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僕は将来、魔王になる男だ!!  作者: 風妻 時龍
3章 ダンジョン篇
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1.帰郷

 一回、帰らせてくれ。

 僕は卑弥呼にそう伝えて、ルシファーの国に帰った。……卑弥呼もついて来たが。ノーヴィスには、違約金として30億マナクルほど払ってきた。お安いものだ。幾らでも、マナは作れるのだから。


 だが。


 ルシファーの国は、様変わりしていた。


 戦争でもあったのだろうか、都市も荒廃しかけている。


「……ルシエルに事情を聞くか」


 通信機能を呼び出して会話する。


『ミリアちゃんがルシファーに喧嘩売ったんだけど?』

「……なん……だと!?」

『ついでに、資金提供を求められたから、100億マナクル渡してある。……脅されたのよ?でなければ渡さないし、口止めもされてた。

 分かってる?あなたが放置したから、ミリアちゃん、自暴自棄になってるのよ!?』

「しかし、使い魔を贈ったし、それだけじゃない、ヒマを見ては、お土産贈ってたんだぞ!?」

『……で?

 あなたの傍には、今も女の子がいたりしないの?』

「……」


 や、ヤベェ……何も言い返せねぇ……


「……カルフィナは?」

『ミリアちゃんと一緒。あなたはベルフィナちゃんと一緒?』

「とうに別れた」

『……まるで付き合っていたような言い方ね』

「茶化すのか?」

『……で?別の女の子が一緒にいたりしないの?』

「……」


 しばらく無言を貫くと、ルシエルはため息をついた。


『浮気者』

「……!!」


 何か言い返せよ、僕!!このままじゃ、正義はミリアにあるぞ!?


「……ミリアがどこにいるか分かるか?」

『どっかに城を建てたらしいわ。……以前のミリアちゃんと思わないことね。あなたの渡した指輪で、凄まじい力を手に入れたようだわ』

「は……?」


 それは……マズくないかなぁ?なんて、ふざけていられる事態ではない!!


「バグはどうした!?」

『何が?

 ミリアちゃんは指輪の力を”支配した”って言ってたけど?』

「バグを従えたのか!?」

『知らないわよ、バグなんて。

 それが何かの意味を持つの!?』


 デバッグしたのなら、構わない。

 だが。ミリアがバグに取り込まれてしまったのならば。

 ……デバッグして救えるのならば良いのだが。


「ありがとう。金については、もう要らん!全額、キミに謝礼として差し上げる。

 塩と砂糖の売買その他の扱いについても、任せる。

 僕には、他に目的が出来た。協力するなら、一枚噛ませても構わないが、その前に、ミリアの件を僕は片付けなくちゃならない!

 済んだら、また連絡する。それまでに考えをまとめておいてくれ」

『ちょ……私の用事は、まだ済んで――』


 通信を切る。すぐに呼びかけがあったが、無視だ!


「済まない、急いで片付けなければならない問題が出来た。

 悪いが、ダンジョン経営はその後になる」

「……あなたの女の件?」

「人聞きの悪い表現だが、その通りだ。……つうか、まだ僕の女になったわけでもないし、そんな約束をしていたわけでもない。

 現時点で、ただの幼馴染だ」

「……本人がその言葉を聞いたら、キレるかも知れないとは思わないの?」

「……既にキレられているようだ」

「言っとくけど、アタシも一応、あなたを狙っているんだからね。前世の同郷の士なんて、他にいるとは思えないから。

 アタシは、その子諦めて、アタシにしておきなさいとは言っておくわ」

「……流石に、見捨ててはおけない」

「……バグ、と言っていたわね」

「意味が通じるなら、その通りだと言っておこう」

「あなたのデタラメな力で、その子を城ごとダンジョンに沈めておけないの?

 相手がバグなら、ダンジョンのラスボスとしてうってつけじゃない?」

「……可能であるかどうかも、返答に時間がかかる。

 ただ……出来そうなメソッドに心当たりはある」

「……めそっど?」

「プログラミング用語だ。専門知識が無かったら、知らなくてもおかしくはない」

「あー……この世界って、やっぱりマジでプログラムなの?

 その辺も、今度、詳しく聞かせてよね」

「分かった」


 どうでもいいことだが、ふと、1つ気になった。


「……メソッドは、概念として伝わったか?」

「いいえ。その音そのままよ。……そういえば不思議ね。この世界、どんな言語でも意味として伝わってたのに。

 ……同一世界の言葉だから?」

「ちなみに、『インスタンス』も音しか伝わらないか?」

「……『いんすたんす』って音だけよ?」


 ……使えねぇ!教えれば、簡単なプログラミングをさせられるかと思ったのに!!


「……で?その子の裏切りは許すの?」

「……『裏切り』?」

「そうでしょ?裏切ったんじゃないの?」

「……そうか。裏切ったのか」


 とりあえず。

 行く場所がある。

 僕の別荘はどうなった?


「……転移するぞ」

「アタシも連れてってよね」


 僕の元別荘。

 そこには。


 ……城があった。


「ミィシャ!ミリィ!」

「ミリアちゃんの手下よ、今は。

 ……やっぱり、ここに来たのね」


 ルシエルも、そこにいた。


「……城の場所は知らないと言ってなかったか?」

「久し振りにココに来たのよ。

 ミィシャとミリィが取り込まれて、ここに来る必要なくなったから。


 それにしても、立派な城ねぇ。パパのお城みたい」

「……お前は取り込まれなかったのか?」

「依頼はあったわ。でも、100億マナクルはその交渉材料。断れたわ」

「……ミリアは、裏切ったのか?」

「そう言ってもいいんじゃない?」


 ……そうか。裏切ったのか。


「じゃあ、いいか」


 ダンジョン生成メソッドを展開した。


「ちょ……!いきなり!!」

「わぁお♪」


 城が地下に潜ってゆき、ダンジョンの巨大な入り口が出来た。


「さあ、姫を救うために攻略するぞ!!」


 ……ミリアには、しばらく反省させよう。

 そしたら……謝って来るかも知れない。

 その時、僕はこう言うんだ。

 ――『ただいま』と。

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