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僕は将来、魔王になる男だ!!  作者: 風妻 時龍
1章.学校篇
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16.露店

 ミリアに、バイトを頼んだ。

 そしたら、「忙しい」と言われて、他の子を紹介された。闘技大会の時に、バイトしてくれた子だ。

 だが、僕は「ならいい」と断る。信用は出来そうな子だが、僕の直属の手下にする気はない。

 それなら、ルシエルの方が良い。


「ルシエル、忙しいかい?」

「……何か用かしら?」


 ついこないだ、ルシエルは僕の店でマジックアイテムを買い、最近は、それを解析しようとしている。まだ、機能の全ては把握していまい。魔力無しでも、マジックアイテムが作れるのだからと、魔王の権利を持つ僕を基準に、今の自分に出来ることを模索しているようだ。

 ……魔法を使われたことは、考えに入っていないのだろうか?

 ちなみに、そのマジックアイテムは、鳳凰をイメージしてデザインした、ペンダントだ。機能は、少なくとも20。数えてはいなかったので、正確には覚えていない。


「店番を頼みたいんだ」

「……あのお店?」

「いや。

 主にポーションを売る。

 売るのは僕ではない。

 僕一人で何もかもをするには無理があるから、人の手を借りたい。

 報酬は出す。

 ……忙しいならいいけど」


 ルシエルは、ため息をついた。


「……仕方ないわね。恩を売っておきましょうか。

 で?どうすればいいの?」


 ……ため息は、アピールのためについたらしい。


「実は、何度かは僕がついて売ってみた。

 明日、また露店を出す。

 それから、7日に一度、露店を出したい。

 主に、お金の管理に不安があるから、任せたい。

 明日の朝、校門の前で待っていて欲しい」

「分かったわ。

 ……あなたの作るポーションなら、パパが欲しがるかも知れないわね」

「僕が作るわけじゃない」

「ならいいわ」


 通常に手に入る、最高品質なのだが……まぁ、別にいいと言うならいい。僕の作る、それ以上の品質のポーションが欲しいというなら、分からんでもないし。流石に、能力が半永久的に上がる効果の限界突破は、与えるものを量産するのはマズイと思ったから控えたし。

 利益よりも、無難さを求めた。作ろうと思えば、誰にでも、偶然になら作れる。


 既に、ポーションの値崩れは始まっている。もっと崩れるだろう。だが、個人の作成程度で、供給過多になるものではない。売るために買っている者も、いるはずだ。値崩れが、他の町まで大きく影響が及んでいることはないだろうからだ。



 翌朝、ルシエルを連れて、2人を迎えに行き、いつも露店を出している一角へ向かう。

 出来るだけ、僕は手を出さずに、ルシエルに説明してやらせながら、とりあえず、午前でポーションは売り切れた。


「ルシエル、今日のところはこれまでで」


 謝礼を払う。グリーンマナを1つ。バイトとしては、割りは良いはずだが、ルシエルにとってははした金だろう。


「ふぅん……お金以外の方が、メリット大きそうね」


 そうなのだ。最終的に、全て任せてしまうので、2人を迎えに行くための、転移魔法を使えるマジックアイテムも渡したから、魔法を使えないルシエルには、メリットが無いはずはないのだ。


「皮は、買い取ってくれる店があるから、持って行こう」


 一応、店頭には置いておいたが、全てが売れることは稀だった。なので、ポーションが売り切れたら、買い取ってくれる店に持っていくことにしている。

 干し肉は、よほど大量に在庫がなければ、多少余っても、消費するものだから、問題ない。

 皮を売った後は、とりあえず食事。2人を送っていくのは、僕が店にいる時は、店に来てもらえばすぐに済むことだから、今日に限らず、ルシエルに頼まなくてもいいのだが、とりあえず、彼女は食事にも一緒についてきた。


「あら。意外としっかり塩味」


 料理は、『ハンバーガー』。ちなみに、僕がアイディアを持ち込んだ料理ではない。挽き肉を固めて焼いてパンに挟むだけだから、誰かしら思いついたか、他の魔王が広めたのだろう。

 学食は、塩味が薄い。町の食堂も、大差ない。だから、この店に、僕は塩を売って、しっかり塩味のする食事を出来るようにしてあった。この店にした理由は、ジャンクフードが懐かしいというのもある。前世の記憶ではあるが、あの事件が起きるまで、30年以上の生きていた記憶だ。それが割りと鮮明に残っているので、多少味は違っても、今世で食べている食事よりは、馴染みがある。ただ……ジャンクフードの割に、高い。


「ルシファーは、自力で塩を生産していたのかな?」

「ええ。料理は正直、城で食べていたもの以上のものは食べたことはないわ。

 特に、塩味と甘味が物足りなくて、学校での食事には不満を覚えていたの」

「甘味かぁ……。

 樹液のシロップぐらいなら、作ったけど……」


 砂糖は、原料となる植物が、中々入手できない。蜂蜜は、養蜂まではやる気がない。その点、樹液のシロップなら、森に行けば、原料となる樹液は、十分手に入る。魔法も、ゼロから何かを作ることに関しては、かなり難しい。出来ないとは言わないが、既存の魔法には存在しないし、自作の魔法で作るには、僕の知識と技術では不十分だ。頑張って、水はゼロから作り出せるようにしたが、既存の魔法で一時的に水を作り出す魔法を加工して、永続的に水が残るようにしただけの簡単なお仕事だった。


「試食させていただけるかしら?」

「……パンケーキでも頼むかい?」

「良いアイディアですわね」


 猫人親子も注文した。大量に作るのは大変なので、彼女らの家にもシロップは備えていない。


「……美味しい」


 中々の好評。味と香りの良い樹液を探して選んで作っているので、僕一人分なら、ただ甘いだけの砂糖は要らない。売るほどの大量生産は、難しい。例のジュースで大量に消費してしまったのは、実は大きな損害だ。得た利益に対して、かかった手間と時間は……あまり割に合わない。お祭りだからと、奮発したのだが、前世でもあまり飲まなかった酒より、よっぽど痛手だ。


「ミィシャ、手伝ってくれるなら、また作って、少し分けても構わないが?」


 だから僕は、こう提案した。彼女は、二つ返事で「是非」と。


「私も……少し分けていただきたいですけれど……」

「……料理をするわけではあるまい。小さな瓶に少しなら、報酬に上乗せする」

「ありがたいですわね」


 僕も、このままミリィが母親のミィシャより稼ぐという状況が続くのは良くないと思っていた。だから、良い機会にはなりそうだ。

 樹液を集めて、魔法で濃縮する。大した作業ではあるまい。

 あとは、僕が味と香りの良さそうな木を選別して教えるだけだ。

 ポーションが僕の予想の底値まで下がれば、むしろシロップの方が高く売れるだろう。

 ……そして、性能の良いポーションを作る材料にもなりうる。品質が良い、という意味ではない。もっと、元の性能の高い、要するに『ハイポーション』みたいなものを作れる。

 それの品質の高いのを売れば、それなりの値段はつくはずだ。


 値崩れに危機感を覚えるだけでは二流だと思う。

 その危機感から、新しいチャンスを作れなければ、潰れる。

 まぁ……自分の利益しか見えない奴は、その値崩れに対して、文句を言うだけだろうが。

 僕には、値崩れは想定の範囲内だった。

 次の戦略として、シロップは良い材料になる。

 そして、ハイポーションも値崩れしたら、また新しい材料を探せばいいだけだ。

 どうせ、人生など一生努力をし続けなければ、希望など見出せないのだから。

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