第42話「新たな運命。救われた命」
「桐人様! 早く動いてくださいな!」
「は、はいっ!!」
女に叱られ、桐人は医者を呼びに走っていく。
「こんなに弱られて……。大丈夫ですからね。すぐお医者様連れてきます。お水、飲めますか?」
うなずくだけで精いっぱいだ。
女性は水袋を取り出して、ゆっくりと葉名に飲ませていく。
水が体内にとりこまれ、葉名はようやく息をついて目を閉じた。
蒼依を失い、孤独にさ迷っていた葉名を助けてくれたのは一国の城主とその奥方だった。
母子ともに危険な状況だったが、二人に救われ後に葉名は城の部屋で赤子を出産した。
***
風通しがよく、見事な日本庭園を一望できる部屋で葉名は赤子を抱いていた。
「かわいい、私の坊や」
「体調はいかがですか?」
部屋に入ってきたのは葉名を救った女性・柚であった。
おだやかで可憐で、実はたくましさもある柚は葉名の前に座り込み、赤子をのぞきこんでニッコリと笑いかける。
桐人と柚に出会わなければどうなっていただろう。
ただただ感謝の気持ちでいっぱいであった。
「奥方様には大変お世話になりました。おかげで無事にこの子を産むことも出来ました」
「ねぇ、葉名。本当にここを出るというの?」
その問いかけに葉名は苦笑する。
蒼依としか心を通わすことの出来なかった葉名は、人の頼り方がわからなかった。
「これ以上、迷惑をかけることは」
「迷惑など思っていないよ。むしろいてくれた方がありがたいのだが」
そこに現れたのは桐人であった。
柚のとなりに腰掛け、そっと柚の手を握る。
微笑みあう二人に葉名は暖かい気持ちを知った。
「葉名、お前は忍術の心得があるだろう」
「はい。ですが未熟ゆえに活躍は難しいかと」
「構わぬ。ただ子に心構えをといてほしいのだ」
驚きに顔をあげると、桐人が幸せそうな顔をして柚の腹を撫でる。
まだ膨らんではいないが、柚も桐人との子を宿していた。
「お柚も今は子を宿しておる。その子の相手をし、将来は護衛となってほしいのだ」
「そんな、そのような身に余る光栄で……」
「葉名、わたしからもお願いします」
柚が桐人と重ねる手と反対の手で葉名の膝に触れる。
慈愛に満ちた笑みに葉名は目を奪われ、胸がキュンとときめいた。
「葉名の子ならば安心出来ますから」
(私は、どうしたら良い? 裏切り者の抜け忍が別の地でまた忍びを育てると?)
「うーあー」
腕に抱いた子が声を出し、葉名を見ている。
いとおしい姿に葉名は蒼依の面影をみた。
(会いたいです、蒼依くん)
その思った瞬間、葉名の意識が白い光に包まれる。
目の前には番の木があり、その前にやさしい表情でこちらを見つめる蒼依がいた。
『これは……幻?』
『葉名』
(あぁ、聞き間違うはずもない。この声は、愛を囁いてくれる声だ)
『蒼依くん!』
駆けだす。
ただ真っ直ぐに、蒼依の胸の中に飛び込んでいく。
『元気な子を産んでくれたんだね。ありがとう』
『蒼依くん、蒼依くんっ……! 会いたかったです、夢でもなんでもいいから会いたかった!』
『ごめん、守りきれなくて。一人にさせてしまった。ごめんな』
ずっと耐えてきた想いがあふれ出す。
葉名を想うやさしい心に涙せずにはいられなかった。
『いいえ。私は今、素晴らしい方々のもとでお世話になっております。おかげで蒼依くんとの子を産むことが出来ました』
『そうか』
葉名の涙を指で拭い、瞼に唇を落とす。
ふと、木を見上げて葉名の枝を見た。
「葉名の枝は、手折ったのだな」
「……もう、誰の運命も巻き込まないようにと」
その言葉に蒼依はそっと葉名を抱きしめる。
「来世で必ず」
「え?」
「必ず会いに行く。匂いがわかってもわからなくても俺は葉名を見つけ出す。待ってくれるか?」
葉名は悟る。
匂いがわからなくても蒼依を求めてやまないのだろうと。
この甘さも苦さも入り混じったものが、二人を繋ぐものだ。
「はい。もし見つかった時は素直になりたいです。あなたの腕に飛び込める、そんな女の子に」
やさしくおだやかな気持ちに蒼依の両頬へ手を伸ばす。
蒼依が一番好きだと言ってくれた笑顔だ。
「次はもう少し楽観的な女の子になりたいな。あと強くなりたい。それでたくさん、あなたに愛されていたい。そんな私の夢物語」
「夢じゃない、叶えてみせるさ」
「蒼依くんは少し真面目すぎましたね。もう少し肩の力を抜いてもいいと思いますよ」
「そうだな。もっと葉名に手を伸ばす欲張りもいいかもしれない」
「愛しています。 誰よりも愛しています」
だから、次に会うことが叶ったならばどうか。
《やさしいキスをたくさんください》
***
次に目を開くと、桐人と柚が心配そうにこちらを見ていた。
葉名を想うやさしい心に涙せずにはいられなかった。
『いいえ。私は今、素晴らしい方々のもとでお世話になっております。おかげで蒼依くんとの子を産むことが出来ました』
『そうか』
葉名の涙を指で拭い、瞼に唇を落とす。
ふと、木を見上げて葉名の枝を見た。
「葉名の枝は、手折ったのだな」
「……もう、誰の運命も巻き込まないようにと」
その言葉に蒼依はそっと葉名を抱きしめる。
「来世で必ず」
「え?」
「必ず会いに行く。匂いがわかってもわからなくても俺は葉名を見つけ出す。待ってくれるか?」
葉名は悟る。
匂いがわからなくても蒼依を求めてやまないのだろうと。
この甘さも苦さも入り混じったものが、二人を繋ぐものだ。
「はい。もし見つかった時は素直になりたいです。あなたの腕に飛び込める、そんな女の子に」
やさしくおだやかな気持ちに蒼依の両頬へ手を伸ばす。
蒼依が一番好きだと言ってくれた笑顔だ。
「次はもう少し楽観的な女の子になりたいな。あと強くなりたい。それでたくさん、あなたに愛されていたい。そんな私の夢物語」
「夢じゃない、叶えてみせるさ」
「蒼依くんは少し真面目すぎましたね。もう少し肩の力を抜いてもいいと思いますよ」
「そうだな。もっと葉名に手を伸ばす欲張りもいいかもしれない」
「愛しています。 誰よりも愛しています」
だから、次に会うことが叶ったならばどうか。
《やさしいキスをたくさんください》




