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僕は将来、魔王になる男だ!!  作者: 風妻 時龍
2章.放浪篇
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6.忍

「申し訳ございません!

 決して姿を見せるなと命じられておりまして……」


 口元も、布で隠した怪しい女だ。


「……ベルフェゴールから、か?」

「……」

「黙っても無駄なことは分かっているだろう?

 正直に話す気が無いなら、一切、配慮はしないが?」

「つまり――」

「気配を消してついて来るなら、攻撃も躊躇わない」

「……ベルフェゴール様からの命令でございます」


 ようやく、話す気になったようだ。ここは、情報源にさせていただこう。


「ベルフェゴールの居場所は?」

「……私は分かりませぬが、調べれば、恐らく情報は得られます。

 但し、私は処分を免れ得ませんが」

「……ベルフェゴールの密偵、と思っていいんだな?

 ベルフェゴールを除いて、一番偉い奴に会わせろ。

 どうせ、任務を放棄しても処罰されるのだろう」

「し、しかし……」

「処罰されないように配慮してやると言っているんだ!」


 忍――アヤメと名乗ったクノイチが、チラリとベルフィナの方を見た。


「……分かりました」

「ベルフィナ。お前もついて来い」

「は、はい!」

「……今すぐ?」

「当たり前だ!」


 案内されて、向かった先は、ベルフェゴールの元居城。そこの、隠し部屋に向かった。


「へぇー。この城に、こんな場所があったのですね」

「少々お待ち下さい。今、頭が参ります」


 僕とベルフィナは椅子に座って待っているが、アヤメは床に跪いたような状態だ。どうやら、下っ端らしい。


「何用だ?」


 しばらくして、ハゲたオッサンが現れた。どうやら、コイツが頭か。


「この女が、ベルフィナの護衛についていたことは知っているか?」

「当然だ。ベルフェゴール様が、クノイチを一人、使わせてくれと直に願われた」

「隠れて護衛していたから、炙り出させてもらった。

 とりあえず、用件の1つは、それについて、責任を不問ということにしてもらいたい」

「……気配を悟られたのか、未熟者が!」


 怒鳴られて、アヤメは首を竦める。


「……ちなみに、恐らく3人か、隠れて様子を見ているな?

 不愉快だ。姿を現すか、消えろ。

 さもなくば、消す」

「ほぅ……。あながち、コヤツが未熟というわけでもないわけか。

 全員、引っ込んでいろ。

 ……儂は、ガンゾウという。貴様は?」

「リューイ、だ。

 ベルフェゴールの居所は突き止めているか?」

「……戻られるよう、説得の最中だ。『戻る資格が無い』とおっしゃっておられる」

「……ベルフィナが跡を継いだ場合、従うつもりはあるか?」

「もちろんだ。

 ベルフィナ様が跡継ぎと決めた相手に従えと言われている」

「だ、そうだ」


 そう言うが、ベルフィナは首を横に振る。


「私は、器ではありません」

「……兄弟は?」

「一人っ子です」

「許婚は?」

「いません」

「……好きな男ぐらいはいないのか?」

「えっ?……い、いませんけど……」


 チラッチラッとこっちを窺うな。


「……コイツが器とも思えないしなぁ」

「儂か?そうだな。荷が重い」

「……ベルフェゴールを説得するか」


 全く……

 ため息が出そうになる状況だ。


「説得して下さるか!?」

「案内してもらえるか?」

「勿論でございます!」


 つまりはだ。

 ……コイツも、ベルフェゴールの復帰を待っていたということか。


「……別件で、用事を1つ済ませておきたい。

 しばらくしたらここに来る。それまでに、準備しておけ。

 ベルフィナ。手伝えよ。大した仕事じゃない。


 ベルフェゴールにも、話を通しておいてくれると助かる。

 一応、サタンの脅威は、13年は無いと伝えておくと、話が早いはずだ。

 理由は、僕が示す。


 ……逃がすなよ。

 最悪、この国を、誰か見繕ってくれてやらなければならなくなるからな。


 ……そうだな。『七鍵守護神』の一人が、力を貸してもいいと伝えておけ。

 一度逃げた奴の説得材料には、そのぐらい必要だろう」

「……『七鍵守護神』、だとぉ!?」

「名前ぐらいは知っているだろう?」

「あんな魔神、協力するわけがあるまい!!」

「……実際に見てから言うか?

 ただの小娘だぜ?」

「小娘?

 ……齢数百歳は下るまい。

 老化停止の術も使えるのか……。恐るべし!」

「……お前、ぶん殴られても知らんぞ」


 とりあえずは、水晶玉にメッセージを記録させなければならない。

 実は、既存の魔法でも出来ることなので、そう難しくはない。

 別に、水晶玉で無くても良い。それこそ、水の特殊結晶で球体を作れば良い。


 そうして用意した、『映像・音声記録の水晶玉』を、ベルフィナに持たせて術式を発動させる。


「えー……。

 塩と砂糖の生産の管理を任せている者たちが見ていると思う。

 リューイだ。

 これから言う指示に従って欲しい。


 管理者を、ルシエルという一人の女に任せたい。恐らく、その女の指示で、このメッセージを見ているはずだ。


 用件はもう1つ。塩と砂糖を売買したい。その権利を、この水晶玉を持たせた商人に与えるという話をしている。価格や量などは、ルシエルの判断の下、要相談ということになる。

 僕が、入手したい事情があって、売買をその商人に任せようと思っているから、無碍に却下した場合、僕が帰還し、それなりの処罰があるものと思うこと。


 判断に迷った場合、ルシエルの判断に従うこと。彼女には、僕の指示を既に与えている。


 用件は以上だが、ルシエルと相談の上、決断を下せなかった場合、僕に連絡が入ることになっている。僕への意見がある場合、ルシエルに連絡を取らせろ。ルシエルがそれにすら従わなかった場合には、勝手にしろ。


 いいか。僕は、裏切り者は許さない。

 要求があるのであれば、正当な手段と理由を持って主張しろ。その場合、悪いようにはしない。

 ルシエルには、権限だけを与えたつもりはない。義務も背負わせるつもりだ。


 ルシエル。裏切りにはどんな仕打ちが待っているか、キミが一番良く知っているはずだ。

 信頼して任せたいと言っている。上手くやってくれ。


 以上!」


 記録を止める。多分、十分に僕の意図が伝わるはずだ。あとは、ルシエルの器量次第。


「……半分、脅しですね」

「塩と砂糖の権利が、相当オイシイと思っている奴に、釘を刺したかった。言い過ぎぐらいを意図している。

 まぁ……最終的には、こっちにもその拠点を作るんだがな。

 海はあるか?無いと、少々手間なんだが……」

「一応……ありますけど。私も、プライベートビーチを与えられていますし。

 そんなことをして、あなたにメリットは?」

「別に……必要だと思ったから、そのぐらいはしておこうと思った。

 あとは、いざとなったら、僕が何とかすると思ったら、塩と砂糖の権利を押さえて、馬鹿なことをやろうという奴への抑止力にもなる。

 努力できるのに放棄するような者にはなりたくなくてな。でなければ、自分の能力の限界を狭めることになる。

 能力を伸ばすには、やっぱり、自分に出来る限りの努力をした方が近道なんだよ」

「……そうですか」


 少し、シュンとなった気がするが、まぁいい。努力しなかった過去を後悔するぐらいはしないと、最大限の努力をしようという気持ちにはならないからな。僕も、前世で後悔があるから、ここまでしている。今は……最大限と無理の境界を攻めるぐらいの気持ちでいたいと思っている。そう――普通に、『最大限』と聞いて想像するレベルは、実は、『無理』のレベルだ。その見極めは、僕には出来ていない。たまに、無理してるな、自分、と思う。


「あとは……カルフィナに預けといて、渡させるか。

 貰えるか?預けてくる。

 すぐに向かうから、そう伝えておいてくれ」

「はい、分かりました」


 もしかしたら、この国に、カルフィナは置いていくかも知れない。

 僕は、現時点でも既に、そこまでは想定しておいた。


 ……あのアヤメ、欲しいな。

 ベルフィナとは言わない。流石に、同行者がいないのは不安だ。

 大した要職とも思えない。そこは、交渉しておこうと思った。

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