30.八剣守護者
「ゲルブライトに勝ったぁ!?」
一応、ルシエルに報告したところ、大いに驚かれた。
「……アイツ、剣の腕だけならパパでも敵わない、『八剣守護者』の中でも、切り札よ!?」
「別に……お前でも勝てるようになると思うが」
「無理よ!私、そもそも剣は得意じゃないもの!」
「そもそも、『八剣守護者』ってのは、何だ?」
「……パパが、他の魔王に襲われた時のことを想定して育てた、8人の腹心のこと」
「……いいな、それ」
僕も、そういう腹心が欲しい。
「……忠実でさえあれば、能力は後付で何とでもなるんだがなぁ」
「べべべ別に、わわわ私は、あなただけの忠実な部下になってもかかか構わなくてよ?」
「……噛むなよ。
それとも、言ってて恥ずかしいのか?」
忠実という意味では、ルシエルは実は悪くない。見返りを要求はしてくるが、その分、分かり易くてかえって使いやすい。
「……同じ名前は芸が無いな。
人数は、揃った時に合わせて考えればいい。
……『鍵』にするか」
普段から、MAXステータスなのは、面白くなくて僕の趣味に合わない。
だから、能力を引き出す『鍵』を与えて、鍵を使った時には、『八剣守護者』に負けない能力を発揮できれば。
……悪くない。
早速、試作品を作ってみた。
「ルシエル、やるよ。使ってみてくれ」
「……何ですの、これ?
……『鍵』?」
「僕の作ったマジックアイテムを使ったことがあっただろう。アレと同じ要領で使えばいい。
試しに、発動させてくれ」
「……ありがとう」
鍵の形をしたペンダントだ。チェーンもつけたので、ルシエルは首に下げる。そして、彼女はすぐに発動させた。
「……!!」
ネームプレートが、金色の輝きを放った。……ブラックの上はゴールドか。
「魔力が……戻って来ましたわ!!」
ルシエルが、戻ってきた魔力が余程嬉しかったのか、すぐに術式の展開を始めた。
「あ、馬鹿!フルパワーで放つな!手加減を――」
――閃光。そして、轟音。
特大の雷が落ちた。
「オホホホホ!『雷皇』と呼ばれた私に、魔力さえ戻れば、怖いものはありませんわ!
さあ、リューイ!私に命令を下しなさい!国の一つぐらい、滅ぼしてきて差し上げますわ!」
「……調子に乗るな」
鍵の発動を強制停止させた。ネームプレートが透明に戻る。
「本当に!……国の一つぐらい、壊滅的なダメージを与えられる能力を得られる鍵だから、悪用するなよ?
……つうか、僕の許可がある時にしか使えない、セキュリティーをかけないとお前は危険すぎる」
「えっ!?そ、そんな……」
多分、もう一度発動を試して上手くいかなかったので分かったのだろう。もう、僕がロックを外さないと使えない。一応、危険なほどの能力を得られるアイテムなので、念のために設定しておいて助かった。
「一応、一回だけ、強制的に発動させる方法も用意している。
お前の血を、その鍵に吸わせろ。そしたら、一度だけ強制発動できる。
但し、それを行った場合、僕が手を加えない限り、二度と使えなくなる。
……いざという時の『奥の手』としては十分だろう?」
「……面白そうでしたのに」
面白そうで国を滅ぼすな!
……不意に、ルシエルが手を打った。
「そうですわ!
一度、ゲルブライトに挑ませていただけませんこと?
魔法さえ使えれば、そうそう負けませんわ!」
「……殺しかねないからダメだ」
「……私を殺すわけがないでしょう」
「逆だ!お前が手加減しなかったら、アイツを殺してしまいかねん!」
ステータスを確認できないルシエルには分からなかったのかも知れないが。
……剣一本で、ルシエルはゲルブライトを殺せる。鍵さえ発動させれば。
だが。
「……そうだな。人数が揃ったら、前哨戦を申し込んでもいい。
ミリアにシルヴィーン、セリンヌ、カルフィナ、スティンク、それにローク……ルシエルも加えたら、7人だな。
裏切りそうで怖い面子もいるが、揃えて遊びに行ってくるか」
「是非、行きましょう♪」
他の者には使えないように、しっかりとインスタンスの設定をしないと、怖くて渡せない。セキュリティもかけるが、ルシエルと同等の条件でいいだろう。
「クリアクラスの3人には声をかけてきますわ」
「……残りは、僕が誘って来よう」
一時間後。
僕を含めて8人で、ルシファーの王城に向けて、ピクニックの空の旅を始めた。