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僕は将来、魔王になる男だ!!  作者: 風妻 時龍
3章 ダンジョン篇
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10.ダンジョン管理

 このダンジョンは、そのレベル帯に侵入者がいなくなった時点で、自動生成される。

 だが。ダンジョンボスが設定しなければ出現しない、『中ボス』という存在がある。区切りの良い階層に自動配置される『小ボス』より、一回り強い存在だ。

 まずは、要所要所にそれを配置してゆく。


「しかし……ラスボスはステータス固定かぁ。面白くないなぁ……」


 そう。中ボスもレベル帯や階層によって、それに応じる強さのモンスターだったり、ラスボスである僕は、限界突破状態の上限値、99999という値で固定されていたり、専用スキルが幾つもあったりと、遊びの要素がやや少ない。

 あとは、場所はランダムだが、レベル帯や階層を指定して、宝箱としてアイテムを配置できたり、卑弥呼にもいずれ教えるべき情報は多い。特に、スロット付きアイテムは、初期配置が極端に少なく、大量にばら撒くために時間がかなりかかった。中ボスを含め、それらの設定に一週間かかった。


 他にもやったことはある。永続的な明かりを作り、城のある最下層の地面を耕して野菜を植えた。生きた家畜を仕入れて持ち込み、鶏を一羽捌いてカード化しないのを確認した後、飼育することにした。牧草なども植え、そのうち、交配もするつもりだ。当然、ダンジョンから出なくても食糧を確保できるようにするためだ。


 一度、ダンジョンを出て卑弥呼と話して、近いうちに、八剣守護者がこのダンジョンに挑戦を目論んでいるらしいという情報を仕入れた。

 修行の場が欲しい、という事情があってのことらしい。

 卑弥呼には、スロット付きの装備を幾つか渡して、宝玉の販売方法を聞くと、籤にしたそうだ。ランダムで100個入っている中から、1万マナクルで一回引けるそうだ。意図的に、必ず一個は大当たりを入れて。

 既に、ダンジョンへの挑戦者は、少ないながら存在している。今現在も、何人かはダンジョン内にいる。

 中ボスのいるレベルは厳しいはずだ。何故なら、中ボスの強さの基準が、『そのレベルの100階層を踏破するのと同等の難易度』で倒せるという、単純比較は出来ないまでも、十分に厳しい条件だからだ。つまり、概算で余力を半分は残していないと倒せない。


 だから。

 相当厳しい攻略になることを考慮に入れて、僕は、ダンジョンの機能を色々調べた結果、レベルアップ時のステータス上昇ボーナスを僅かながら機能させることにした。

 具体的に言うと、レベルアップ時に、全ステータスが現在値の2%上昇するようにした。厳密には計算していないが、50レベル弱のレベルアップで、ステータスが2倍になる計算だ。……40レベルにも満たないかも知れないな、複利と同じ計算方法になるはずだから。36レベルぐらいか?

 しかもだ。

 ダンジョン内で死亡した場合、装備品などを全て引っぺがされた上で、ダンジョン入り口に帰還させられるわけだが(何故か、布の服を着せられた状態でという、全裸を回避する処置は取られているが)、ステータスはそのままで、レベルは1からやり直しだ!!

 えー……。レベルが行き詰まったら、わざと死亡すると効率的に強くなれるシステムとなっております。

 教えてやらないけどね!自分でこの裏技を発見しやがれ!ってなトコだ。

 あと、カード変換機を1つ調達し、自分で所持するのとは別に、卑弥呼に預けた。使用料を取ってダンジョン攻略者に使わせ、一回1000マナクルという価格を設定した。

 カード変換機に対しては、どうやら、1つのダンジョンにおいて最も初めの宝箱にのみ入っていて、あとはラスボスとダンジョン管理者権限を両方持っている者に限り、自由に作り出せるという特別なアイテムだった。

 それが典型的な例なのだが、実は、ラスボスの設定とダンジョン管理者の権限の両方の指定をされている者に限り出来ることというのが、中々多く、しかも重要なものばかりだ。まるで、ダンジョン管理者が原則ラスボスになって下さいと言わんばかりの設定となっている。


 おかげで、ダンジョン内でももう、僕は自由にメソッドを作れるし、アイテムも作れる。ただ、ラスボスはある一定以上の強さを持っていなければならないのだろう、ステータスや一部のスキルは、その両方があっても、設定を変更できない。正直、ダンジョン内の圧倒的強者である。恐らく、本人にその意志があれば、ダンジョン内では必ず戦闘に勝てるだけの能力だ。何しろ、オーバーキル確定の攻撃スキルがあり、一定の条件下で、反撃として発動されてしまう。下手な攻撃をしたら即終わりを意味するそれは、初見では絶対に勝てませんという保証付きの能力と言えた。ただ、謎スキルの中には、ごく少数、そのオーバーキル確定攻撃に耐える可能性のあるスキルはあるので、運良く、それを持っていれば、一撃死は避けられる。……勝てる可能性は、皆無だが。

 まぁ、元々、レベル101以降は、オマケの意味合いで作られたようなのだ。だから、レベル101以降は、ダンジョン攻略そのものが鬼のように難しい。レベル100と比べて、圧倒的な差が存在しているのだ。

 だから、実質、レベル100の100層にいる中ボスがラスボスで、僕のように、それ以降にいる、ラスボス及び中ボスは、隠しキャラに近い存在だ。黒龍とかシヴァとかヴィシュヌとか、凄そうだと思っていたカードの元になるモンスターは、レベル101以降の中ボスとしてしか、配置できなかったりする。それを素材として得られるスキルが、強力すぎるのも、遊びの要素でしかない。


 いやぁ……、コードを読めるものだから、作成者のコメントを読めるのは、情報収集の意味では有利だね♪


 ……若干、情報量が多すぎるけどね♪


「食糧がけっこう売れるのよねぇ……」


 ダンジョン経営をしたいと言っていた卑弥呼は、満足そうだ。マナクルも、けっこう稼げているようだし。


「困ったことはないか?」


 ある程度の協力は、僕にとっても益があると思っている。卑弥呼がどうしたいのか、是非とも知りたいのだが。


「映像の価値は、まだ、皆、気付いてないようなんだよね」

「……中ボスの情報、流そうか?」


 映像で中ボスのデータを映せば、攻略の手がかりになるかもと思ったのだが。


「八剣守護者が来れば、何かが変わると思うのよ」

「僕はあまり期待していない」


 あの剣は、全て、1つのスキルも発動しない、ちょっと素材が良いだけの剣になる。ステータス次第だが、101レベル以降に通用するかどうか、怪しいものだ。


「やりたいことは幾つか思いつくけれど……人手が足りないのよねぇ。

 奴隷でも買おうかしら?

 ……でも、それだけの余裕が出来るまでは、時間がかかるわ」

「資金提供しようか?」

「要らない。自分で出来ることは、時間がかかっても自分でやるから楽しいんじゃない!

 あなたには、アタシに出来ないことを頼むわ」

「じゃあ、何か頼みたいことは?」

「意外と、自分のステータスを知らない人が多くて……。挑戦レベルを参考に勧めても、聞く耳を持たない人が多いのよね。

 ダンジョン挑戦者の証として、ステータスの現在値も表示するアイテムがあると、売れると思うんだけど」

「ああ、簡単に出来るが?

 とりあえず何枚要る?」

「……百枚」


 実は、学校にいた時の学生証を見た時に、似たようなことが出来ないかを試した際、遥かに高性能なものが出来上がってしまい、それを作成するメソッドを用意していたため、素材となる、水の特殊結晶の板があれば、すぐに作れてしまう。


「ほい。

 ミリィとミィシャを貸そうか?少し品質の良いポーションなら作れるし、オマケで、魔力回復ポーションの作り方を仕込んで貸し出しても構わないが?」

「ああ、それは助かるわ。……いいの?」

「ダンジョンに挑戦する連中のため、という意味合いが強いな。

 ポーションぐらい持ち込めないと、厳しいと思うし」

「じゃあ、ありがたく貸してもらうわ。

 逆に、アタシに出来ることはない?」

「レベル101以降は極端に厳しいから、やめておくよう忠告でもしておいてくれれば。

 他に何か思いついたら、その時に頼むよ」

「了解。

 あ、いらっしゃいませ~♪」


 ダンジョンから帰還した4人組が、買い物にやってきた。僕は脇にどけて、様子を見る。


「畜生!ボスが強すぎる!

 おい、映像を撮影できる道具があると言ったな。撮影してきたら、買い取ると言っていたが、逆に言うと、レベル10の100階にいるボスの映像があったりするのか?」

「まだありませんが……ご用意致しますか?」


 卑弥呼が僕に目配せをしてくる。レベル10かぁ……イエローベアを配置していたはずだなぁ。


「どのくらいかかる?」


 僕は、卑弥呼に半日くれと耳打ちする。


「明日中には、何とか……」

「そうか。……今日は断念するか。

 アイツは、攻略法の準備無しでは、厳しいよ!

 マナをそこそこ拾えたから、収益は多少あるが……」


 多分、割に合わない額なのだろう。


「あ、そうだ。ステータスの値を表示できるプレートを仕入れたのですが――」

「……数値で分かるのか!?」

「はい、そのはずですが……」

「くれ!まず1つ。試したい!」

「毎度あり~♪」


 代金の5000マナクルを受け取り、一枚、ステータスプレートを卑弥呼が差し出すと、「血を一滴垂らすと良い」と僕が説明する。男は、すぐに試した。


「……魔力が低いのは予想通りだが……。

 最も高いのが筋力、83か。……参考値が分からん」

「映像を用意する時に、奴のステータスを載せるよ。比較してくれ」

「そうか!それはいい!

 ……明日、もう3枚買うかも知れん。一応、頭の片隅に覚えていてくれ」

「はい、ありがとうございます~♪」


 そいつらが帰った後で、「アイツラでは、イエローベアの討伐は厳しいだろうなぁ」とボヤく。


「じゃあ、僕もやることが出来たし、行くよ。プロモーションビデオが出来たら、また来る」

「……プロモーションビデオ?」

「ああ。攻略情報が必要なんだろう?それなりに、中ボスを紹介しないとね」


 全ての中ボスの映像を用意するには、時間がかかる。

 とりあえずは、明日の朝までに、イエローベアを含む数体分の、近いうちに挑戦者が現れるであろう中ボスの映像を用意したい。

 忙しくなりそうだ。

 僕は、そのことに大きな期待感を持っていた。

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