表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕は将来、魔王になる男だ!!  作者: 風妻 時龍
3章 ダンジョン篇
69/79

7.検証

 ダンジョンレベル100脱出直前。

 僕は、皆を待たせ、カードの検証を始めた。


 まず、スロットは物理的にも宝石を嵌めるような穴が開いていて、スキルをセットすると、直径5cmほどの球形の宝石が嵌るようになっていて、その宝石……というか、宝玉と言うべきだろう、を物理的に外すと、スロットからスキルも外れ、宝玉が失われることも無く、物理スロットに再び宝玉を嵌めるとスキルも再びセットされ、スロット付きのアイテムが1つあるだけで、超便利アイテムになることが分かった。また、防御的なスキルを剣にセットすることも問題なく、装備によって宝玉の備えるスキルが変化するということも無さそうだ。これについては、スロット付きの防具が出てくれば、情報は確定する。


 つまり、だ。

 ……この宝玉を売れば、ダンジョン挑戦者は買ってくれるだろうことが確定したことになる。

 時期が来たら、大量生産することは決定事項である。


 とりあえず、謎スキルの宝玉は全部作成する。

 正直、全スキルを覚えるのは骨だ。その都度、必要なものを採用しよう。

 手持ちのカードの組み合わせで全パターンを試したわけではないが、謎スキルは全てを制覇は出来なかった。ただ、持っているカードについて、謎スキルの発生するパターンはほぼ全て網羅したはずなので、問題は、まだ持っていないカード――つまり、レベル9999でカード変換機を使っていても出現しないカードが必要である可能性が高いことが判明した。


 そうと分かれば、レベルは操作出来るのだし、試すべし!


 レベルを1000毎に区切って、それぞれで100回、計900回、カードを変換した。

 確認が大変であったが、謎スキルの制覇はそれで済んだ。


「のん気ねぇ。あの子、助ける気はないのかしら?」

「そんなことはない。慎重に事を進めているだけだ」

「あら。いざとなったら、いつでも呼び出せるからだと思ってたわ」

「……?」

「可能なんでしょ、これを持ってたら?」


 ルシエルが差し出した鍵を見て、僕はポンッと手を叩く。


「その手があった」

「……気付いてなかったの?」

「いやぁ……テンパってたようだ」


 ならば、だ。


「まずは、ダンジョンから出ようか」


 さて。

 問題は、呼び出す順番だ。

 勿論、不測事態に関する予想は立てておく。ダンジョン内だと、僕の作ったアイテムが効果を発揮しない可能性がある。

 ……少しだけ、失敗したという思いもある。賢者の石を使っていれば、恐らく全機能を使えたであろうことに対してだ。


 最初は、ミリィとミィシャを選択した。


 ……だが。想定の範囲内だが、呼び出せない。


「うーん……。やっぱり、頑張らないとダメそうだ」

「ダンジョンを消せないの?」

「消せなくはないが……」


 卑弥呼が僕を睨んでいる。


「いや。あと3日は頑張ろう」

「いいけど、次、いきなりレベル1000に挑んだとしても、レベル100で一週間近くかかったんだから、3日という目標は無理って分かってる?」

「……そういやそうだな」


 ただ。

 それについては、手が無いわけではない。

 実は、ダンジョン内で次のエリアへ移動する階段なり転移の門なりの、場所がおおよその方角で分かるスキルが存在するので、探索の時間は大分削ることが可能だと分かっている。ダンジョンがそのレベルのダンジョン内が無人になったタイミングで、ランダムに自動生成される関係で、複雑な迷路構造になる可能性が非常に低く、方角が分かるだけで、大きな効果が期待されるためだ。


 スキルは3つ持ち込めるので、それの他に、罠対策のスキルを持ったとして、スキルに1つ分の余裕を残したまま、探索を楽に進めることは可能だ。戦闘が厳しい場合には、凶悪無比なスキルで戦闘を圧倒して回転を早くしたい。特別な敵でも出ない限り、『一撃必殺』とでも言うべき、謎スキルNo.141をつけておけば、ほぼ敵なしのはずだ。


 だが。

 次にレベル300に挑戦するという僕の計画は中止だ。


「……そうだな。

 次回は、レベル1000に挑もう。

 危ないようなら、帰還して違う策を試す。

 まだ、手が尽きたわけではない」

「3日で制覇する、って?」

「ああ。アイツラが飢えていたら、可愛そうだしな」

「飢え死にしたら、出てこれるんじゃない?」

「……飢える、ってことをそんなに甘く見る気はない。

 出来れば、飢え死ぬ前に救い出す」

「食糧を備えてればいいけどねぇー」


 恐らく、食糧の備えはある。ミリィとミィシャが、干し肉ぐらいは備えているはずだ。ただ、水は分からない。


「ああ、卑弥呼。ちょっと用事がある」

「……何?」

「ダンジョン経営に関わる話だ」

「……聞かせてもらおうじゃないの」


 やはり、こう言うと、卑弥呼は興味を示してくれるようだ。


「まず、どこかの街に行って、ダンジョンに関する情報を流してくれ。

 転移ゲートは作れるな?ダンジョン前に繋がる転移ゲートを、何箇所か作って欲しい。

 あとは……コイツを渡そう」


 僕は、1つ魔法の鞄を取り出した。


「宝玉が沢山入っている。ダンジョン内で手に入るものの中でも、特に目玉アイテムだ。

 ただ、スロット付きの装備が中々出なくて渡せないから、使い道は当面無いんだが。

 スロットに宝玉を嵌めると、スキルが付く。やたら強力なスキルの宝玉が多いが、売り方は任せる。

 正直、この先、卑弥呼が付いて来ても、足手纏いだ。だから、やりたいように、このダンジョンに関わる商売を行ってくれ。

 幼馴染を助けたら、一旦、戻って来る。その時に、足りないものを聞くから、それまで、一人で頑張ってくれ。

 人手が無いなら、雇え。……金もある程度、渡そうか?」

「いや。全部をイチから立ち上げるのも、面白そうだ。

 宝玉については、恐らく、入手が難しいものもあるのだろう?店の看板商品として、活用させてもらう。


 必要なものとして、とりあえず、思いつくものが1つある。

 ……ある攻略者が持参して、ダンジョン内を撮影して、ダンジョン攻略の画像として、他の攻略者や店に売ったりすることの出来るマジックアイテムを多数用意して欲しい。

 正直、そのぐらいのアイテムが無いと、ダンジョン攻略の情報をやり取り出来ない。

 ついでに言えば、有力な攻略画像は高値で取り引きされるだろうから、頑張り次第で、確実に稼ぐ手段として活用が可能となる。

 とりあえず、100個。それが無いと、ちょっとお話にならない」

「……装備者の視点で、見ている風景を録画して、違う者が装備した時に、その画像を見ることが可能となるスキルならあるが、それの宝玉を100個でいいか?」

「……スロットが1つでもある装備品が、沢山あるのなら」

「……その条件だと難しいが、宝玉のスキルを1つだけ使えるようにする手段は、無いわけじゃない」


 僕が、この世界に来た時に、排泄の必要が無いことに気付いた時に、同じぐらい不思議に思っていたことが1つあり、それが、スロット付きの剣を手に入れた時に、ふと思い出して、気付いたことが1つある。


「この世界では、子供の誕生に、性行為が必要ないことは分かっているな?」

「……何よ、イヤラシイ話?」

「いや。

 この世界では、子供は、男女が一人ずつ協力して、『生誕の魔法』を使うことで産まれることは、常識として知っているな?

 なら、このヘソという奴は、何故、存在していると思う?」

「……」


 卑弥呼が、そっと自分のヘソの辺りをさすった。


「まだ試していないが、恐らく、ヘソはダンジョン攻略の際、1つだけ最初から備わった、スロットだ。

 だから、何故か宝玉は序盤から作れるのに、スロット付きのアイテムは非常にレアなアイテムだった。

 宝玉が無ければ、攻略が厳しいであろう場面も多いのに、スロットを安売りしない理由は、それだと思う。

 ……試してみるか?」

「……やけにヘソが大きいと思ったのよねぇ」


 宝玉を嵌めてみると、半分埋もれた形ですっぽり嵌る。スキルも得られているし、これで確定だ。この世界で、ヘソは1つのスロットだ。


「いいわ。じゃあ、その宝玉、とりあえず100個ちょうだい」

「ダンジョン外で……あ、いや。作れるな。

 少し待て」


 謎スキルNo.65、『録画』のスキルの宝玉を100個作り、魔法の鞄に収納する。それを渡すと、卑弥呼は「ありがとう」と言った。


「じゃあ、ここでお別れね。また会いましょう」

「ああ。何か、売り物になるものがあったら、持ってくるよ」

「安く売ってよね」

「ああ、勿論だ」


 ここでルシエルが、「そっちの方が面白そう」と言って、卑弥呼への協力を申し出た。それが受け入れられ、ルシエルともここでお別れ。ルシエルは資金力があるし、卑弥呼にはありがたい存在だろう。

 ただ。一点、気になっていたことがあったので、ルシエルに聞いた。


「塩と砂糖は、売買の権利そのものも売って稼いだのか?」

「あら。バレてた?

 凄い高値で買ってくれるのよねぇ。正直、それが一番、楽に稼げたわ」


 やはりか。

 これでスッキリした。

 あとは……ミリアを助けるだけだな!


「行くぞ、シルヴィーン!」

「はい、師匠!」


 次の日までに、僕らはレベル1000のダンジョンを半分ほど探索し終えたが、油断から、シルヴィーンが致死性のトラップにハマり、入り口まで戻された。シルヴィーンの装備品全てがその場に宝箱として残され、僕は帰還の宝玉を使ってシルヴィーンに装備品を渡しに行ったため、攻略するのならば、最初からやり直しだ。流石に、僕一人での攻略は、リスクばかりが高すぎる。

 仕方ない。

 使いたくはなかったが、ミリアを助けるためには、背に腹は替えられない。

 僕は、温存していた手を、1つ、使うことを決意した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ