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第49話「白夜は秘密主義ですから」

***


佐和と別れたあと、葉緩は葵斗に手を引かれて家までの道を歩いていた。

角を曲がれば家に着く場所まできて葉緩は立ち止まる。

葵斗と繋いでいた手を離して、不慣れにヘラヘラと笑顔を浮かべた。


「葵斗くん、ここまででいいです。送ってくれてありがとうございます」

「いつか葉緩のお家にお邪魔させてね」


葵斗の大胆な発言に葉緩はボッと顔を赤く染める。


(香りがわからないとはいえ、葵斗くんは私の番。ということは、当然ああなってこうなってなわけですが……)


この時代での忍びは番という概念を持っているのか。

四ツ井家はそうだという認識だったため、他の忍びと結ばれることは考えてもみなかった。

じりじりと詰め寄ってくる葵斗に、葉緩は両手を前に突き出して葵斗の胸を押す。


「いっ……今しばらくお待ちを!」

「なるべく早いと嬉しい。約束は有言実行しないと」

「ひゃわいっ!?」


いつのまにか壁に追いやられ、逃げ場所がなくなってしまった。

砂利を踏みながら葉緩は葵斗を見上げ、口角をあげてダラダラと汗を流す。


(これは心臓に悪い! うわぁ、今更ですが恥ずかしすぎますーっ!)


「そ、それではまた! が、学校でお会いしましょう!」

「まだダメだよ」

「ふあっ!?」


しっかりと壁と葵斗の間に挟まれ、あごを押さえつけられる。


「葵斗くん! まっ……ん! ん、んぅ……!」

チュッと音をたてたかと思うと、距離をさらに縮めようと唇が深く重なる。


防衛反応からとっさに目を閉じてしまうが、触れる感覚と聴覚に意識がいき、恥ずかしさに目をまわす。


(くらくらする。熱に溺れそう)


親指で頬を撫でられ、羞恥が限界に達して葵斗を突き飛ばす。

息を乱しながら睨みつけると、葵斗はニコニコとしながら葉緩の濡れた唇に人差し指をあてた。


初心なわりに知識がムダにあるため、意味に気づいて葉緩は爆発してしまいそうだ。


(葵斗くんって……えっちぃ)


見た目がイケメン、しかも葉緩にはドンピシャな整い方だ。

ド直球に迫られれば色っぽさに葉緩が勝てるはずもない。


悔しさに涙を浮かべ、八つ当たりで葵斗の指をはたき落とした。


「葵斗くん、強引です。だいたい、私が壁に扮している時もこのように……キ、キスするのはヒドイではありませんか!」

「葉緩は頑固だから絶対に動かないもん。これほど好き放題できることはない」


――ガーンッ!!

ピアノの鍵盤を叩きつけたような音が鳴った気がした。

葉緩は壁に扮するとき、気配を探られることのないよう細心の注意を払っている。

その隙をつかれ、壁だと言い張り耐える葉緩をもてあそんでいたというわけだ。


恥ずかしさよりも、葉緩の気持ちを無視して強引に迫ったことへ怒りが募ってくる。

全力で葵斗を叩こうとしても抑えられるだけなので、力で敵わない葉緩は足をバタバタとさせて必死に吠えた。


「鬼畜! 不真面目! もう少し謙虚になってください!」

「無理。というかやだ」


これは本当に“あの蒼依と同一人物なのか”と疑ってしまいたくなる。


それほど葵斗は葉緩に遠慮がない。

……よくよく考えればゴリ押しなところは同じだが、節操なしになれと言ったわけではないので悶々と頭を抱えることになる。


(とんでもない人を好きになってしまったようです! これでは身がもたないというもの!)


「本当にのぉ。ある程度の落ち着きは必要だぞ。熱しやすく冷めやすい、のが始まりと言うもの」


葉緩の心の声にこたえるように、落ち着いた低音の声が耳に入る。

ハッとして顔をあげると、葵斗の後ろを陣取ってこちらを観察する白夜がいた。


「白夜!? み、見ていたのですか!?」

「私と葉緩は一心同体。なんでも見ているし、なんでも知っているぞ」

「がーん! それってずるいです! 私は白夜のこと知らないこと多いですよ!」


ニヤニヤと笑うだけの白夜にシャーシャーと毛を逆立てる。

怒りの対象が葵斗から移り、白夜に手を伸ばそうとすると、それを好機ととらえて葵斗が抱きしめてくる。


ちゃっかり白夜と向き合えるよう方向転換をされ、手荷物のように扱われることにより一層腹を立てた。


恨みがましく白夜を睨みつけると、白夜は目をパチクリさせ、わざとらしく首を傾げた。


「全部知っていたら満足なのか? 知らないことがあるとお前は不満に思うか?」

「……別に。知らないことがあっても白夜は白夜ですから」


口では強く出るも、結局は不満を隠せずに唇を噛む。

白夜は葉緩の相棒であり、生まれたときから共にいる白蛇だ。


そばにいても白夜は一向に自身のことを語ろうとしない。

なぜだか、宗芭や絢葉には白夜が見えない。


最初は不思議に思ったものの、葉緩にとって白夜は特別な存在だったのでいつしか気にしなくなっていた。



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