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僕は将来、魔王になる男だ!!  作者: 風妻 時龍
1章.学校篇
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17.領主

 目立ちすぎた。

 簡単に言えば、そういう理由だろう。


 街の領主が、僕らの商売に対して、税金を求めてきた。

 普通に話を聞けば、当たり前の話だ。


 しかし、彼の要求してきたのは、「売り上げの50%」だった。……「利益の50%」ではない。


 ことの顛末は、僕の店に役人がやってきたことから始まった。

 そして、それだけの割合の税金を払えと要求してきたのだ。


 割と、無茶苦茶な要求だ。


 僕は、街の領主との、直接の交渉を求めた。

 しかし、彼らの要求は、「即座の支払いか、商品全てを含めた店の差し押さえ」という、割と究極の二択だった。


 話し合いの余地も無し。


 僕は、店そのものを差し押さえていただいた。


 役人は、露店の方にも目をつけていたが、このルシファーの治める国で、娘であるルシエルに対して、無茶を通せるわけもなく、そちらから、街の領主との話し合いの場を設ける機会を作れた。


 ここは、はったりが必要だ。


 まず僕が行ったのは、上等な服の調達だ。

 街で一番良さそうな服屋へ行き、魔王の名を出しても通用しそうな迫力のある服を買い求めた。

 店員に、「お体に合わないようですが……」と言われたが、問題ない。

 持ち帰って、学校の寮で着替え、ルシエルをエスコートして領主の館に向かった。


「……いつもその体でいればいいのに」

「これは戦闘用だ」


 僕は、既存の術式を用い、「悪魔化<デーモンフォーム>」でロークよりも迫力のある体格に変化していた。本来、魔人の戦闘用形態の術式であるが、こんな場面で使うことになろうとは思わなかった。……まぁ、ある意味、戦には赴くが。子供の格好のままで、舐められていては交渉も不利になる。何より、ルシエルを連れて行くと、彼女が保護者のように見えてしまうようではよろしくない。それでは、ルシエルと領主の交渉になりかねない。


 領主は、アデルハイドと名乗った。鬼人のようだ。「このクソ忙しいのに……」などと言っているが、分かっているのだろうか?僕が暴れた時、取り押さえるにはルシファーを呼ばなければならなくなることに。


「手短に頼むよ」

「ならば、今すぐ帰ってもよろしいか?」

「金さえ払えばな!」


 ……喧嘩腰である。売ってるなら、買ってやるが?


「無茶な金額を突きつけられた。その額では、払えない」

「……至極真っ当な税金を要求しているが?」

「売り上げの半分を持っていかれるのでは、赤字になる。

 こちらが払えるのは、せいぜい、『利益の20%』だ」

「は!お話にならんね!」

「……お話にならないのは、どちらの要求だと?

 『売り上げの50%』を持っていかれるのであれば、利益率が50%をかなり上回っていないと、利益を出せない。

 そちらの要求は、『金だけ払って死ね』というのに等しい」

「払えない貧乏人は死ねば良いのだよ!

 それより!

 あの店の商品が、店から持ち出せない。

 調べたところによると、どうやらそういう呪いがかけられていることまでは分かった。

 だが、腕の良い術師に頼んでも呪いが解けない。

 どういうことか、教えてもらおうか!」


 ……イラッとした。

 彼は、発言を間違えたらちょっとした戦争になってしまうことを分かっていないに違いない。

 横にいるルシエルが、少しハラハラしているのが分かった。


「……あの呪いは、魔王ででもなければ解けない。ルシファーでも呼んで頼めば良かろう」

「無礼者!ルシファー様を呼び捨てになどするな!

 ……貴様、自分の立場が分かっているのか?」

「私は、『魔王の資格』を持っているが?」


 椅子の上で足を組んだ。もはや、僕は喧嘩になる覚悟を決めていた。


「は!若造が、そんなはったりが通用すると思うか!

 ならば、あの呪い、全て解いて見せよ」

「……一点につき、ブラックマナ5つの代金を要求する」

「……貴様、喧嘩を売っているのか?」


 部屋に立っていた護衛が、警戒を始める。主の合図次第では、襲ってくるのだろう。


「ああ、ちなみに、そこにいる衛兵には、あれに似た呪いをかけた。無抵抗の赤子でも相手でなければ、殺すことはもちろん、傷つけるのにも苦労するだろう」

「……貴様の体で試してやっても良いのだぞ?」

「やってみろ。

 但し、その時には、こちらも反撃をさせていただく」


 一触即発の空気が満ちた。……最初に耐え切れなくなったのは、ルシエルだった。


「待って!」


 大声で彼女はそう言う。


「……喧嘩するなら、私は出て行くわ。命が惜しいもの。

 それで?リューイはどの程度まで暴れるの?この街を滅ぼすなら、ちょっと遠くまで逃げないと」


 ルシエルの発言で、アデルハイドの顔色が変わった。


「……『リューイ』?

 ……!

 『三分殺のリューイ』か!」

「言っとくけど!

 コイツが暴れたら、私には止められない。

 パパが来るまでに、この街は壊滅するわ」


 ……人を、何だと思っているんだ?そこまで強い力、見せたことないだろ!?人を、無差別破壊兵器みたいに言いやがって……


「ルシエル、確認したい」

「……何かしら?」

「この強欲をこの街の領主に据えたのは、ルシファーか?」


 当初、暴れるつもりではあったのだが、先ほど、もっと良いアイディアを思いついて、それを実行することにした。まぁ……死ぬよりツラい思いはさせようと思うのだが。


「パパは領地経営に興味は無いわ。重臣の誰かの、そのまた部下か何かだと思うわ」

「コイツはこれから無能になるから、そいつに、代わりを寄越すよう、伝えてくれ。

 くれぐれも、有能な奴を寄越すように、な」

「……無能になるから、って……どういうこと?」

「前に、お前にかけただろう、僕に生理的嫌悪感を覚える呪い。あれを、全ての者に覚える呪いを、奴にかけようと思う。領地経営どころではなくなるはずだ。

 ああ、アデルハイドさん。お金の大好きな貴方に、貴方の言い分通りの代金を支払おうと思います。

 ブラックマナにして、14個。これが、売り上げのほぼ半額です。……どうぞ!!」


 顔を青ざめさせながら、それでも、警戒はしつつも嬉しそうにブラックマナを受け取るアデルハイド。……呪いが、発動するはずだ。


「……全く。最初から大人しく払っていれば――ヒィヤァァァァ!!!!」


 アデルハイドが、部屋の隅へと飛びのいた。ルシエルだけは、分かるはずだ。それが、どの程度、半端ない嫌悪感を持たせる呪いなのか。


「アデルハイド様!どうなされました!」

「ち、近付くな!

 ひぃぃぃ!!」


 アデルハイドは、ブラックマナも撒き散らして一目散に逃げ出した。僕はそれを、愉快な気分で見守る。


「ああ、スッキリした!よし、気が済んだぞ!帰ろう!」

「……アレ、どうするの?その呪い、いつになったら解けるの?」

「ん?ああ、一生解けない。

 ルシファーなら、頑張れば解けるだろうが、ルシファーに近寄られるのも今のアイツは嫌がるだろう。もう、人のいない場所まで逃げなければ、生きてなどいけない。

 ……暴れるより、随分マシだろう?」

「そうだけど……流石に、気の毒ね」

「ブラックマナ14個に相当する呪いが、半端なわけがなかろう。

 ……店も差し押さえられたし、僕の損害も半端ではない。

 次の領主が、話の通じるまともな奴であることを祈るのみだ」


 実際、あの店に置いてあった商品は、ポーション以外のほとんどが、僕でなければ中々作れない、一点ものばかりだった。再び作って売れば、稼ぐことは無理ではないが、また目をつけられたら、利益が吹っ飛ぶ。次の領主との交渉に折り合いがつかなければ、しばらく、僕は商売を諦めざるを得ない。


「まぁ、国を作るのでもなければ、十分な金はある。しばらく、大人しくしているさ」


 ミィシャとミリィが稼げなくなるが、当面、狩りをして暮らしてもらえばいい。


 問題は。

 あのまま、ブラックマナは放置して来たから、欲深い奴が一人いるだけで、そのお金は次の領主の手には渡らない。

 だから、まず僕が要求しようとしている、「支払ったブラックマナのとりあえずの返金」という要求に、応える資産が無い可能性がある。

 無茶苦茶を言ってきたのはあちらだ。僕は、当然の要求だと思っている。

 それを返せないようでは、僕は話し合いに応じる義理を感じない。


 ルシファーやルシエルには申し訳ないが。


 これを期に、僕とこの街の領主との間で、小さな戦争が始められる芽をアイツは生やして去ってしまったのだ。

 だから、アイツの受けた罰は、僕はまだ生温いと思っている。

 ツケを払うのは、次の領主だ。

 人選は、相当難しいはず。

 僕は、そう思っていた。

実は、まだストックは10話以上あります。

掲載のペースとタイミングについては、ストック数と相談の上で工夫して行おうと思います。

あと、友人の助言で、人物紹介、そろそろ行います。

実は全然設定を考えずに書いていたのですが……。

ちょっと頑張って、設定を固めておきます。

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