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僕は将来、魔王になる男だ!!  作者: 風妻 時龍
2章.放浪篇
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12.バグ

 全てのユーザーは、管理者権限を持つことが可能だ。

 だから、管理者は、ただその封印を解くだけでその能力を得られる。


 ……ただ、それだけのことのはずだった。


「……何、これ?

 え?……ステータス?……何なの、この数字!

 凄い!世界の全てが分かる!!」


 でも、その次の瞬間だった。


 ……カルフィナの体が輝いたかと思うと、その光が放たれ――


 その光は、一匹の虫になった。


「……何だ、コイツは?」


 ステータスを見る。99999。限界突破状態の上限値。そして、その名は――


「『バグ』だと!?」


 ギィィィィィィィィィィィィィィ!!


 バグが叫んだ。破壊力を伴って衝撃波が広がる。カルフィナとベルフィナを庇った。――僕の防御結界が吹き飛んだ。


「『AEGIS結界』!!」


 叫ぶと同時に、呪いを幾つもバグに放った。――だが、全くの無効。100ほど放って1つも効かなかった時点で、諦めて次の手を打った。


 右近と左近。両方の能力を発動させる。


「2人とも、走って逃げろ!!」


 能力的には、圧倒的な数値のダメージを叩き出すはずの斬撃を放つが、ノーダメージ。……最悪だ。コイツは、この世界の法則を無視している!!


 考えろ……どうすればいい?

 コイツは何が原因で現れた?

 カルフィナを管理者にしたからか?


 そもそも、『バグ』だと?この世界で与えられる名前として、趣味が悪すぎる!ここまで完成した『世界のプログラム』の中で、『バグ』が存在すると言うのか?

 いや!この『世界の法則』は、概念処理プログラミング言語!『バグ』すら、概念化された『何か』である可能性は高い!


 そして、もしも本当に『概念化されたバグ』であるのならば、魔王という『上位管理者権限』を持つ僕に処理できないのならば、それは、『世界の破滅』のきっかけすら意味する。――逆に言えば、管理者権限を使えば、何とかなる可能性は高い!


 管理者権限の能力を検索……。


 ――オートデバッグ!?

 今まで見たことのない能力だが、かなりそれっぽい能力を見つけた。

 無用心かも知れないが、いきなり発動させてみる。


 ギィィィィィィィ!!


 バグが唸り声を上げる。体力がどんどん減ってゆき、それと共に体が縮み……そして、消えた。


 やってしまえばサクッと対処できた相手だったが……凄く嫌な予感がする。


 『管理者』という言葉とそれの意味する立場。

 そして、今回の、凄く『バグへの対処法の練習』感の強い事件……。


「ふぅ……無事か!?」


 振り返るが2人は遠くへ駆け去っており、とりあえず一安心。


 周囲を観察する。特に、異常は無い。衝撃波の痕跡が残っている程度だ。


 それから、先ほどの『オートデバッグ』の能力を確認する。

 ……『マニュアル操作』も出来るようだ。つまり、本当に、僕らに世界を『管理』させるつもりの能力を与えた、ということか?

 『バグ』の発生原因を探り、ソースコードのバグを取り除き、『世界のプログラム』を破綻させることなく運営させるための……そのための能力と、『管理者』という立場か!?


 とりあえず、2人と合流し、無事に済んだことを伝える。そして、カルフィナには、「管理者の能力を使う際には、重々注意すること!」と告げた。一応、オートデバッグの能力も存在することを確認し、バグが発生した場合には使うよう伝えたが……。それで対応し切れないバグの場合、プログラミング言語とプログラミングの知識の無い彼女には、生半可な教え方では対処できるようにはならないし、正直、オブジェクト指向を正しく教えろと言われても、僕には無理だ。『インスタンス』の説明すら難しい。メソッドの重要な構成要素、とだけ伝えても、プログラムを組むレベルでの理解はしないだろう。その単語を口にしただけで、概念が伝わって理解できるなんて都合の良い事態は想定するのは頭が悪いだろう。そして、言葉だけで、『メソッド』って何?という質問に、「例えば魔法の発動する原理をルールに従って記したもの」と伝えて、それでプログラムが組めるのならば、苦労はしない。


 そもそも。

 わずかばかりとはいえ、知識があった僕が、ここまでの技術を得るのに、どれだけの努力と時間を要したか……。

 知識の無い奴に、バグの処理まで出来るレベルを求めるのは、不可能だ。かえって、より多くのバグを生むだけだ。


 まぁ……その辺は諦めるとして、まずはベルゼブブの街を目指して再び歩みを進めた。

 日が暮れる頃には、街の明かりが見え始めており、少し急いで街へと入ると、宿を取って飯を頼んだ。


「この世で一番美味いものを食わせてくれ!!」


 その注文に出てきた料理は、握り寿司だった。

 ちゃんと味の良い醤油も添えられ、僕は食べていて涙を流しそうになった。

 魚のアラでダシを取った味噌汁も絶品だった。


 カルフィナとベルフィナは、「美味しいけど、泣くほど!?」と疑問を投げかけたが、僕にとっては、こんなに本格的な日本食は、転生してから初めてだった。


 僕は、気の済むまでこの街に滞在することを、秘かに決意した。

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