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不審なメッセージ

だって仕方ないだろ、この何もわからない状況でどうしろっていうんだよ。


いっそのこと寝たら治ってるんじゃないかとも考えるが、昨夜はがっつり寝たから眠気は全くない上にこんな特殊な状況下で眠くもないのに寝れるほど豪胆な性格もしていない。


ちなみにユアスクとは、世界最大規模の動画共有プラットフォームYourScreenのことだ。俺は疲れて他に特に何もする気が起きない時はユアスクで動画をよく見ていた。今は疲労とは違うが何もする気が起きないので状況は一緒である。


家にいるのでスマホの小さい画面で見る必要は全くないため、俺は机の上のPCの電源を入れる。そして立ち上がるのを待ってからブラウザを開こうとした時だった。


ポン、と軽い音がPCのスピーカーから鳴った。


俺はまだアプリを何も立ち上げていない。何の音だろうと少し考えてああディプコの通知音かと気づく。


DeepConnect、通常ディプコと呼ばれ広く使われているチャットアプリだ。専門学校時代にオンラインの友人達と使っていたためインストールしていたが、社会人となってその友人達とも疎遠になったのでもうずっと使っていない。だから今更俺にメッセージを送ってくる奴なんていないハズなんだが……そんな事を思いつつ無視するのもあれなので、通知領域のアイコンを開く。


ディプコが立ち上がったので、ダイレクトメッセージの通知欄を見ると確かにメッセージが届いている旨の表示があった。あったんだが……


"我最高神"って誰だよ、そんなフレンドいた記憶ねぇぞ。俺確かダイレクトメッセージはフレンド以外からは受け取らない設定にしていたハズだけど……


とにかく、確認してみるか。


『おーい』


いやなんだこのメッセージ。と思ってたらすぐに次のメッセージが来た。


『やれやれ、やっと見てくれたかの』


来たけど、意味不明だ。どうしよう……もしかしてユーザー名変えた別の知り合い? とりあえず聞いてみようかとキーボードに手を置き、


『いやそっちの声は拾えるから、打ち込まなくても大丈夫じゃぞ』


……は?


なんだこれ、何言ってるんだ?


たしかにディプコは音声通話する機能もあるが、今はマイク付きのヘッドホンを繋げているわけでもないので聞こえるはずがない。もしかして別の人のライブに繋げながら間違えてメッセージを送って来たとか?

であればと勘違いを訂正するために、俺は改めてキーボードをたたいてメッセージを書き込む。


『メッセージ送り先間違えてますよ』

『いや間違えておらんよ、秋篠冬樹』


「……っ!」


 続けて書き込まれたメッセージに、俺は息を飲んでしまった。


当然といえば当然、俺はユーザー名に本名等使っていない。そして、明確に俺の名前を言ってきたということは間違いメッセージではないことは確かだろう。となると、知り合いなのは間違いない。一体誰が──


『今のお主の状況を説明してやろうと思ってな。突然姿が変わって戸惑っておるんじゃろ?』


今度は息を飲むではなく、息が止まった。


こいつ……今の俺の状況を知っているのか? 何故?


「なんで……」


 数秒停止していた呼吸を再開するとともに漏れた声に、返事はすぐに返って来た。


『そりゃワシがお主をその姿にしたからのー』

「はぁ!?」

『こりゃこりゃ、そういきり立つではないわ。まずはいろいろ説明をするから黙って聞いておれ』


そのすぐ後に長々と送られて来たメッセージを取りまとめるとこんな感じだ


・過去の善行により神になるためのカルマ値みたいなのがたまったので、俺は神になった。

・本来は今世を全うした後で神になる予定だったが、諸事情によって急遽神になって貰った。

・今の姿は神になる時なる予定だった、ようするに来世の姿。

・メッセージの送信主は名前の通り最高神。


「何一つとして意味がわからない!」


はぁ? という感じである。何かしらの知り合いなのは間違いないんだが、あれか、宗教か何かにはまった友人が勧誘の為に連絡いれてきた感じか?


なんで今の俺の状況を知っているのかが謎だが……関わらない方がいい気がする。幸いアプリでの会話だ、アプリを閉じてしまえば連絡が来ることもない。

俺は右上の×マークに向けてマウスを動かす。


『こらこらこら、閉じようとするではない!』


慌てた感じのメッセージが来るが無視する。というかこっちの操作が見えてるってハッキングされてるんじゃ? ……アプリだけじゃなくてPC自体落とした方がいいかな。これ。


『……やれやれ、まず信じされないと話が進まんか。まぁ幾重にもフィルターかければ大丈夫じゃろ』


そう、メッセージが流れたが無視して、左クリックをしようとした時だ。


突然視界が暗転した。


は?


停電とかそういった類のものではない、完全な闇。周囲には何も存在せず、触れているハズの椅子やマウスの感触もない。


なんだ、これ?


周囲を見回す。だが広がっているのはただの闇だけ……いや、一点だけ闇ではないところがあった。


そちらにあるのは……人影? わずかな光と共に、そこにいたのは──


そう認識した瞬間。俺の全身に寒気を超えたおぞましい感覚が走り、俺の意識は消失した。


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