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剣と魔法と、異世界の旅 ~異世界勇者の冒険録~  作者: 関取ジャイアント
第一章
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第一話 「転移」

 なんだ…ここは、しかいがぐるぐるだ、なんなんだここは、おれは、なにを…

「起きたのかい?」

 軍用のジャケットに似た服を着た子供が俺に語り掛けている。

「あんた、誰なんだ?ここはなんだ?」

ふと気づくと、俺は謎の空間にいた。目の前にいる人物以外に、ぐにゃぐにゃの空間も見えている。色もおかしい、灰色にも虹にも見える。明るすぎるわけでもなく、暗すぎるわけでもなく、ただただ不気味だ。ぐにゃぐにゃも、変なアートのように動いて見える。

決してこの世のものとは思えない凶器のような空間だった。

目の前にいる人物も、子供の姿をしているのに変な服を着ている。病気のように白い肌をしているし、とても不気味だ。見るたびに姿が変わっているようにも見える、不思議な存在だ。

「気になるかい?ここは僕の場所なんだ。誰にもけがされない、僕だけの場所。僕が望む、僕だけの場所。」

こいつが何を言っているのかさっぱりわからない、しかし、ここは俺がさっきまでいた場所とは絶対に違うということは言い切れる。そして、こいつが人間の範疇から逸脱した超常的な何かなのだということも。

「あんた、神様か何かなのか?なぜ俺をこんなとこに連れてきたんだ。」


「そう、そうだ。僕は神様ってわけ。いわゆるね。誰よりもかっこよくて、誰よりも賢い、誰よりもたくましくて強いんだ。君にはやることがある、だから連れてきたんだ。」


「みんなは、どこへ行ったんだ。俺以外のみんなは?」


「うん。みんなも君と一緒だよ、ここに連れてきた。そして送った。サウンドラへ、君にも行ってもらう。」

サウンドラ?みんなも送られたって、神隠しってことか?俺は最後ってことなのか。

「サウンドラっていうのはなんだ、あんた、何が目的なんだ。」


「サウンドラは異世界さ、この世じゃなくてまた別の世界、僕が見てる君たちとは別の世界。君には僕の協力者になってもらうよ。」


「異世界って、ゲームみたいなところじゃないだろうな、そんなところに送られちゃ困る。早くみんなを返してくれ、そんなに仲が良かったわけじゃないやつもいるが、みんな大切な友達なんだ。早く返してくれ。」


「異世界は君の認識で会っているよ。友達はもう返せないよ、送ってしまったからね。」

「返せないって、そんな勝手なことはやめろよ!キョウちゃんとだってやっと近づけるチャンスだったんだ、お前の一存でそんな勝手なことを決めるな!」


「関係ないね、なんせ僕は神様だからね。君の使命は、そうだ、異世界にいる魔王を倒してもらおうかな。」

こいつ、俺の話を全く聞いていない。しかもいつの間にか魔王を倒すことにもなっている。

俺には夏休みの課題も家族も学校も、クラスにいる友達も、沢山残ってるんだ。それなのにここで引き下がるわけにはいかない。

「魔王を倒すなんて勝手に決めるなよ、俺だって帰ってやることがあるんだ。神様なら魔王だって倒せるだろ?俺に任せずに自分でやってくれ。」


「そんな意地を張らないでよ、異世界に行けるんだよ?今までにない体験だと思うけどね。神様って実はそんなに世界に干渉できないんだよね、だから君を頼るしかないんだ。」

そんな勝手なことを言われたって、俺にどうしろっていうんだ。

「仕方ないね、魔王を倒すために君の好きなものを上げようじゃないか。それなら気が進むだろう?何か欲しい力を言ってごらん?」


「早く元の世界に戻る力が欲しい。それだけだ。仮に魔王を倒しても、元の生活に戻れる保証もないんだ。何をもらおうが気が進むわけがないだろう。」


「そうだねえ、みんなは使命に対してそこまで消極的じゃなかったからね。仕方ないね、魔王を倒したら元の世界に返してあげないこともないよ。でも、もしかしたらこの世界が気に入るかもしれないよ?まぁ、とりあえず次に会うのは魔王をたおしてからってことだ。それでで、君は何が欲しいの?早く教えてくれないかな。」

みんながこいつにそそのかされて異世界に行ってしまったのだということが目に見えてしまう。みんなはそんなにも元の世界が嫌だったのだろうか。俺だって、いやなことは沢山ある、でも、すべて捨ててまで異世界に行くようなほどではない。おれも、異世界に行ってしまおうか…

だめだ。

そんなことはだめだ。

どれだけ嫌な世界であったとしても、そそのかされて転移して神隠しなんて、みんなの家族を、友達を、いろんな人たちを悲しませるわけにはいかない。何年も一緒にいた家族が、知り合いが、こんな頭のおかしいやつの気まぐれで消えてしまうなんて嫌だ。だから、おれがみんなを助ける。魔王だって倒して、みんなと一緒に元の世界に帰るんだ!

「お前の与えられる中で、最も強い力を俺にくれ。」


「急に力を欲しがったと思ったら、欲張りなんだね。」


「お前のわがままで連れていかれたみんなを取り戻すんだ。だから、俺もわがままを言う。それだけだ。魔王だって倒してやる。世界だって救ってやる、だから一番強い力をくれ。」


「覚悟を決めたみたいだね、あげないと今ここで僕が倒されてしまいそうだよ。わかった、君には、勇者の力を上げよう。只の転移者ではない、勇者だ。君が本当に世界を救えるか、楽しみにしてるからね。」

―ギュオンッ!!!―

 神の手から出た光が広がり、俺の中に入ってくる。


 「うっ、体の中が熱い。」


「よかったね、それが勇者の力だ、でも、何ができるかは言わないよ、言ったら簡単に魔王を倒してしまいそうだからね。なんたって僕の与えられる最強の力だ。簡単に死んでもらっちゃ困るからね。」


「しかし、まさかここまで反抗されるとはね、神である僕にここまで言えたのは君が初めてだよ。さぁ話を続けてもいいが、君は勇者なんだ、そろそろいかなきゃ、じゃあ、がんばってね。」


「おい、まて、まだいろいろ聞くことがある、みんなはどこへ…」

―ビュンッ!―

 気が付くと俺の体は空の上に浮かんでいた。

「おい、どうしてなんだ、異世界転移系というのは陸の上から始まるものじゃないのか、あの神様、あれだけかっこつけて送った割にこのままじゃ死んでしまうじゃないか、どうしてくれるんだ!」

 空間を切り裂きながら俺の体は下へ下へと落ちていく。鼓膜が破れそうなほどの風の音が聞こえる、全身も引き裂かれてしまいそうだ。身動きが取れない、せっかく勇者の力をもらったのに、何もできない。ただ落ちることしかできないのだ。

 くそっ!あの邪神め、俺が反抗したからこんな仕打ちにしたのか!?

 そんなことを考えているうちに、大地は着々と俺の視界の中で大きくなっていく。

 おかしい、俺は仮にも勇者の力をもらった存在なんだ。それなのにこんな最後はあっけなさすぎるだろ、思い人に何も伝えられないまま終わるなんて、そんな…

「うわああああああっ!まだキョウちゃんに告白もしてないのにっ!うおおおおおおぁあああああああっ!!なんとかなれえええええええ!」

 なさけなく叫ぶしかない最悪の勇者の俺を片目に、大地は俺をひきつけていく

「勇者なんだろ!?最強の力なんだろ!?空を飛ぶ力ぐらい用意してくれよ!このまま変な場所で死にたくない!うわあああああああ!!!!」

 思い残すことしかないのに、俺の体は大地にある湖のような場所へ向けて落ちていく。湖に落ちることが人生最後の不幸中の幸いなのか?そんなわけはない、体は見つからないなんて、本当に神隠しと同じじゃないか!痛みが少ないように思えるが、落ちたらただ即死するだけだ、いやだ、いやだ…なんでこんな目に…

あと少しで落ちてしまう、本当に終わってしまうんだ、俺の短い人生が

 いやだ

 いやだ…!

「うわあああああああっ、いやだああああああああああああっ!!!!」


「風のしらべよ、さざめけ!スローラ!」

―ビュンッ!―

 男の声が響いた後、突然下のほうから突風が吹いた。

「だれだ!?なにがおこって、うっ、うわあああああ!」

―ドッシャーン!―

 突風が上に吹いたおかげで落ちるスピードが弱まり、俺は減速しながら水の中に落ちていった。


「おご、ごごごごっ」

 水の中に沈んでいる俺を助けようとしているのか、人影が見える。

「エルド様、私が助けてきます。」

おぼれて身動きが取れない、いくら神がこの世界に干渉できないからとはいえ、こんな高いところから落とされたんだ。許せるものではない、九死に一生を得たといってもいいが、これなら気絶したほうがよかった、おぼれて器官に水が入りまくっている。

「うごっ、がががががが、ぶふぉう、うがッ!」


「大丈夫ですか!?」

 誰かがこちらへ泳いできてくれた。

「おぼれてるじゃないですか、しっかり、意識を保って!私の手を握って!」

 前から来たその人物は手を伸ばしてきた。助けてくれるみたいだ。

 俺はその手をつかみ、陸まで引き上げられた。

「ゲホッゲホッ!ううぅっ!」


「無理しないでください、エルド様が助けてくれますからね。」

 前がうまく見えない、転移して早々こんな目に合うとは、ダサすぎる。勇者失格だ。

 俺は水のしずくでぬれた目を凝らして、助けてくれたお礼を言おうと、相手の顔を見た、が。

 「猫の、耳!?」

 助けてくれた彼女は、人間の姿をしているのに、猫の耳と尻尾がついていた。

 「あまり動かないでください、お体に障りますよ。」

 

 やっぱりここはファンタジーの世界だった。目の前に、漫画やラノベで何度も見た猫耳の女の子がいる、しかも、この服は…メイドだ、猫耳メイドがいるんだ!

 まさか転移早々萌えファンタジーの代名詞である猫耳メイドに出会うなんて驚きだ。正直下劣かもしれないが感動としか言いようがない。一定の層からすれば絶対に届かない夢そのものなのだから、驚きが消えない。

 そんな風に猫耳に思いをはせていると、後ろから帽子をかぶった男が歩いてきた。

 「大丈夫かい?空から落ちてきたようだが、すまない、今回復魔術をかけよう。話はあとだ。」

 どうやら、落ちた痛みと肺に入った水でむせている俺を魔法で回復してくれるらしい。

 「天のしずくよ、傷をいやせ!キュアラ!」

 手首の周りに光の輪が現れ、てのひらの前へと放出される。魔方陣のような模様を形成しているそれは、てのひらの前で光りながら回転している。

魔方陣から緑の光の玉が現れて、俺の体の中に入ってきた。とても心地がいい。痛みや肺に入った水が消えていく感覚がする。

 「うっ…あっ、もう痛くない。ありがとうございます。」

 

 「気にしなくていいさ、うん?君、面白い服を着ているな。それに空から…わかった、興味深い話も聞けそうだからね、さっきまであそこのコテージで釣りをしていたんだ。ついてきてくれ。」

俺を治した魔法使いの男がそういうので、猫耳の女の子と三人で湖にあるコテージへと向かった。

 「濡れているようだから、私の服を貸そう。」

 「あ…あの…すみません、何がなんやらで…」

 「謝ることはないさ。」

 そういうと男は小さな袋から服を取り出し、貸してくれた、陰に隠れつつ服を着替えて、部屋の中に入った。

 コテージの電気を魔法使いの男がつけると、女の子は泳いで濡れた体を洗いにお風呂へと向かった。

俺と男は木の椅子に座り、机を介して向かい合った。

 「さっきは助けてもらってありがとうございました。あの、それで、その、ええと…」 


「それほど緊張しなくてもいいさ、なんせ空の上から落ちてきたんだからな、戸惑うのも仕方ない。私の名前はエルド。旅を続けている魔法使いだ。今は湖で魔法の研究をするためにこのビュールの森に来ている。さっき君を助けたのはメイドのアリスだ。私とともに旅をしている。それで、君の名前は?」


「エルドさん、よろしくお願いします。ええと、俺の名前は枯木トウゴって言います。それで、その…」


「まぁまぁおちつきなさい、ゆっくりでいいから話を続けよう、トウゴ君。君はなぜ空から落ちてきたんだい?」


「ええと、実は俺、この世界の人間じゃないんです、友達と遊んでたら、いつの間にか変なところにいて、神様にあって、異世界に行けって言われて、それでこの世界に来たんですけど、気づいたら空の上で…」


「別世界からの転移?そんな話、聞いたことがないな、しかしあの高さから落ちてくるというのも説明がつかないな、その話、よく聞かせてもらおうかな?」


「はい、神様は、友達もみんな異世界に送ったっていうんです、でも俺が友達を返してくれって言っても返してくれなくて、帰りたいなら魔王を倒せって言ったんです。そしたらなんかみんなそれぞれに力を与えた、とかいうから俺が最強の力を望んだんです。そしたら勇者の力を上げるとか言って、光に包まれて、でも正直実感なくて…それで、気づいたらこの場所に落ちてきて、正直何が何だかなんです。これからどうすればいいのかもわからないですし…えっと、落ちてきた人を見てませんか?とりあえずみんなに合わないと、みんなを助けないといけないんです。」

 おれは突然の出来事を伝えるのにきちんと整理ができず、とまどいながらも友人を知らないか聞いた。

 「六人も別世界の人間が転移しているというのか、なんとも不思議な話だな、そして、神が力を与えて魔王を倒せ、と言ったのか、どれも全く現実味のない話だな。しかし、獣人のアリスを見て驚いていたところを見るに、可能性はあるかもしれないな。魔王がどこにいるかは聞いていないのか?」


「魔王の居場所も、みんながどこに行ったのかも知らないです。ここがどこなのかもわからないのに、魔王を倒すなんて、正直無謀ですよね…」


「いや、魔王の居場所自体は、私でも知っている事実だよ。魔王は、アクトラン大陸に君臨している。」

「そうなんですか?なら、一刻も早くいかないと!」


「まぁそう急がないほうがいい、君は今いるこの大陸がどこなのかを知っているのかい?」


「いえ、何も…」


「この大陸はこの世界サウンドラの最西にある第一大陸カザヤーラだ、そして、魔王がいるのはその反対、最も離れた第六大陸アクトランだ。」


「第六って、そんなに大陸があるんですか?」


「ああそうだ、サウンドラは六つの大陸とたくさんの島々の集まりによって成立している。君は知らないようだから説明しよう。第一大陸がいま私たちのいるカヤザーラ。第二大陸がパーラ、アレス、ビリアラの三国家によって成立しているラーメラス。第三大陸がプレシアンたちの住むゴンド。第四大陸が未知の大陸ルナ。第五大陸が機械科学の大陸テクノム、浮島とたくさんの島々の集まりがシュリ諸島、そして第六大陸がさっき言った魔王のいる大陸アクトランだ。」

 

「そんなに大陸があるなんて、みんな、大丈夫なのかな…もしかしたら、みんな別々の大陸にいるのかも…」

俺がいる大陸以外にも、たくさんの土地があるという事実に、異世界の広さを実感してしまった。もしかしたら、水川さんにもキョウちゃんにも、もう会えないのかもしれない。そう思うと、胸が苦しい。

「あの、冒険者になれば、この世界をすべて見て回れるんでしょうか?」

 冒険者であるエルドならこの世界の広さもわかるだろうと思い、聞いてみた。

 「確かに、世界中を回ることはできるかもしれないが、君の目的は魔王の討伐と特定の仲間六人を探すことだろう?長い年月もかかるだろうね、それに、モンスターもいるから、そう簡単な道のりではないことは確かだ。」

 「そんな…俺、何もできません…勇者だっていうのに力の実感もないし、魔王を倒してもみんなを探さなきゃ帰っても意味がない………エルドさん、僕を仲間に入れてもらえませんか!旅をしているなら、何か力になりますから、荷物だって持ちますから、おねがいです。」

 無理強いをするのは正直得意ではない、だが、そうやって迷っている暇はなかった。空から降ってきたことを知っているエルド以外には、こんな話をしても何の意味がないことが分かっていたからだ。何もしないまま終わるよりは雑用でも何でもいいから、無理なお願いをするしかなかった。

 「君を連れて行ってもいいが、私は冒険者だ。モンスターとも戦うしダンジョンにも行くだろう。そんな中で、いったいどう助けてくれるんだい?」


 「足手まといにしかならないかもしれないです、でも、料理でも荷物持ちでもいいんです、力になりますから!お願いします!このままみんなに会えないまま終わるなんて嫌なんです!」

 

 「君が勇者だという点を抜きにしても、力だけ持っている君では意味がないな、君の目的の果てには魔王を倒すという目的があるのだろう?私はどうもそこが気になっている。アクトラン大陸の魔王は君臨さえしていてもほかの大陸に影響は出していない、魔物と共存しているのは事実だが、アクトランの魔王を倒したら世界中で追われることになるだろう。それまでのリスクを犯して、わたしに魔王を倒させる気か?」

 悪事を魔王が働いていなくても、俺には帰らなきゃいけない使命がある。だから、ここで引き下がるわけにはいかない。

 「その時までじゃなくてもいいんです。すこしだけでもいいんです、俺、絶対に強くなりますから!お願いします。アクトランについたら、もう力は借りません、俺だけでやりますから。魔王を倒したら、絶対に恩返しをしますから、お願いします。」


 「本当にアクトランまでなのか?」


 「はい、約束します。」


 「仕方ない、カヤザーラだけ旅するのも楽しくないからね、第六大陸まで、付き合おうじゃないか、その代わり、第六大陸につくまでにどれくらい時間がかかるかはわからない、もしかしたら、何年もかかるかもしれない。それでもよいならね。」


 「本当ですか?」


 「ああ、それに、勇者の力や転移者というのも気になる。神の存在についてもね、研究の一環として君を見ているのもいいだろう、それに、私以外に空から落ちてきたのを確認した者はいないだろうからね、あと、荷物持ちはなしだ、君に任す間にアリスがやってくれるだろうからな。君にはしっかり戦って強くなってもらう。」

 エルドは意外と優しかった。いきなり現れた俺の妄言を信じてくれるというのは、この世界で何よりもありがたかった。

 「ありがとうございます。本当に、俺、エルド先生についていきます!」


「先生はやめてくれ、虫唾が走る、エルドでいい、君も若いだろうが、私もそこまで老けてはいないからな、もう緊張はよしてくれ。」


 「エルドさん、俺絶対に強くなりますから、よろしくお願いします!」

 こうして、俺はエルドについていけることになった。魔法使いが仲間にいるというのはファンタジーの定番のように思えてうれしい。

 「仕方ない、これから釣りの続きをするから、そこの部屋の中にある釣竿を持ってきてくれ、私は外にいる。」


 「わかりました、エルドさん。」

 エルドは俺を仲間として認めてくれた、それが何よりもうれしかった。この世界では独りぼっちなのだと思っていたが、それは早々に解消されそうだ。

 そう思いながら、後ろの部屋を開けて釣竿を取ろうとした、しかしドアを開けた瞬間。


 「バカッ、その部屋じゃない!」


 「キャーッ!!!」

―ゴッ!!!!―

褐色の健康的な脚から俺のみぞおちへと蹴りが入った。その拍子に彼女の白い魅力的なものが目に入った。

「ぐふぉうっ!!」

 「し、白のっ…うっ…」

 俺の体は、宙へ浮き、そのまま背中から地面に落ちた。

第一話 「転移」 おわり


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