10.闘技大会 後半
ポテト&コークは忙しく、最終日を迎えた。
今日は、店舗を片付ける。
そして、8人の売り子が闘技大会会場で売りまわり、ロークには、指示を出す役目を与えた。
やはり、あの代金で買える大人に売れるアルコールは量を増やそうと、アルコール150杯、炭酸飲料100杯、ジュース50杯の配分で用意し、8人全員、全て味が違う。アルコールに関しては、半分は甘くないものだ。ジュースと炭酸飲料に関しては、8種類の味で炭酸とそうでないものをそれぞれ用意し、1人の売るジュースと炭酸飲料で味が同じであることはないようにしたが、全24種類の味を用意したわけではない。
ただ、今日は、闘技大会は2試合しかない。
午前に行われる、シルヴィーン対ホワイトドラゴンと。
午後に行われる、僕・リューイ対サフィルス先生だ。
僕は、僕の勝利にブラックマナ1個を賭けた。
オッズは、僕が勝っても1.1倍にしかならない。
何故か。
……僕の勝利にブラックマナ1個を賭けた馬鹿が、もう一人いるからだ。
そして、瞬間的にサフィルス先生の勝ちだと15倍まで膨れ上がったオッズに、賭ける者が続出し、最終的に、4.2倍で落ち着いた。
ミリアは、僕の勝ちにレッドマナ1個を賭けた。
店で働いてくれた8人は、サフィルス先生の勝ちに、それぞれブルーマナを1個賭けた。
……泣いて良い?
……僕、頑張ったよね?店も、武器の用意も。
給金も、けっこう奮発したよ?
何で、僕を応援する気になってくれないの!?
待合室で、僕はけっこー凹んでいた。
ミリアは、かなり機嫌を悪くしていたらしい。
そして。
シルヴィーンは、どうやら今年も勝てなかったらしい。
昼飯は、軽く済ませた。
……さて。
憂さ晴らしの時間です。
係員に呼ばれ、闘技場への登場。
そこからが長かった。
……軽く2時間ほど。
ただ……気になったのが、試合の条件。
『お互い何でもありの、時間制限無し一本勝負』
会場は、大いに盛り上がった。
……ええと。
サフィルス先生も攻撃してくるってことだよね?
まさが、ルシファーが手を貸してくるなんてことは……ない、よね?
最後に、サフィルス先生が準備を整える。
「竜化<ドラゴンフォーム>!!」
サフィルス先生が竜の装甲を纏う。
色は……青。
……青、かぁ。
「はぁ……」
ブルードラゴン。
グリーンの一個上のランクでしかない。
銅鑼が鳴った。
ドラゴンがブレスを吐く。
凄まじい勢いの水のブレスだ。
範囲は多少広いが、避けられないものではない。
避けて、ブレスが収まってから、僕は間合いを詰めた。
……パァンッ!!
ドラゴンの顔面に平手打ち。
弾かれたドラゴンの頭が、ふらつく。
……意識が、一瞬飛んだようだ。
意識もしっかり取り戻せていないようだが、前足が片方、飛んできた。
片手で受け止める。
おおおおおお……。
観客が唸る。
僕は、空いた右手で亜空間から剣を一本取り出し、その前足を切り落とした。
ドラゴンが体勢を崩す。
あああああ……!
観客が上げる悲鳴。
「……まだ、やる気?」
その問いに答えるように、サフィルス先生の竜化が解ける。
「ハァッ……、ハァッ……、ハァッ……、……」
右肩を押さえる先生。右腕は切り落とされてはいないが、痛みは伴っているらしい。
呼吸を整え、呪文を唱える先生。
「ブラックライトニング!!」
轟音と共に、失われる視界。
一瞬、会場が闇に包まれた。
それが収まった時。
その、黒い稲妻が炸裂した先、僕の元には。
黒い玉が、僕の掌の上に浮いていた。
「……返そうか?」
「……参りました」
サフィルス先生は、意識を失って倒れた。
僕は、黒い玉を握り潰す。
そして、右手に持った剣を掲げた。
わあああああああああああああああ!!
短い試合だったが、盛り上がりはしたようだ。
……本当は、もっと長期戦にするつもりだった。
でも、ルシファーが見ている以上、手の内は温存したかった。
……売り上げ、少ないんだろうな。
そう思ったが、その後の式典等でかなり時間がかかり、売り子の報告は、『完全完売!!』だった。
僕の目的は、100%達成したと言っても良い。