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蝉が雷に打たれて異世界転生したけど寿命は一週間のままらしい

作者: 昼月キオリ

〜蝉が雷に打たれて異世界転生したけど寿命は一週間のままらしい〜


☆登場人物

 

(オス)→人間名は南雲(なぐも)(30代後半)


三上(みかみ)(42)

ラーメン屋台の常連客になりたいお客さん


日向(ひゅうが)(33)

仕事に行き詰まり思い悩むサラリーマン


樹里(じゅり)(31)

何をしたらいいか分からないアラサー女性


 


とある夏の日。木に止まって雨を凌いでいた(オス)は急激な落雷に遭ってしまう。

目が覚めると人間の姿として異世界に転生していた!

しかし、寿命は一週間のままらしい・・・。

限られた時間の中で彼が選んだ生き方とは!?






ゴーン、ゴーン、ゴーン。

時計塔の音が鳴り響く。

霧に包まれたこの街に突如ラーメン屋台が現れた。

人当たりの良い30代後半くらいの男が店主だ。




ラーメン屋台。三日目。

 

三上(みかみ)「醤油一つ」

南雲「はい、あ、三上さん今日も来てくれたんですね」

三上「だって南雲さん、こんなに上手いのにあと四日しかやらないんだろう?ずっと続けてくれよ」

南雲「そうしたいんですがあと四日後には俺はこの街を出なきゃならないんですよ」

三上「ま、事情があるみたいだからこれ以上は言わないけどよ、寂しいねぇ」

南雲「はい、醤油ラーメンお待ちどうさま」

三上「ありがとよ、頂きます、うん、美味い!」

南雲「ありがとうございます」


三上「何てゆーか南雲さんは不思議な力を持っているよな」

南雲「不思議な力、ですか?」

三上「ああ、初めて会ったばかりなのに悩みを話したくなっちまう、そういう雰囲気っつーのかな」

南雲「だったら嬉しいですね」

三上「ごちそうさま」

南雲「700円になります」

 

三上は千円札を財布から取り出す。


三上「ほい、お釣りは取っときな」

南雲「頂けません」

三上「まぁいいから、次の旅立ちの資金にでもしてくれ」

南雲「いつもすみません」

三上「いいのよ、これは悩み相談代だ」

南雲「ありがとうございます」




そう、あと四日後に俺は死ぬ。パタリと死ぬ。

何故なら俺は蝉だから。


風の噂で俺は旅人だとか実は不治の病なんじゃとか言う人もいるがそうじゃない。

 

見た目こそ人間だが中身は蝉のまんまらしい。

何でそんなこと分かるのかと疑問に思う人もいるかもしれないが

同じ仲間がちょうど七日でパタパタと死んでいく姿を見れば嫌でも自分がいつ死ぬかなんて感覚的に分かるものだ。

人間の姿になってもそれは変わらない。


何とも奇妙な話さ。

人間の姿なのに寿命は蝉と同じ一週間だなんてよくもまぁ中途半端に転生したものだ。

 

だったら蝉のままで良かった気もするがこんな経験はあと百回死んでもないだろうから

まぁ、今を楽しんでおくが吉だ。




四日目に来たお客はどよ〜んとした空気を纏ったサラリーマンだ。


日向「塩ラーメン下さい」

南雲「はい、おや、暗い顔してどうしたんです?」

日向「いえ、別に・・・」

南雲「そうですか、ならいいんですが・・・はい、塩ラーメンお待ちどうさま」

日向「ありがとうございます・・・いただきまーす、ずずっ、ん!美味い・・・」

南雲「ありがとうございます」

 

日向「ごちそうさまでした、こんな美味しかったら毎日食べたいです」

なぐ「ありがとうございます、ですがこの店は一週間限定なんです」

日向「え、そうなんですか・・・」

南雲「だからと言ってはなんですが悩みがあるなら聞きますよ、今だけですから何にも気を追う必要はないでしょう?」

日向「そうですね・・・」


日向はポツリポツリと話初めた。

仕事が軌道に乗らず、残業ばかりしているらしい。


南雲「なるほど」

日向「店主さんはどうしてラーメン屋台を始めたんですか?」

南雲「俺ですか?ラーメン屋台を始めたのはまぁなんだというか成り行きですかね」

日向「成り行き・・・」

 

南雲「でも、楽しくなかったら一日目で辞めてましたね」

日向「え、一日でですか?・・・」

南雲「ええ、俺は一週間しかこの街にいられないので、この場所でつまらないことに使う時間なんてないんです」

日向「!そっか・・・そういう考え方もあるのか・・・」

南雲「何かに気付いたって顔ですね」


日向「はい、俺、自分で自分の人生つまらなくさせてたのかも・・・」

南雲「あまり自分を責めないであげて下さい、

ですがそうですね、例えばあなたがあと一週間しか生きられないとしたらあなたは誰と何をしますか?」

日向「それは・・・」

南雲「それが自分が今やらなくてはいけないことなんじゃないか?と俺は思ってるんです、

あくまで俺の意見ですので押し付けるつもりはありませんが」


日向「いえ、参考になりました、ありがとうございます」

日向はペコリとお辞儀をする。


南雲「それは良かった」






五日目。こちらもまた暗い顔した女性が来た。



樹里「醤油ラーメン一つ下さい」

南雲「はい」


樹里「はぁ・・・」

南雲「どうしたんですか?ため息なんかついて」

樹里「すみません、声に出てましたか?」

南雲「いえ、それはいいんですよ、ただ気になってしまいまして」

樹里「私、やりたいことが見つからなくて・・・」


南雲「やりたいことですか・・・そんな時はとりあえずラーメンでも食べて一息つきましょう、はい醤油ラーメンお待ちどうさま」

樹里「ありがとうございます・・・頂きます、ずずっ、ん!美味しい!」

南雲「ありがとうございます」


樹里「ごちそうさまでした、とっても美味しかったです」

南雲「またいつでも来てくださいね、と言いたいところなんですがこの店はあと二日後には無くなってしまうんですよ」

樹里「え!こんなに美味しいのにもったいない・・・あの、どうして・・・」


南雲「新たな旅立ちと言ったところです」

樹里「旅立ちですか・・・?」

南雲「人生一度きりですからね、俺はドーンと何かやってスパーンと終わるのが好きなんですよ」

樹里「何かってやりたいことですか?」

南雲「いえ、何でもいいんです、楽しいと自分が感じさえすれば」

樹里「楽しいことか・・・」

 

南雲「楽しめない何かがあるみたいですね?」

樹里「そうなのかな・・・周りにいる人たちは旦那さんの悪口を言う人や相手の意見を批判する人が多くて

疲れてしまったのかもしれないです」


南雲「お嬢さん、限られた時間の中で誰かを傷付けたり、悪いもの探したり、やりたくない事やったり、嫌いな奴に構ったり・・・

そんな時間の使い方はもったいないと俺は思いますよ」


樹里「私もそう思います」


南雲「だったらお嬢さんもそういった人たちとは少し距離を置いてドーンと何かやってスパーンと終わる、

そんな人生を目指してみるのも悪くないかもしれないですよ」


樹里「はい」






七日目の朝。

南雲はラーメン屋台を走らせ、霧の中へと消えていった。

その姿を見た者は誰もいない。






〜雷に打たれたら蝉として一週間木の上で暮らすことになりました〜


☆登場人物

佐久間(さくま)(15)

好きな人にアタックできない青年


月野(つきの)(15)

佐久間の好きな人


ぷー子

(メス)






僕はある日の帰り道、雷に打たれた。ちょうど神社の前を通った時だった。

 

佐久間「健康成就、嘘つき・・・」


次に目を覚ました時、僕は木の上にいた。

最初は何が起きたのか分からなかったけど視界がやけに高くて慌てた。

そんな僕に蝉たちが話しかけてきた。

蝉の言葉が分かる、そしてこの視界。


そこから割り出される答えは一つ。

僕は蝉になっている。

何でよりによって蝉なんだよ・・・。

好きな子に告白さえできてないのに・・・。


ミーンミンミンミン。ミーンミンミンミン。


(メス)が一匹こちらに向かって飛んできた。

可愛い・・・ん?なに可愛いって?蝉に対して可愛いと思うのはいかがなものか。

いや、今僕は蝉なんだ。別に変じゃない。


視界は蝉と一緒。言葉も分かる。恋愛感情もなんかよく分からないけどある。

 

ぷー子「ねぇ、お話しようよ」

佐久間「う、うん」

ぷー子「お名前何て言うの?」

佐久間「佐久間だよ」

ぷー子「へぇ、佐久間君、変わったお名前ね!私はねぷー子!」


そっちの名前の方がだいぶ変だよ・・・。

そもそも蝉に名前なんてあったのか。

ぷー子、ごめんちょっとツボに入りそう。


佐久間「ぷ、ぷー子ね」

ぷー子「緊張してるの?可愛いわね」


緊張ってゆーか半分は笑いそうなの堪えてるんだよ。

いくら相手が蝉とはいえそんなこと言えないけど。


佐久間「可愛い?」

ぷー子「うん、可愛い、ねぇ佐久間君、キスしましょうよ」

佐久間「うぇ!?い、いきなり早くない?」

ぷー子「何言ってるの、私たちあと一週間で死んじゃうのよ?考えてる時間なんてないわ」

佐久間「一週間・・・そうか、そうだよね・・」

ぷー子「するの?しないの?」

佐久間「し、します!!」




こうして一週間後、僕はあっさり死んだ。

そして人間に戻った。



次の日、学校に行って一番最初に向かったのは月野さんの机の前だ。



月野「あら?佐久間君、どうかした?」

佐久間「好きです!!」

 

ざわざわ・・・。

 

月野「え?」

佐久間「付き合って下さい!!」


ざわざわ・・・。


月野「よ、よろしくお願いします」

佐久間「え、ほ、本当にいいの?・・・」

月野「うん」


僕はその日の帰り道、月野さんと手を繋いで歩いた。

 

蝉、ありがとう!!なんかよく分からないけど彼女できたよ!

ぷー子、ありがとう!!なんかよく分からないけど上手くいったよ!



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