心の中の雪山に春の芽吹きが……
「第5回下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ大賞」への応募作品です。
男は相棒を守る為に自らアンザイレンを切り、亡くなった。
だが、彼の妻に下りた保険額は充分とは言えなかった。
そして10年、死んだ相棒の奥さんに修ちゃんは仕送りをしているが返事は無い。
今でも彼は山岳会に属し会員の遭難時には雪山へ登った。
だが、二次災害に遭った。
彼の上司でもある僕は宣告した。
「その体で雇用継続は難しい」と
「退職金はそれなりに出る」との言葉を遮り、彼は不慣れな左手で“彼女”の住所を認めた。
「その金を残らず送って欲しい」
「一体どういう事だ!!」
問い質すと彼は薄く微笑んだ。
「死に損ないが手を付けない様にする為だ」
「何をバカな!!」
と言いかけた僕に彼は首を振った。
「聞いて欲しい。君はたった一人の親友だから」
僕は言葉を失くした。
「橋本修司の代理でお伺いしました」と告げるとドアが開いた。
部屋の中はセーターと送り状があちこちに置かれている。
ニットの通販の様だ。
テーブルを挟んで彼女と向き合う。
「橋本さんは?」
僕はため息をつく。
「事故に遭いました。命はとりとめましたが……」
「事故って!!??一体なぜ!?」
彼女の顔が青ざめている。やはり彼の仕送りを当てにしているのか……
「仲間の捜索で雪山に入り二次災害に遭いました」
「生きてらっしゃるのですよね!」
「はい!でも今の仕事は……」
僕は銀行の封筒を置いた。
「彼からです」
「保険金が出たのですか?」
僕は頭を振った。
「中身を改めさせていただきます」
と彼女は封筒を取った。
僕は落胆した。僅かな期待は潰え
「いい気味だわ!」
との言葉に視線を落とす。
「そう言えれば楽なのかもしれないけど……」
目を上げると涙を拭おうともしない女が居た。
「『人殺し!!お前が死ね!!』 あの日、彼に投げつけた言葉が!!」
そう叫んで顔を覆った彼女は金庫から通帳を取り出した。
「お願いします!!彼の所へ連れていって下さい!!このお金を返させて下さい!!」
病院に向かう車中でも彼女は泣き続けていた。
「橋本さんの文字が、優しさが……長い年月の中でたまらなく愛おしくなりました。その想いを込めて編んだセーターも贈る事はできず作品として出展したのをきっかけに今のお仕事を始めました。彼まで亡くなったら私どうしよう!!」
病院で泣きながら抱き合う修ちゃん達に僕はもらい泣きした。
退院後、修ちゃんは彼女のマンションに引っ越した。離れ離れになっていた時間を取り戻すかの様にいつも一緒で今も幸せに暮らしている。
元は4000文字近くあった物をそぎ落としてしまい、意味が分かるかなと泣いています(T_T)
あらすじを含め、読み取ってください!!<m(__)m>
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