雪遊び
皆様お久しぶりです。
負人です。
友人に『はよ書けや!!』と急かされて書き上げたこの一品。
友達への仕返……ゲフンゲフンお礼にネタを当社比40%増でお送りします。
そんなわけで、第弐話どうぞ。
「なぁ、妖夢」
「なんですか、地鉄さん」
白玉楼の居間でくつろぐ妖夢と地鉄、お茶を飲んだり将棋を打ったり(地鉄:3戦3敗)何もすることのなくなった昼下がりを満喫していた時の事であった。
『ボウフラの生態』について話していた時、ふと地鉄が首を上げてキョロキョロ辺りを見渡した後、妖夢に問いかけた。
「いや……ねぇ?」
「ねぇ?と言われましても……何か見えたんですか?」
「妖夢の純白の下gぐぁ!」ドスッ
「殴りますよ?」
「殴った後に言うセリフじゃあ無いと思うんですが……」
左の脇腹に鋭いボディーブローが突き刺さり、脇腹を押さえて悶絶する地鉄。
「あのさぁ、俺の勘違いかもしれないんだがな…………」
「何ですか?」
「時間が吹っ飛んでいるような気がするんだが……」
「は?」
よっこらせと胡坐を組み直し、腕を組みう~んといった感じで何かを考えるが……何も思いつかなかったようで、
「ま、いっか」
「はぁ……」
思考を放棄した。
一方そのころ幽々子はというと……
「ふっふっふっふっふ……」
1人台所で仁王立ち+(自称)黒い笑みを浮かべて、炊き上がったばかりであろうほかほか(寧ろアツアツ)の白ごはんを見下ろしていた。
「私だってちゃんと一人でご飯を作れるんだって所をあの子たちに見せつけてやるわ!!」
思い返すは台所へ立つことをダメと言われた昔の記憶
『幽々子様!?何やってるんですか!?』
『あら~妖夢じゃないあ、ダメよ?風邪ひいてるんだからお布団から抜け出してきちゃダメですよ?』
『あ、すいません……じゃなくて!何やってるんですか!?幽々子様!?』
『なにって……妖夢に食べさせてあげようと思って……療養食作り?』
『!!!!!?だだだ大丈夫ですから!!じ、自分の分は自分で作れますので!ゆ、幽々子様はお気になさらず!』
『え、あ、そう』
『何やってんの?幽々子』
『ふむぅ?……あ、地鉄じゃないの~どしたの?』
『いやいや質問文に質問文で返すとテストでは0点なの知ってた?』
『なによー!それぐらい知ってるわよー!!』
『お、おう……で何してんのさ?や見りゃわかるが……』
『ご飯作ってるの!!』
『キレ芸ハマってんのか?……んぁ、そのな幽々子』
『何よ!!』
『後俺がするから食器の配膳とかしてる妖夢の手伝いしてきてくれんかい?』
『わかったよ!!……あれ?』
「何で私を台所へ立たせたくないのかは結局解らずじまいだけど……」
幽々子の目にはダイヤモンドのように硬い決意が現れていた。
人、それを【黄金の意思】と言う(※注・嘘です)
「私の手料理で二人をギャフンと言わせてやるわ!!」
今、幽々子の脳内では彼女に対して土下座で許しを乞うている地鉄と何故か鎖につながった首輪をつけている妖夢と白玉楼の主としての威厳に満ち溢れた幽々子の姿があった。
意識を目の前のご飯に戻し、宣言した。
「こいよ白ご飯!漬物なんて捨ててかかってこい!!」
宣言するや否やギュオッ!!という擬音が付きそうな感じで白ご飯に手を伸ばす幽々子。
しかし思い出してほしい、この白ご飯が今現在『炊き立て』の状態であることを、幽々子がそれを『素手』で掴もうとしたことを……
つまり……
「!!!!!!!!!!!!」
こうなる。
「あっつううううううううぅぅぅううううう!!!!!!!!」
「あー……」
「幽々子様……」
ところ変わって白玉楼・居間、地鉄と妖夢は突如聞こえた幽々子の叫び声を聞き急いで現場へ向かったところ両手にご飯粒をつけ悶絶している幽々子を発見した。
最初は何事か!?と驚いていたが、地鉄が手についたご飯粒と炊き上がったばかりであろう白ご飯のおひつを見て理解し、妖夢にも伝えたところとても疲れた様子で肩をがっくり落とし急ぎ足で居間へと向かい応急手当の用意を持ってきて幽々子の手当てを始める。
「落ち着いたところで……幽々子さんや」
「はい……」
「なんであのようなことをしたのですか?」
「えっと……その……」
居間にあるちゃぶ台を挟んで幽々子と地鉄が向かい合って話をしていた。
妖夢?お花を摘みに行ってるといいましょうかね。
幽々子はいたずらがばれて親に叱られている子供の様に、目を泳がせてなんて言おうか考えていた。
「あ、あの、ね?地鉄これには深~いわけがあってね?」
「ダウト、いいからわけ話して」
「ショボ~ン……」
「口で擬音語を表現すんなし」
「てへぺろ?」
「幽々子……俺は今からお前に拳骨を落とす……右で殴ると思うか?左で殴ると思うか、あててみな…………」
「え、えっとぉ……み、右?」
「NO!NO!NO!NO!NO!NO!」
「あれ?じゃ、じゃあ左……かしら?」
「NO!NO!NO!NO!NO!NO!」
「……?」
もうお説教とかそんなん関係なくなってきたが幽々子は少し考えて次の言葉を紡ぎだす。
「あ解ったわ!もしかして……オラオラ?」
「YES!YES!YES!YE……」
刹那、地鉄の背後に現れた「それ」は黒い残像を残し消え去り、瞬間幽々子の後ろに現れ、またもや黒い影をのこし消え去る。
異変はすぐ起きた。
スパパパパーーン!!
スパーン!!
地鉄と幽々子を謎の衝撃が襲いかかった!
地鉄は頭上・右頬・左頬・顔面の順に計4発くらい、幽々子は脳天に一撃喰らった。
こんな人外じみた攻撃できるのはこの白玉楼では『彼女』しかいない。
「それ以上は禁則事項、つぎ言ったら……私の剣をしゃぶらせる」
「その……は、つげんも……かな、り……やばいと……おもうん、ですが……ガクッ」
「痛い……」
最近白玉楼での立ち位置がツッコミ役にジョブチェンジしかけている魂魄妖夢が己の持てる最高のスピードと(今現在)最大の剣技を持って全力でその手に持ったハリセンを振り抜いただけなのに……
「またつまらぬものをひっぱたいてしまった……」
ここまで格好良く見えるのはなぜであろうか?
事情聴取はいつの間にか『事情聴取(笑)』に変貌しており、結局うやむやになってしまい今は花を摘んだ帰りの妖夢が渡り廊下からみた景色『外に雪がいい具合で降り積もっていましたよ』の一言で屋外で遊ぶことになった。
「なにしましょか?お二方何か意見ある?」
「ここはベタに雪玉当てとか雪だるまを作るとかどうでしょうか?」
「雪玉に石仕込んだり、雪だるまをスノーマンにするとかはありの方向っすか妖夢さん」
「なしの方向でお願いします地鉄さん」
「りょかいっす」
二人がはらはらと肩や頭に舞い落ちてくる雪を払いのけながら何して遊ぼうか?と悩んでいた。
選択肢が多ければ多いほど人は悩むものだと地鉄はくしゃみをしながらふと思った。
「ところで、幽々子は?」
「幽々子さまでしたら」
妖夢が左を向いたのを見て、地鉄もそれに倣い左を向く、と
「雪をいっぱい集めてなにやってん?幽々子はさ」
「『私専用のかまくらを作るからさわっちゃだめだよ!』と言ってこちらの返事も待たずに走っていき、雪をせっせと現在進行形でかき集めている真っ最中です」
「なるへそ、理解したわ」
そのとき、ボフンッと音を立てて幽々子が雪の上に倒れた。
が、ガバッと立ち上がりブルブルブルと体に付いた雪を振り払い持ってきた大きなスコップでまた雪を集め始めた。
「ま、あの分なら心配せんでもええやろ、さてと雪だるまでも作りますか」
「ふふっそうですね、では私は雪球の回転の練習でもしましょうか」
「おいこらwwwお前の発言が今まで一番ネタくせぇわwwwそんなの言われたら俺も黄金長方形を探したくなるじゃねぇかwww」
はっはっはと楽しげに笑いながら盛大に雪の上にこけたが、何を思ったのかズリズリと這いずるようにして離れていった。
その様子をみて妖夢は苦笑いされど楽しげに微笑んだ。
~数時間後~
「少しお腹がすいてきましたね……」
妖夢は空腹感を感じ、二人も呼んで少し遅めの昼にしようか考えていたところ……
「妖夢~!地鉄~!こっちに来て~!!」
「幽々子様?何でしょうか一体……」
タッタッタと駆け足で声のしたところまで駆け寄るとそこには
「どうどう?頑張ってみました~♪」
「どうすれば一体このようなものが……」
「雪を集めて固めて穴を掘って、以下略してこうなったのよ」
「最後がすんごい雑ですね……」
「でもすごいでしょ?」
「ええ、お見事です幽々子様」
妖夢が幽々子の作ったかまくらを見ていると後ろから
「呼ばれて飛び出てジャジャジャわぁお」
「あ、地鉄どうこれ?すごいでしょ!」
「すごく……立派で大きいです……」
「おい」
「そうでしょ~私の力作よ~♪」
「ネタ抜きにして素直にスゲェって思うわこりゃ……」
「ふふ~ん」
地鉄にも褒められてより一層得意げになった幽々子は二人をかまくらの中へ招き入れた。
中は外の見た目よりも広く大きく快適で居心地が良かった。
「ところで幽々子様」
「なぁに妖夢?」
「少々遅めですがお昼を食べようと思うのですがいかがなさいますか?」
「少々どころかかーなーり遅い!けどね~かっかっか」
「そうねぇ……うん、お昼にしましょうか!」
「解りました、では用意をしてきますので居間にてお待ちください」
妖夢が立ち上がって台所へ向かおうとしたとき地鉄が声をかけた。
「妖夢さんや妖夢さんや」
「なんですか?」
「飯作る前に風呂入って汗流そうぜ、じゃねぇと風邪ひくわこりゃ」
「それもそうですねでは先にお風呂に入りましょうか」
「ちょうどよかったは私も汗でびっしょりなの、妖夢一緒に入りましょ」
「解りました幽々子様」
「あれ俺は?」
「「混浴はダメよ/です」」
「あかんかやっぱ」
入浴シーンがあるといつから錯覚していた?
~入浴後~
「さてとお風呂に入ってさっぱりした所でお昼ご飯を作りましょうか」
「ええ、何作りましょうか?」
「そんな凝ったものじゃなくてシンプルなものがいいよなぁ……」
「シンプルですか……」
あれこれ言い合って悩んでいる二人を少し離れた位置から幽々子が見ていた。
思っていることはただ一つ
『やっぱり料理をさせてもらえない』
私だってしたいのに……
確かに幽々子は基本マイペースでのんびり屋だがこれでも白玉楼の主なのだ、与えられた仕事はてきぱきと出来る自信がある。
だけど……と幽々子は考える
(うじうじ悩んでいたら私らしくないわ、もう当たって砕け散るだけよ!!)
「ねぇ二人とも」
「?」
「何でしょう幽々子様」
「私もお料理したいなぁーなんて……」
いつもどうり拒否されるんだろうなぁと考えつつダメ元で言ってみた。
結果は……
「何言ってんの幽々子あんたも料理参加させるからな」
「へ?」
「なんだその驚いた顔……【働かざる者餓死しろや】だろ」
「【働かざる者食うべからず】ですよ」
「わざとだよ」
「ですよね」
「え、えっとほんとにやっていいの?」
「そやから、はよ手ぇ洗ってきぃや」
「あ、えっと、うん!!」
流し台に立ち、幽々子はポツリと
「やった」
とこっそり呟いた。
「それではお二方今回のお昼ご飯は『おにぎり』に決定しました!」
「具とかどうするんですか?」
「基本なしの方向で、有り合わせに俺が何か作るからさ具を突っ込みたいんならお好きなようにご自由に」
「有り合わせって何を作るのかしら?」
「たくあんを切ったり、漬物を切ったり、大根を軽く焼いたり、昨日の残りのじゃがたまもあるからそれも合わせて」
じゃがたまとは一口サイズにカットしたジャガイモと細かく切った玉ねぎを炒め、醤油で味付けしたもの、かなり美味しい。
「じゃ、レッツクッキング」
「妖夢妖夢~見てみて~」
「なんですかぁ~……って幽々子様それ食べきれるんですか?」
「大丈夫よ何とかなるわ………………たぶんかな?」
「じゃなんでそんな大きなおにぎり作ったんですか!?」
「キャラ的に?」
「アウトですよ!限りなくセーフから遠いアウトですね!これは!!」
「えへへ~」
「なぁんで照れてんですか!?あぁ、もういいや!」
(調理に集中できねぇ……ははっ)
~上手にできましたby幽々子~
「では、手を合わせて……」
「いただきます」
「いただきます」
「いただきま~す」
はらはらと雪の降る庭先を縁側に座りながら、おにぎり(以下略)をほっこりした顔で頬張る幽々子、妖夢、地鉄の三人。
それぞれが作った個性豊かなおにぎり達。
小さな角の丸い三角形のおにぎりは妖夢が「愛情をこめて作ってみました」そうで、塩味が程よく効いていて何個でもいけそうだ。
「地鉄さん……独白しているつもりでしょうが、心の声がダダ漏れです」
…………妖夢はツンデレを会得したようだ。てーれってー
「何真顔で言ってんですか、あとこっち向いてドヤ顔しないでください」
すいません。
幽々子の作ったおにぎりは幽々子らしく大きな丸型のおにぎりで、のりがペタペタとはっつけられている。
のりが今回の分でなくなってしまった。
もうすぐ大晦日だし、のりやらなんやらを買い込みにいかねばなるまい。うん。
「あ、お買いものに行くの?私も行くからその時は言ってね?」
了解です、マイロード。
……あってるか?この使い方。
俺の作ったおにぎり?手のひらサイズの俵型おにぎりだが?
「ごちそうさまでした~」
一番早く食べ終わった幽々子はお茶をずずずっと啜りながら雪の降る庭を見ていた。
正確に言うならば庭の先にある玄関に植わっている【枯れた何かの木】をじっと見ており、その視線はちらちらと地鉄や、妖夢に向かっており何か考えているような……そんな雰囲気であった。
「ねぇ、妖夢、地鉄」
目線は枯れ木に向かってはいるものの声のトーンがあきらかに違った。
いつものほわほわした声ではなく真剣で、何かを決意したようなそんな声質。
「何?幽々子」
「なんでしょうか、幽々子様」
幽々子の雰囲気を察知したのか、二人の顔から先ほどまであった子供のような笑顔が消え凛とした真剣な表情になる。
地鉄はどこかヘラヘラした表情だがやはりその顔からふざけた様子はあんまり感じられない。
無音と静寂が混ざり合った雰囲気の中、幽々子が一言つぶやいた。
「【異変】を……起こすわよ」
あとがきにぬるっと参上、負人でごわす。
ネタに関してはやりたかったからやった、後悔はしていない(ついでに反省も)
まぁ、わかる人は反応するんじゃないかなぁーとにやけながら書いたんでね。
言い訳くさいね、スンマセン。
次回、異変潮流でお会いしましょう。
では。