ。大人になったら、僕も『魔王』を名乗ろうかなぁ」
「うん。いいんじゃない?」
僕は、のん気にこんなことを言っていたが、もう少し後に、「ダンジョンの最奥には魔王がいる」という噂話を聞き、僕が、実質、魔王として扱われていることを知るのであった。




