同窓会
この小説は作者の実話を元に少々加筆されたシロモノです。
そういったものに不快感を感じる方、また、名前は変えていますが、
実際の人物を知っている方はお戻りください。
それでも大丈夫という方、私の書いた拙い小説を最後まで暖かく見てもらえれば幸いです。
家に帰るといつもの風景。
出来ている食事を食べ自室へ、
無造作に置かれた服、山済みの漫画、
棚に並べられた同人誌、ゲームのパッケージ、
パソコン画面には少年と選択肢が見える。
そう、これが私にとってもっとも満ち足りた空間のハズだった。
あの時までは確かにそうだったのだ。
「同窓会?」
「そっ、メールきてるでしょ?」
「まぁ、一応」
私は友人の大川千秋言葉にあいまいに答えた。
そのメールが来たのは7月の半ばだった。
小学校の同窓会自体珍しいが、私のクラスだった6-1は頻繁にクラス会を行うことが多く、
今回の同窓会も規模が少し大きくなったんだなとさして驚くこともなかった。
私自身は出席する予定だったが、人に会うことが苦手な千秋がこの話題を自ら持ってくるとは思わなかったので少々困惑気味だ。
「あんたあの学校のやつらに会いたくないから欠席するかと思ってた。行くの?」
「別にあんなやつら会いたくないけど、なっちゃん来るって言うからさ。」
「なっちゃん?夏子のこと?」
夏子とは私たち二人共通の友人であった薄井夏子のことで、中2のとき千葉に引っ越してしまった。
「来るんだ?久しぶりだね。前に会ったのが高3だったから…」
「5年ぶりか?」
「おお、そうだっけな。そっか、なっちゃん来るのか…」
「そうだよ。で、唯は来るの?」
「もちろん」
「どうせだから、少し前に別の場所で会ってそれから行かない?」
「おっ、良いよ」
その夜は昔の話になり大いに盛り上がった。
「じゃ、行ってくるから」
「もう行くの?」
玄関先で言った言葉を返してきたのは母親である春子、こういったら自慢かもしれないが普通の家の母親より綺麗だと思う。つくづく自分が父親似であることが悔やまれる。
「うん、友達に先に会うんだ」
「あっそ、…唯」
「ん?」
「いい人見つけてくんだよ」
「はぁ?」
母親の言葉に思わず変な声を漏らしてしまう。普通の反応だと思う。
「だってあんたの職業じゃ、滅多なことじゃ出会いなんかないんだからさこういうときこそ大事なんだよ?」
だからって、同窓会で見つけることはないんじゃなかろうか…
「だいたい、あんな中にいないって良い人なんてさ」
「あら、前回のクラス会で居た藤村君は?あそこのお母さんは良い人よ?」
「また藤村のこと言ってんの?」
私はうんざりした顔で母の顔を見る。
「藤村はなんでもないんだってば」
この2年間ほとんど連絡とってないし、
「とにかく!時間になっちゃうから行くから!」
母に背を向けドアを開ける。
「今しかないのよ?…オタクのあんたじゃ」
母がなんか言っているが無視をしてドアを閉めた。
「分かってる…分かってるよ。そんなこと」
私は世間一般的に言うオタクだの腐女子に入る。仕事がない日には恋シュミやったり、
同人誌読んだり、声優さんの声聞いてまったりしていたり、外へ出かけてもカラオケでアニソンを歌う始末だ。若い女の子がやることじゃない。母親が心配をするのも無理ないが、
「やめらんないのよね」
それで自分を保ってるといっても過言ではない。自分の満たされないところを満たしている。
事実であり満たされている。筈だった。
でも気づいている、それだけではもう限界に来ているということも、どんなにゲームをクリアしても、
好きな漫画を読んでいても、気の合った友達に会っても、
『違う』
でもそれが何なのか今は気がつきたくない。