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日向ふゆ

「ふゆちゃん! ジョギングかしら? 精がでるわねぇ」


人影は70代くらいの女性だった。畑の中で何やら作業していたらしい彼女もこちらの姿に気づくと、立ち上がってこちらに手を振りつつ大きな声で声を掛けてくる。


その言葉に僕は速度を緩めると彼女に手を大きく振りつつ言葉を返す。


「おはようございます、良枝さん!」


立ち上がった彼女──佐々木 良枝さんがこっちに向かってきたので、僕も畑の端の部分で足を止める。


「やっぱり若い子は元気ねぇ」

「あはは、せっかくいい天気ですし、村も見て回りたいですしですから」

「畑と荒れ地と廃屋しかないけどね。もう皆には挨拶回りは済ませたのでしょう?」

「はい」


良枝さんの言葉に、僕は頷く。何せ僕を除けば6世帯10人しか住んでいない集落だ、挨拶周りもすぐに終わった。そこそこある気はしたけど。


ちなみに彼女、良枝さんを含め本当は僕は村の皆さんとは元々面識がある。祖父達が生きているときは年に一度程度ではあるけど遊びに来てたからね。だけど当然そんな事は言えるわけがないので、初対面の体で挨拶したけど。


尚良枝さんはそもそもウチの遠い親戚だ。今回の引っ越しでもお姉ちゃん経由ではあるがいくつか世話になっている。


「んー、でもふゆちゃんは見てるだけで元気が出るわね! 村の景色に若い子がいるのはいいわ~。普段はせいぜいどこかの家の孫とかが訪ねてきている時しかみれない景色だし」


そういってケタケタ笑う良枝さんは元からお元気でパワフルな方である。まぁ一応神なのでちょっとだけ漏れだした俺の神の力の影響とかあるかもしれないけど。


後”ふゆちゃん"という呼び方。これなんだけど、"冬樹"の愛称ではなく、今の名前自体が"ふゆ"になっている。


僕が新しく得た戸籍の名前は"日向 ふゆ"。命名は例によってお姉ちゃんだ。名前の方は勿論冬樹から取った。似た名前の方が呼ばれた時違和感も感じにくいし馴染みやすいしね。日向の方は佐々木さんより更に遠い親戚から拝借した形だ。そしてすでに村の住人全員から"ふゆちゃん"で呼ばれている。まぁ外見幼い上に実年齢からみたって孫以下の年齢だしね……


「皆ともふゆちゃんの話よくするし、ふゆちゃんは早速早瀬集落のアイドルねぇ」

「あはは、ちょっと恥ずかしいかも」


これから目指す事を考えるとそんな事いってられないけど。小さな集落のお祖父ちゃん達のアイドルではなくて、もっと人気のあるアイドル的な物目指さないといけないので。


それとアイドルというのは言い過ぎにしてもかなり意識してくれているのは間違いないらしい。何せGPが増えてるからね。さすがに人数が人数だから微々たるものではあるけれど、増えているのは事実。塵も積もればではあるし、こっちの世界での身体強化とかはそこまでコストかからずいけるみたいだからそれに使えるのはありがたい。


その後少しの間良枝さんと雑談をした後、集落を一通り走り回り、その後集落を少し離れて道路沿いをしばらく走った後Uターンして集落へ戻った。集落を一通り走り回ったのは全部の世帯に顔を出すためだね。わざわざそんな事をする理由はやっぱり直接会った時の方がGPが増えるから。それにそうじゃなくても顔を出すと皆喜んでくれるからね、悪い気がしない。全部回ったってそれほど大きい集落ではないんだから、今後もこれは繰り返していこうと思う。一人暮らしの世帯も二世帯あるから、見守りにもなるしね。








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