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僕は将来、魔王になる男だ!!  作者: 風妻 時龍
2章.放浪篇
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16.孤立

「ちなみに、こないだのドラゴンの雛、どうしたの?」


 食事の折に、ベルフィナが尋ねてきた。


「ミリアに贈った」

「はぁ!?」


 ……そんなに、驚くほどのことだろうか?


「僕が使役しても、さほど意味は無い。必要も無い。

 ミリアが使えば、最高の使い魔になる。

 他に贈りたい相手もいなかったしな……」

「……放置しておいて、餌だけ与えたってワケ?」

「餌とは失礼な。

 僕はミリアに餌付けしているわけじゃない。

 別に、贈り物ぐらいしても構わないだろう」

「気持ちだけ煽っておいて、相手しないなんて、信じられない!

 ……あなたが独り身である理由がよーく分かったわ!

 私も、あなたにはついていけない。

 帰らせていただくわ!」


 ……何だろう。

 勝手に盛り上がって、勝手に人を軽蔑して、勝手に去るのか。

 別に構わないが、冷静に考えて、僕が軽蔑されなければならないことを本当にやっているかどうか、考えてみて欲しいものだ。勝手に、僕を自分の秤で計って、実際はそれに満たない男だったから軽蔑するって……いい迷惑だ。


「……まぁ、いい」


 美食にも、もう十分満足を得た。

 一人になったら、やってみたいこともあった。

 亜空間に、食材のストックも十二分に備えた。

 ……次は、マモンの国だ。


 僕の、計画はこうだ。


 奴隷専用の闘技場に潜り込む。

 その為には、貴族の一人でも引き込んで、僕の主役をやってもらう。

 マモンは、非常に警戒心が強く、滅多に人前に現れないらしい。

 だが、闘技場の大会での優勝者の前には現れるという。

 僕の予想では、奴も、魔王権限の独自管理者能力を持っている。

 それを見て、可能ならば僕もその能力を得る。


 2代目サタンの、魔王もしくは管理者の所在を感知する能力に関しては、情報不足もあり、僕が再現できていない理由は分からないが、2代目であることに、何か原因があるのではと予測しているので、サタンの独自能力については諦めてもいい。

 だが。

 当面の目当てが無いとはいえ、管理者の独自能力全てを使えるのならば、使えるようになっていた方が都合が良い。

 正直、成人に達する年齢になったら、ミリアとでも結婚して、隠居して穏やかに暮らせるのならば、僕はそれで満足だ。ミリアが拒絶した場合は、代案が必要になるが。

 目標も指針も与えられずに、この世界に放置された僕の、最終的な目標は、ただそれだけでしかない。

 ミリア以外には文句は言わせない。国?要らんよ。凡人に『王』の立場は荷が重すぎる。僕など、たまたまこの世界で強力な情報を持っていただけに過ぎない。王でも魔王でも関係ないが、そんなもの、なりたい奴がなればいい。例えばルシエルだ。アイツには、管理者の権限を与えて、何らかの方法で、魔王の権限まで引き上げてやりたい。


 ……いや。

 余計なことはしない方がいいのかも知れない。

 僕は僕のことさえやればいい。

 小さな親切、大きなお世話という言葉もある。


 今は、マモンの国で戦闘奴隷として、闘技場で戦うことさえ考えていれば。


 持ち物は、ほぼ持ち込めないと思おう。

 僕のステータスは、魔力をゼロにした以外は管理者権限で数値操作をしていないが、ステータスを見れるというアドバンテージを活かして、ステータスの上昇条件をチェックしながら鍛えることで、魔力以外の全ステータスは8000を超えている。

 奴隷相手なら、負けはしまい。僕は、メソッドという名の魔法を、魔力の消費無しで使えるし。

 それに……1つだけ、新たな『奥の手』を賢者の石で仕込み、その賢者の石は体内に埋め込んでいる。魔王にだって、負けない自信はある。

 持ち物は全て亜空間にしまっておくとして。


 なら、考えるべきことは少ない。

 そう――


 最後に、何を食べてこの国を去るか。

 それだけ考えておけば、いいのではなかろうか?


 僕は凡人だ。自分を中心にしか世界を見られない。

 だから、人がどうこうということを考える前に、自分のために、何をすべきか、何を考えるべきかを考えなければならない。

 他人のことを考えることなど、王とか特別な才能を持った人に任せるしかない。

 その能力を備わらなかった代わりに、自分のために行うことに対しては、少しだけ優れた能力を授けられたのだから――


 だから。

 僕は、魔王の権利を与えられているというのに、全く以って、魔王失格なのだ。

 僕が魔王を目指さない理由など、ただそれだけだ。


 どこに行っても、人間関係など、僕の立ち位置は変わらない。

 いつでもどこでも、僕は孤立して、一人で何もかもをやらざるを得ないのだ。

 自分一人の世界だけで『王』を名乗っても虚しいだけだ。


 僕のミリアを求める気持ちも、ただ、僕の孤独を癒して欲しい気持ちの現れに過ぎない。

 分かっているから、距離を置いた。


 ミリアが僕を必要としないのなら。

 僕は、この世界でも独りで生きていくしかない、そう思っている。

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