晩御飯
初めましての人は初めまして、知っている人はこんにちはもしくはこんばんは負人です
この小説では作者自身が大切だなぁ~と思っている『何でもないけど楽しい毎日』をコンセプトに書いています。
なのでぐだぐだになったり、何がしたいの?な展開になるかもですがご了承ください。
そんなこんなで第壱話どうぞ。
【幻想郷】
そこは現代の世界から、忘れ去られし妖怪が人と住まう地……
その一角、亡霊達の住まう【冥界】そこの管理者である、【西行寺幽々子】
今まさに彼女は、己が尊厳と矜持を賭けた、大いなる聖戦を始めるのだった!!
「だからぁ~お鍋に合う調味料は醤油が一番なんだってば~!なんで解らないかなぁ!?」
「残念ですが幽々子様、今回ばっかりは反抗させてもらいます。鍋に合うのはゴマダレです」
「お前らなぁ~もう言い争うのは止めようぜ?もうここは俺が全面的に押しているポン酢で良いじゃないか?な?」
今まさに彼女は、己が尊厳と矜持を賭けた、大いなる(六畳の居間の卓袱台の上で)聖戦を始めるのだった!!……これでいいのか、幽冥楼閣の亡霊姫。
「おい、何を勝手にそんな物をこの場に出して、もうこれでいいんじゃね?みたいな空気を出しているんですか、切り刻んで欲しいのか?」
チャキっと右手で傍らに置いてあった刀を掴み、見たものを怯えさせるであろう殺気のこもった目でポン酢を取り出してきた人物に向かって脅しをかける少女……名を【魂魄妖夢】と言い、見た目は銀髪おかっぱの髪に黒いリボンを付け、傍らに【半霊】と呼ばれる自身の半身とも呼べる物を置き二振りの刀(白楼剣と楼観剣)を持つ、ここ【白玉楼】の庭師兼幽々子の護衛兼剣術指南役なのだが、今は主人であろうと、護衛役でも何でもない立派な敵なのだ。
しかしどれだけの殺気が込められた視線であろうと、左手に持った『ゴマダレ』のせいで何かもう色々台無しになっている。
「はっはぁ!!笑わせんなよ妖夢さんよ~!!そんな甘っちょろいだけのゴマダレなんぞがポン酢に勝てるかっての!!」
本来ならばここ白玉楼には妖夢と幽々子の二人だけしかいないのだが(あとたくさんの霊魂達)若干悪そうなニヤニヤ笑いを浮かべた黒髪黒目のどこにでもいるこの少年は【天木地鉄】と言い、本当は冥界にいるはずのない生きた普通の人間である。
なぜこんな所にいるのかは追々説明するとして。
「あらあら、こんなにも揉めてちゃ収拾がつかないわぁ……よしここは何にでも合うこの万能調味料『醤油』にしましょ!!」
幽々子はこれで決まりね!!と言った様なすっきりした表情でパンッと手を打ち醤油を卓袱台の真ん中へとスススッと進めてくる。
が、しかし突如現れた『ポン酢』と『ゴマダレ(ようむ)』によりその歩みは止まった。
「ゆ~ゆ~こぉ~……貴様何勝手に醤油を出して終わらせようとしてんだぁ?おぉ?」
「幽々子様、今回に限っては使えるべき主とはいえ見過ごすことができませんよ?」
「どきなさい……二人とも……これは是が非でも我を通さなければいけないの!!」
己が思う調味料を手に三人は卓袱台の上で火花を散らしあっていた。
辺りをふよふよ漂っていた人魂達はこう思った
(バカだろこいつら……)と。
その後もくだらなさすぎる聖戦は三人同時による腹の虫の鳴き声により一時中断。
三人はそれぞれの仕事に戻った。
地鉄は白玉楼での立ち位置は料理番となっていて、今日の献立である『お鍋』の調理をしていたのだが……
「地鉄~ご飯まだ~?」
「お前は子供か、少しは我慢というものを憶えろや、幽々子」
「我慢しててもお腹は膨れないよ?それよりまだ~?」
「幽々子が背中に抱き着いているのが原因かと思うんですが?……あと、当たってる当たってる胸が当たってるから、色々まずいから俺の理性が弾けそうなんだよ!!だからヤメテ!!」
「当たってるんじゃないよ?」
「じゃ何さ?」
「当ててるんだよ!!」
「……幽々子……飯抜きになった後で拳骨を喰らうか、拳骨を喰らった後で飯抜きになるか……どっちがいい」
「ごめんなさい!ご飯抜きは嫌です!!あとついでに拳骨も嫌です!!」
幽々子はご飯が待ちきれないのか地鉄を急かすため(?)に抱き着いたが逆に怒られてしまいあわや飯抜きの事態になりかけ、少々ショボンとしている。
地鉄は後ろから漂ってくる薄暗い負の感情に「ハァ~」と内心溜息をつき幽々子に振り返り、床に座り込みショボンとしている彼女に「……味見、してみるか?」と言ってみた。
途端、俯いていた幽々子が目をキラキラ輝かせながら「い、いいの?」と聞き返してきたので地鉄が「ただし、一口だけだぞ~」と鍋からつみれを一つ取り出し、そばに置いていた小皿にとりわけお箸と一緒に手渡した。
「ありがとう!!」と笑顔で礼を言い、いただきま~すと少々大き目なつみれを一口で頬張ったが……
「あふっ!!」
「そらそうなるわな……あっつあつの肉団子を口ん中に放り込んだら……落ち着いて食え」
「はふはふはふはふ……んっく……も一個!!」
口に放り込みしばらくの間口の中を襲う猛烈な熱さにピョンピョンとその場で飛び跳ねながら涙を流していたが、口の中が熱さに慣れたようなのでもごもごと食べ始め、ゴクンと飲み込み笑顔でもう一個と頼んできた。
「一口だけつったろ~あとは晩御飯のお楽しみに~」
「はぁ~い……」
「あのぅ……」
幽々子が若干残念そうに居間へと戻ると、お茶や食器等を用意していた妖夢がひょっこりとやってきた。
「どしたの?妖夢」
「えっとですね……私も一口味見してもいいでしょうか?」
「別にいいよ~ほれ」
「ありがとうございます……では、いただきます」
妖夢も味見をしたいと言って来たので肉団子を皿に乗せ、箸と一緒に渡した。
しばらくもごもごと口を動かしゴクリと飲み込み。
「すごく……おいしいです」
「なんとなく危ないからね?その発言とその顔」
妖夢の顔はうっとりとした恍惚顔で、そばを漂う彼女の半身である『半霊』はふわ~りふわ~りと上下を行ったり来たりしておりどれだけ美味しいかを体(魂?)で伝えてくる。
「いいじゃないですか、どんな形であれ、おいしいものをおいしいと言うのは」
「それについては同意しよう、しかしな妖夢……」
「なんでしょう?」
地鉄は妖夢の下半身(特に足)を見ながら言った。
「足がガックガクだぞおまえ」
俺の(作った)つみれを食べて軽く「イッた」のか?こいつ、と呆れた表情で指摘すると、刀を地面に立てそれにもたれかかっていた妖夢はただ一言
「大丈夫だ、問題ない」
と、言った。
足はガクガクであったが。
「はいはい、お鍋が着陸しますから降下ポイントを速やかに開けてくださ~い」
「OK!まかせて!!」ガシャーン!!
「あああ!幽々子様!?何するんですか!?」
「机から将棋の駒を落とすだけの簡単なお仕事(しれっ」
「山崩しで負けかけていたからって、何やってんですか!?」
「「これがホントの山崩し(笑)」」
「ウマい事言ったつもりですか!?はぁ~もぅ~」
妖夢は自身のスカートの上や周囲に散らばった将棋の駒を集めながらブツブツとしかしはっきりと聞こえる声で「食事の後覚えといてくださいよ……絶対仕返ししますから……」など呟きながら集めていた。
机の上になおも残っていたり、その周囲に散らばった駒は幽々子が集めた。
その間地鉄は鍋を持ったままだった。
「いただきま~す」
「いただきます」
「いただきまっす」
上から幽々子、妖夢、地鉄の順に手を合わせ箸をとりグツグツと煮込まれた鍋の具材を取り出し始めた。
晩御飯は静かに食べる人や、家族そろって食べる人、また家族全員バラバラな時間帯に食べる人……それはその人のライフスタイルで変化する。
ここ白玉楼ではみんな揃って食べながらワイワイとおしゃべりする賑やかな食卓だ。
「幽々子さんや、さっき何してたん?」
「フム?…………ゴックン、えっとねご飯ができるまで暇だったから1人将棋遊びしてたのよ~……はむ」
「で、私も強制参加させられたわけですよ……あ、すいません幽々子様そこのゴマダレ取ってください」
「ほいキャッチ」
「ありがとうございます」
「今のやり取り、言葉だけ聞くと幽々子がゴマダレ投げたような気がするよな……アグ、モグモグ……」
「ゴクン……言葉って不思議よね~」
「ですね~……ハグ」
な~んの意味もないグダグダなそれこそ、普段友達とかわすような下らない会話。
それが案外大切な思い出になったりする。
ちなみに、口に物を入れて喋っちゃいけません、行儀が悪いです。by白玉楼メンバー一同
「最後の締めはやっぱり……」
「汁を一気飲み♪」
「うどんですよね!」
「雑炊だよな!」
「「「………………あれ?」」」
あとがきに俺!参上!負人です。
地鉄がどうやって幻想入りしたのかとかは後々明らかになっていきます。
完全に作者の気分なんですが……
まぁ取り敢えず第一目標に【春雪異変】を目指して(盛大な寄り道をしながら)歩いていきましょうか。
では、また次回。