4.レベル10
長らく休載していてスミマセン!
少しストックあるので、週一掲載再開して、執筆頑張ろうと思います!
お読み頂ければ幸いです。
念には念を入れて。
作戦は、『いのちをだいじに』だ。挑戦するのは、レベル10。レベル100は「とりあえず出よう」と言って作戦を立てる時に十分安全と言えるだろうレベルに挑戦することにした。
何しろ、僕の亜空間に収納したアイテムすら取り出せないのだ。何かの折に手に入れた鞄に食糧を詰め込み、最低限の装備を整えて突入する必要があった。
ルシエルですら、最も高いステータスである魔力は、6000ちょいしかない。まぁ、ルシファーにステータスを操作されている割には、自力で随分努力したのが分かる数値だ。
「あ、ゴブリン」
「ホント。……20体ぐらいいない?」
「よし、行って来い、卑弥呼」
卑弥呼がジト目で僕を見る。
「アタシに全部片付けさせるつもり?」
「お前が一番、ステータスが低いんだ。支援ぐらいはしてやる。……それとも、帰るか?」
「やりゃいいんでしょ、やりゃ!」
しかし、全ステータスが1000には及ばなく、少し低めの800ぐらいからせいぜい500に少し届かない程度の卑弥呼でも、この10レベル相手では十分に能力は高いと言えるようで、ゴブリン約20体を瞬殺だった。
「死体が消えた!?」
死体の代わりに、そこにはカードが1枚ずつ転がっていた。全部回収する。
「……どうやら、アイテムに魔法的な能力を与えてマジックアイテムとするためのカードらしい。
単体では使えないようだ。回収していこう!」
ちなみに、僕はこのダンジョン内で、マナを本来の役目として使う必要があるだろうと睨んでいた。つまりは……魔法の発動体だ。レッドマナなら火の属性の魔法の発動体に出来るなど、最初からお金の代わりに存在していたわけではない。魔力が有限である以上、そして、ダンジョン外では自由自在にマナを作り出せる以上、マナも有効活用しなければならない。
「マナは回収できないのね」
「宝箱とかだな、マナを得たかったら」
早速、宝箱を発見!……まぁ、それまでに3回ぐらい戦闘を行ったが。
「開けていい?」
「罠はなさそうだが、鍵がかかっているぞ?」
「そのくらい、魔法で……」
「いただきっ♪」
卑弥呼が開錠の魔法を使って宝箱を開けると、そこから、何やら不気味な装置が出てきた。
「……『カード変換機』だと?」
アイテムの名前をチェックする。丁度、カードを差し込めそうなスリットがある装置だ。
「試してみよう」
「えー?カードもそんなに沢山無いでしょ?」
「大丈夫だ。ダンジョン管理者権限があると、1枚でも持っているカードは99枚まで増やせる」
残り少なくなったら増やせば良い。事実上、カードは無限に増やせる。
「……2枚差し込むようだ」
その装置の機能を司るメソッドを確認しながら操作する。ゴブリンのカードを2枚差し込むと、レッドバニーのカードが1枚出てきた。
問題は、だ。
「……隠しパラメータを見つけた。このダンジョン内では、『レベル』の概念があるようだ」
カード変換機のランダムカード変換機能には、使用者のレベルに応じた乱数要素があった。しかも、そのレベルはダンジョン管理者権限で操作できるようだ。勿論、ダンジョン管理者権限でカード変換機に備わったメソッドのコードを読んで判明したことだが。
「9999レベルが最大か……。最大にして、やってみよう」
ゴブリンのカードを2枚差し込むと、今度出てきたカードには、『黒龍』とあった。
「ふぅん……強いのかねぇ……?」
次々にカードを差し込む。スライム、ヴィシュヌ、スライム、スライム、シヴァ……。
「……やけにスライムが多いな」
まぁ、カードではあるのだから、他のカードに変換してしまえば良い。
カードが100種類ほど揃ったところで、全部を99枚まで増やし、カードのステータスを見た。やはり、カードにもレベルがある。
「あとは、スロットのあるアイテムを手に入れれば、試せるな」
そうなのだ。このカードは、スロットのあるアイテムのスロットにスキルをセットするために必要なものであって、発動のためには、スロットのあるアイテムを所持していることという前提条件があるのだ。但し、既に幾つかは調べがついているが、この世界で最も強い666個の謎スキル、要するに、スキルの内容が実際に使わなければ分からないけれど、絶大な効果を持つ、名前が謎スキルNo.1~666というものを付けるためには、このカードが必要なのだ。
ちなみに、謎スキルのほとんどは、ダンジョン外では取得不可能だ。幾つか、それに匹敵する強力スキルは存在していて、1つ、『無敵』というスキルに関しては、謎スキルNo.611であることは調べがついているなど、ダンジョン外でも同じスキルを得られたり、それこそメソッドを組めるのであれば、ほとんどの謎スキルはダンジョン外でも再現可能だが、僕の力では組めないメソッドがあるなど、ダンジョン内でスキル研究の必要性はひしひしと感じている。謎スキルのコードを見れば、おおよその効果は予想がつくし、ほぼ同じメソッドを組むのなら、真似をすればそう難しくないからだ。
問題は、マイナスの効果の伴う謎スキルが存在している可能性が高く、闇雲に謎スキルを身につければ強くなるという問題ではないこととか、色々と課題は見え始めているのだが。
それに、事実上、謎スキルの全てを同時に身につけることは、ほぼ不可能である。同時に身につけられる装備品全てのスロットを合計して、666個以上を確保することが、極めて困難であるからだ。計算していないが、100がいいところで、その数ですら、上限に近いのではないかという疑問を抱いている。
ちなみに、『一撃死』とでも言うべき謎スキルの存在を発見していて、ダメージをわずかにでも受けた場合、即死の効果を受けるマイナス効果のスキルの存在が、僕が慎重にスキル研究を進めようと決意した原因だったりする。
「ダンジョン外に、スロットの存在する装備品は存在しないしなぁ……。そもそも、装備品にその項目の情報が存在しないから、メソッド組んで強引にスロットを作ることも僕の力ではやや厳しいし……」
1つでも、スロット付きの装備品を手に入れて、ソースコードを見れば、再現は可能だが、その場合、ダンジョン内に持ち込むと、人工品であることを認識され、スロット内のスキルは発動しない可能性が高い。原因は、ダンジョン内でのみ存在する、作成者認証とでも言うべきシステムの存在で、それは全てのアイテムに対してダンジョン内では行われ、ダンジョン外のアイテムによるスキルの発動は、原則、行われない。カードの枚数を増やすことに関しては、ダンジョン管理者権限を持っていれば、その認証も同一データで複製されるので、問題ない。恐らくは、ダンジョン管理者権限は、ダンジョン内でのデバッグを行うのに都合の良い権限を与えられていて、カードに関するバグの検証も行いやすくされているものと思われる。レベルについても、カード変換機を利用したカードに関するデバッグをやりやすくするためという意図が、僕には感じられる。何せ、レベルは強さには全く関係が無く、ステータスがやはり強さの絶対的基準であり、レベルを変えてもステータスは変化しないのだ。そして、カード変換機の、僕のような使い方……。僕なら、デバッグもこの方法で検証する。
そして、カードでしか習得出来ない強力無比な謎スキル。ダンジョンは、このカードを活用して乗り越えて下さいという意図が透けて見える。
ただ。
今は、スロット付きの装備品が無いので、先に進まざるを得ない。
「待たせたな。さあ、先に進もうか」
「何を遊んでいたのか知らないけど、急いでいるようには見えないわねぇ」
「急がば回れ、だ。そのうち、今費やした時間が活きてくる」
だが。
僕の考えは、少々甘かったかも知れない。
何故なら、レベル10のダンジョンを100層までクリアし、ボスも倒して帰還できる段階に至っても、スロット付きのアイテムを手に入れることが出来なかったからだ。
僕のダンジョン攻略は、先が長そうだった。




