4言目 ………というか、異世界の女神の加護って…何?
ほんのちょっぴりシリアスしてます。
やば女…ではなく、リリィからの話は続いていく。
「セレン様、この世界は今、深刻な危機的状況にあります。」
「それ、さっきも言ってましたよね?どういう事ですか?」
「それは…、」
リリィは、一旦そこで話を切るとこちらを見て何かに気づいた表情をした後、困ったように微笑み、手を差し出しながら、
「地面に座ったままですと、冷えますでしょう?長いお話になります。こちらの椅子にどうぞ、腰をお掛けして、お聞きください。」
と、言い私たちを立ち上がらせ神殿にあった長椅子へ座らせたのち、自分もその向かいにあった一人用の椅子に腰掛けてから、続き話し始めた。
「この世界の深刻な危機的状況、それは、神々により、引き起こされる神災害にあります」
「神災害?」
「神災害とは、神による制裁。秩序の下にくだされる、神罰です」
「神罰…。」
「簡単に言うと、神がそのお奇跡の能力を使い、引き起こす大災害のことです」
「大災害っ!?」
「そうです。これは、ただの自然災害と違い、神々が議論し、判決を下したその結果、必要と判断された時のみ発動され、神罰を下す役目を請け負った神のみが自身のお奇跡の能力を振います。神々の下す審判の為、我々、人間はもちろんほかの種族にも対処しようのないものなのです。…ですから、通常神災害が引き起こされる場合はまず、神より自身の神子に通告があり猶予が決められます。それに基づいて期限以内に改善又は、改善の見込みがある等と判断された場合は、神災害は必要なしとされ起こりませんが、通告を無視又は改善等がみられないと判断された場合は神災害必要がありとされ起こります。神々も無暗に大災害を起こしては、秩序は乱れ、自国の民が苦しみ、世界が混沌化し崩壊する恐れがある事をわかっている為、簡単に神災害引き起こしたり等は致しません。」
「…」
「しかし、今の神々は、暴走し、必要のない神災害繰り返し引き起こし、守るべきはず秩序を乱し、自身の国の民を苦しめ、世界を混沌に導き、崩壊させようとしております。…これが、まだ一柱や二柱だけなら、ほかの神々だけで諫め、秩序を守ることも、可能ですが。暴走しているのは、ほぼ全ての神なのです。」
それは、俄かには信じがたい話だった。
「この世界には、この世界の礎を築いた、我らが母なる創造主、創出神セルファルーナ。そして、その創造主が世界の秩序を守り、理を保つ為に、生み出した七柱の神々、七柱の君主の計八柱の神がいます。今、その創造主を覗く七柱の君主の神々、七柱中、六柱が、暴走しているのです」
私は、愕然とした。
(神の暴走っ!?どうして、そんな事起こっているのっ!?神が暴走なんてしたら、世界がめちゃくちゃになることなんて解りきってる!!!だからこそ、世界の管理者たる創造主がいる訳で………っっっっ!!!!!!まさか!?)
私はあり得ない、あり得てはいけない可能性に気付いて、しまった…。そして、それが、的中している事を聖川さんの質問で、確信した。
「あの、話を聞いて思ったんですが、暴走しているのは、七柱中六柱の神様で、一柱は無事。そして、その六柱の神様達よりも偉い神様いる。で、その偉い神様が創った存在がその今暴走している六柱。つまり六柱とも偉い神様の、子供ってことですよね?それなら親の偉い神様と無事な神様が協力して、その六柱の暴走を止めたらいいんじゃないですか?」
「おっしゃる通りです。それが、本来なら理想なんですが…。ですが、それは、無理なのです」
「どうしてなんですか?」
リリィは目を閉じ、一呼吸置いてから、聖川さんを見つめ答えた。
「その神々の暴走を引き起こし、混沌に導き世界に崩壊を招こうとしている神こそが、我らが母なる創造主、創出神セルファルーナなのですから」
(あぁ…、当たってほくなかったぁ~~!!!やっぱそうだよね、普通、自分が創った神が暴走する事を創造主がお許しになるはずない、暴走なんかしたなら、それを消して、また新たな神を創ればいいだけの事、それをせずに、暴走を良しとしているんであれば……、此処の創造主はこの世界の崩壊を望んでいるということ…なのか?でも、なんでだ?世界が崩壊なんてしたら、自分もただじゃすまないはずなのに…。創造主は世界そのもの、それが滅びたら創造主も滅びることになる。……もしかして、自殺願望でもあるんじゃぁ…………こわっ!?この世界、本当は思ってた以上にヤバイんじゃ……。はよ、聖川さんと一緒に帰らねば。)
などと私が、焦っている横で、二人の会話が続いていく…。
「……。創作にしては、設定が凝ってますね?」
聖川さんの声は震えていた。
「セレン様、これは創作の設定ではなく、本当のことなのです」
「…っだったら、証拠を見せてください」
震える声のまま祈るように問いかける、
「証拠ですか?」
「そうです。この世界が異世界というのなら、あなたが話したその話が本当のことなら、現実だというのならっ!その証拠を今っここでっ!見せてください!今すぐにっ!!魔法でもなんでも出してみてくださいっ!!!」
必死に理性を保とうと、冷静になろうと、ここは、現実で、自分たちは誘拐された被害者で、目の前の人物は誘拐したただの犯罪者で、すぐに親が来て、警察が来て、自分たちは家に帰れると、日常に戻れるそう信じるように、祈るように膝の上に置いた両手を硬く握りしめ彼女は、叫んでいた。
「わかりました。」
ゆっくりと瞬きをした後、リリィはそう言った。
「…っえ?」
聖川さんは、目を開き、少し呆けた顔をしながらつぶやいていた。
「今から、私が得意とする《高等魔導宝具顕現》をご覧いただきます。」
そういうと、リリィは両掌を上に向け、胸あたりに掲げ器のように形をとると、両掌を伏し目がちに見つめ祝詞のような言葉を紡ぎ、はじめた。
《悠久の儀、誓いの果て》
言葉を紡ぎ始めてから、リリィの足元から、リリィを中心として、円を描くように、魔力を含んだ風が吹き始め、その風は上に向けた両掌の中心に集まり、小さな風の球体を作っている。
《晴嵐の理、奏でし旋律》
詠唱に導かれるように、徐々に大きくなり、
《我、汝に問いかける、汝の在るべき真、汝の在るべき形》
球体から、杖のような長い形状に、風を纏いながら変化し、
《今、顕現の時は成った》
姿を顕す。
《高等魔導宝具顕現・風の妖精の杖》
瞬間、突風が吹いた。
リリィは両手で杖を握っていた。その杖は、1m50cm位の全長は有りそうな、長く細い白亜に輝く柄に、両端には金の美しい装飾が施されており、上の部分にはエメラルドの様に光り輝く丸い宝石が付き、その宝石を金の装飾がまる、で風を纏っているかのように包み込んでいる。美しい杖だった。
「これは、《風の妖精の杖》、私が持つ中で最も強い《高等魔導宝具》になります。そして、先ほど見せた魔法は《高等魔導宝具顕現》、《高等魔導宝具》を、具現化する魔法になります」
そう言ったリリィは聖川さんに微笑みを向けながら少し得意そうにしていた。
「セレン様、これで、信じていただけますか?」
聖川さんはリリィの問いに、青ざめ、絶望したかのような表情で、つぶやくような小さな泣きそうな声で、返事をした。
「うそ……じゃぁ、ここは本当に…、異世界なの?…さっきの話も?」
本当に今にも目から大粒の涙を零しそうな、震えた声だった。
私は、無意識に、彼女の右手を左手で握っていた。
無意識の行動に私は、
(あっ、ど、ど、どどっどうしよう、なんか反射的に手を握ってしまった;;いっいきなり、たいして仲良くもない、しゃべったことだってない、普段、教室の隅っこにいるような、クソ陰キャのコミュ障で、どもりまくる、只のクラスメイトかどうかも認識の危うい、私が、手を握っても大丈夫なのだろうか;;;)
そう思って、心の中で大変焦りながら、聖川さんのほうを見ると、
聖川さんは、「あっ…」一言そう漏らすと、私と目と合わせ、何かを決意した表情をし、一度深呼吸をすると、手を握り返してきた。ふぇっ!?!?
そして、まっすぐと再びリリィを見つめ、
「わかりました。ここは本当に異世界なんですね」
先ほどの絶望のような表情はなく、何かを硬く決意した表情で、冷静に問いかけていた。
「信じていただけましたかっ!」
「えぇ、信じます」
「良かった、これで先の話が出来ます!!」
リリィは安堵の表情をしてから《高等魔導宝具非顕現》と唱えた。すると、両手に持っていた杖は、風を纏い、光の粒子となって消えていった。
「それで、その神様のせいで、この異世界が危機的状況というのは理解できました。でも、それでなんで私たちを魔法で連れてきたりしたんですか?私たち普通の女子高生……一般人なんですよ?あなたみたいに魔法が使えるわけでも、超能力があるわけでもない、そんな小娘にいったい何の用なんですか?」
聖川さんは私と握り合っている右手に力を込めながらそんな質問をリリィに投げかけた。
私は、
(…ごめん、聖川さん。私、本当は女神なんです。普通の女子高生じゃないんです。魔法はばっちし使えるし、何なら、超能力みたいなやつも使えます。……なんかごめんね)
ぼけっとした顔のまま心の中で、聖川さんに謝っていた。
「それは違います。セレン様」
リリィは、答える。
「あなたは、私が《聖女召喚の儀》という、聖なる召喚魔法にて召喚した、この世界の救世主、伝説のセルファルーナの聖女なのですから」
微笑みながら聖川さんに、残酷な現実を突きつける。
「それ、なんかの間違いですよ?」
しかし、聖川さん、リリィにズバッと切り返した。
「…っえ?」
リリィは、先ほどの微笑みを崩し、少し呆けた顔をして、つぶやいた。
(呆けた顔しても美人だなっおい……)と私は思った。
「大体、その…、何とかメイデン?その魔法って、聖女を呼び出す為の魔法?なんですよね?」
「はっ、はい…」
「聖女って、二人なんですか?」
「いえ…、伝説だと、お一人かと思われます…」
「だったら、益々違うと思います。だって、私たち二人ですよ?」
聖川さんがそういった瞬間、リリィが、そういえばと思い出したかというようにバッッとこちらを勢いよく見てきた。
「そういえば、もうお一人いましたね?」
私と目が合う、リリィ。
(いや目の前にずっといましたが?まさか、あなた、私の事。話に夢中で忘れてましたとか、言いませんよね?)
「まさか、あなた、話に夢中で水野さんの事、綺麗さっぱり脳内から追い出してたんじゃないでしょうね!?」
と、怒り出す聖川さん。
あっ聖川さん、怒っても美少女だな…。なんて、見とれていると、
「そっそ、そんなこと、あるわけないじゃないですか;;もちろん、覚えてましたよっ!?!!!!」
なんて、言って、リリィは焦っていた。忘れてたな……、こいつ、と私はリリィをジト目で見ていた。
「本当ですかっ??」
「本当ですよ;;セレンさまっ!!」
疑いの目を向ける聖川さんに、リリィは冷や汗をかきながら、歪に微笑んでいる。
「……まぁいいです。話を元に戻しますが、私たちは教室から二人で此処へ連れてこられたんです。」
「そっそうですね…」
「で、リリィさんがした魔法は、聖女様一人を連れてくる魔法。明らかに、違うじゃないですか。」
「……。」
「失敗したんじゃないですか?」
「…………!?!!?!!?!!」
聖川さんの言葉が、クリーンヒットしたのか、リリィは声もなく混乱しており、両手で頭を抱えて自分の両ひざを見るように、背中を丸め、小声でつぶやいていた、
「そっそんなはずない、詠唱も魔方陣も、完璧だった。間違えないように、何度も確認したし、何度も練習したっ!!そっそれに、セレン様を召喚はちゃんと出来てるんだし、失敗じゃないはず。セレン様は、聖女の筈だし間違いない。もし、失敗したなら、不完全召喚ってことで、なにも現れないもしくは、なんか意味不明な肉片やらなんやらが、散らばっているはずっ!でもそれも無いってことは、成功してるってことだろっだから問題はないはず……、でもっ、じゃぁ、あの隣にいるガキは?一体なんなんだ?何処の?誰なんだ???……まっまさか!?巻き込まれた!?聖女召喚にっ!?!!?あっあり得ない、けど、もし、あり得たのなら……っっっっ!!!!!!私はっ関係ないガキも巻き込んだって事か!?そっそそっそんな事!!そんな事っもしっ、もしあの、ボケカス共に、知られでもしたら……っっっっ!!!!!!……、良しこうなったら、このガキは………、私の生き別れた妹ってことにしようっ!!そうしようっ!!そんでたまたま、聖女召喚のときたまたま、神殿に来たってことで、誤魔化そっっっっ!!!!!!どうせ、あの女日照りのボケカス共だ、ちょっと乳をくっ付けりゃ一発だろ!うんっ!大丈夫、ダイジョブっ!だいじょうぶ、あっでも、セレン様が、聖女だって言う証明はどうしたら???えっどうしよう!?!??etc……」
なんかぶつぶつ、うるさいなぁ…、てか、なんか物騒な事言ってなかったかな?この女……、やっぱやば女じゃん…。怖ぇ……。
私が、リリィを不気味な訳わかんない生物を見るような、ジト目で、見ていると、横で聖川さんが心配そうに、リリィに声をかけていた。
「あっあの!え、えっと……、なんか、ごめんなさい。傷つきましたよねっ。だっ大丈夫ですよ!!どんな人にも失敗のひとつやふた「そうだっ!!《個人能力一覧》っっっっ!!!!!」
慰めようとして、優しい言葉をかけ、リリィを元気付けようとしていた聖川さんの言葉を遮り、大きな声で、叫びながら椅子から立ち上がり、上半身を前に傾け聖川さんの顔に自分の顔を近付けて、胸の前で両手を力強く握り締め、リリィはもう一度大きな声を発した。
「そうですよ、《個人能力一覧》!!!!それを、見れば一発で、セレン様が聖女だって証明できますっっっっ!!!!!」
「えっ、い、いきなりなんですか!?!?」
両手の握り拳をほどき、聖川さんの左手を両手でとり、握るリリィ。興奮しているのか、両頬を桜色に染め、目キラキラと輝かせて聖川さんに詰め寄っている。こう見ると、可憐な美女なのに……。残念だ…。
「《個人能力一覧》ですよぅ《個人能力一覧》っ!!!!それさえ見ればセレン様が、聖女として私に召喚されたって解りますよっっ!!!!」
「はっはぁ… 《個人能力一覧》ですか。それって、何ですか?また、異世界用語か何かで……???」
「《個人能力一覧》と言うのは、専用の《高等魔導宝具》、《聖霊ノ水晶》を使い、個人の能力値を一覧し可視化する事の出来る魔法ですっ!!!」
「へっ…へぇ、そうなんですかぁ……」
「はいっ!ですので、これを確認すれば《個人能力一覧》の《職種》の所にセレン様が聖女なら《聖女》と記載される筈ですからっ!!!ちなみっ!私の《職種》は、《上級聖職者》ですっ!!!」
リリィは“ちなみにっ!”と言うところで、聖川さんの左手を離し胸を張り、右手は腰に、左手は胸を掌で叩く様なポーズをとり、その後の台詞を自慢げに話している。何か、可愛いな………、馬鹿な子みたいで。なるほど、これが俗に言う、馬鹿な子ほど可愛いか。なるほど。…にしても、この馬鹿な子、馬鹿なこの割に上級職になんだ、何気にすげぇな。馬鹿な子なのに。
「分かりました。やってやりますよっそれで、私が、聖女なんかじゃないって証明してみせます!!」
聖川さんがそう言いながら勢いよく立ち上がり、それに引っ張られる形で私も椅子から立ち上がった。聖川さんはこちらを見て私に、言った。
「水野さんっ!!これで、証明されたら、何が何でもリリィさんに家に帰してもらいましょうねっ!!」
これが聞こえたリリィ「えっ…」みたいな顔でこちらを見ていた。
「そっ…しょう、で、ですね…がんっが、がんばります…」
コミュ障故に小声になる、私。ごめんね、聖川さん…。
「うんっ!!頑張ろう!!!」
(聖川さん、いい笑顔だな…、でも本当にごめんね。多分《個人能力一覧》の《職種》には、《聖女》と記載されると思います。だって、召喚魔法は成功してますし…、リリィは腐っても《上級聖職者》、魔力の使い方を熟知している。それに、私が見るにリリィには、かなりの素質がありそうだし…。やば女なのに…、馬鹿な子なのに…、馬鹿と天才は紙一重って本当だなぁ。だから、失敗はまず無い。………あれっならどうして、私は此処にいるの?召喚は成功、聖女は呼ばれた、なら、何で私は巻き込まれた?成功していたなら、巻き込まれるはずなんてない…どうして……)
と、考えている途中に聖川さんの声が聞こえ、一旦思考を中止し、聖川さんの方を見た。
「それじゃぁっ!!リリィさんっその、え、えーエスプレッソ?を出して下さいっ!!!!」
リリィを見ながら、左手を上に向け前に突き出し真剣な顔で、聖川さんは叫んだ。
「…セレン様、エスプレッソではなく、《聖霊ノ水晶》です。最初の一文字とちっちゃな“つ”しか、合ってませんよ?」
「そっそんなこと、どうでもいいじゃ無いですか!?早くその《聖霊ノ水晶》を出して下さいっ!!!」
聖川さんはリリィの指摘に、頬を赤らめて、恥ずかしそうに少し目を泳がせた後、また、真っ直ぐにリリィを見て突き出した左手を上下に揺らしながら、勢いよく《高等魔導宝具》を催促した。顔を赤らめる聖川さん…、かっんわいいなぁ〜〜〜とってもかわゆいよ〜
「…セレン様、可愛いですね」真顔になるリリィ。
その様子に、聖川さんは両頬を益々赤らめ、リスのようにプクーと膨らまして無言の抗議をしている。その目には、少しだけ涙が溜まり、潤んでいた。
「ふふっ、これ以上セレン様をお待たせするのも悪いですねっ…では、」
リリィは少し笑った後、そう言い真剣な顔をし、《風の妖精の杖》を出した時のように両手を胸の前に出し詠唱を始めた。
《悠久の儀、誓いの果て》
詠唱を始めたと同時に両手の中心に魔力が集まっていき、光の球体が顕れる
《真実の鏡、己の器》
次第に、それは形を成し、光を放ち姿を表す。
《我、汝に問いかける、汝の在るべき真、汝の在るべき形》
《今、顕現の時は成った》
《高等魔導宝具顕現・聖霊ノ水晶》
詠唱が終わると、光は治り、リリィの両手には丸く透き通る、美しい水晶玉が収められていた。
「綺麗…。」
ぼそっと、つぶやく聖川さんは、左手を降ろして水晶玉に見惚れていた。
「セレン様これが、《聖霊ノ水晶》です。」
「この、綺麗な水晶玉が…」
「では、セレン様こちらに両手を翳して《個人能力一覧》と言って下さい。そうすれば目の前に《個人能力一覧》が現れます」
リリィは両手に持っている、《聖霊ノ水晶》を、聖川さんの前にさぁどうぞと言わんばかりに少し突き出した。聖川さんはそれを受け、私と繋いでいる手を解き、リリィへと近づき《聖霊ノ水晶》へ両手を翳し、そして言った。
「《個人能力一覧》」と、
すると、《聖霊ノ水晶》は、七色の美しい光を放ち、その光が真上へと集約され四角いデジタルのモニター画面のようになり、そこへ聖川さんの《個人能力一覧》が表示された。
《個人能力一覧》
【名前】 聖川 世恋
【年齢】 15歳
【種族】 人間
【職種】 聖女
【練度】 1
【体力値】 58
【魔力値】 98
【身体能力】 47
【固有能力】 上級聖魔法 上級火魔法 水魔法 風魔法 雷魔法 土魔法 緑魔法 闇魔法 超自己回復 痛覚遮断 女神の器
【耐性】 全魔法攻撃耐性 物理攻撃耐性 精神攻撃耐性 猛毒耐性
【祝福】 異世界の女神の加護
表示された内容、それはあまりにも人間を超えたあり得ない内容だった。
………というか、異世界の女神の加護って…何?
シリアス慣れない。