「オリジナル」はもう不可能ですよと主張するついでに自作を宣伝する
よく目にする言葉「オリジナリティ」「独創的」。
「テンプレ展開」もよく目にしますね。
「テンプレ展開はもういい、オリジナリティのある小説を読みたい」。こう嘆くかたをたまに見かけます。
しかしこれだけの小説がある世のなかで、まったくあたらしいものをつくることは無理だと思います。
「でも、婚約破棄という新ジャンルは生まれたじゃん。あとから破棄されたヒロインの正当性がわかるのだって、最近できたテンプレだろ」
というそこのあなた、聖書を読んだことはありますか?
マリアは夫に不義の妊娠を疑われ、天使のとりなしでなんとかなっています。この辺りなんて誤解からの婚約破棄→名誉回復でハッピーエンドに近いものがあります。
近い時代のものだと、ハーレクインロマンスにはこの手の展開は寧ろつきもの。古い作品でも「誤解から一回婚約解消or離婚orお付き合い解消→誤解が解けてハッピーエンド」はあります。
「異世界で知識チートは?」
ありますあります。「アーサー王宮廷のヤンキー」読んだことないですか? 不勉強ですね。
あれはタイムスリップものだから、といわれるのでしたら、「ガリバー旅行記」はどうでしょう。
「主人公がチートスキルで成り上がるのは?」
スキル、と明示されてはいませんが、桃太郎や金太郎などは身体能力がチートですよね。それに、多くの童話、民話の主人公達は、特別な力や不思議なアイテムを持っています。
結局、童話民話の段階で、大概の話のテンプレートは出来ているのです。
その上に更に、これまで書かれてきた膨大な小説群がある。
となると、「オリジナル」はもう不可能でしょう。
自作品を引き合いに出して、童話や創作物などとの類似性と、オマージュもとを書き、いかにオリジナリティが乏しいかをさらしたいと思います。
「アストリ」N5047HQ
「塔に閉じこめられる」
マレーン姫、ラプンツェルなどにある展開。
「母からの冷遇」
白雪姫、シンデレラなどにあるモチーフ。
「横暴な男性君主」
これもまた、多くの童話や昔話に出てきますね。
「カラクリ娘は思い出す」N9469HQ
「文明が滅亡するほどの戦争」「荒廃した世界」
北欧神話、キリスト教などの終末。
直接的なオマージュもとは未来少年コナン、レディプレイヤーワン辺り。
「改造人間」
ダーク・エンジェルが直接的なオマージュもとです。
「TS転生主人公、“百合”を目論む!!」N3685HP
「男性が女性に転生」
紅綫。
「女同士で位を争う」
オマージュもとは後宮小説、アンジェリーク、アルバレアの乙女。
「魔法が閉じこめられた水晶」
KING'SFIELDシリーズ。
「装飾品に魔法がこめられている」
シャドウタワー、エヴァーグレイスシリーズ。
どうですか。オリジナリティなんてないんですよ。
だからテンプレを書きたいひとはどんどん書いたらいいと思います。オリジナリティがどうのこうのいわれても、気にすることはありません。
ただし、「型」が同じでも「色」をかえることは出来ます。
テンプレートはそのままで、細かい部分を変えてしまえばいいのです。
或いは、複数のテンプレートを組み合わせて、あたらしい「型」をつくってしまうのも手でしょう。
拙作「金の糸を紡ぐ娘と、三人の糸繰り女(N0932HR)」は、「糸繰り三人女」「ルンペンシュティルツヒェン」というふたつの童話から着想を得て書いたものです。
すでに完成された話であるふたつの童話をくっつけて、わたしにとって必要のない要素をそぎ落とし、適当なものをつぎたし、ぎゅっとまとめて形にしたのです。
もとが完成された話なので、そこを改変するのは勇気が必要ですが、「こうだったら面白いな」「これだったら、こういう世界観には合うかな」「ここがこうなほうがわたしは好き」という気持ちに従って書けばできます。
なにか「あたらしい」「オリジナリティのある」ものを書きたいかたは、童話や神話などを読んでみるのもいいのではないでしょうか? そこにはネタが転がっていますし、あなたにとってあたらしいテンプレートもあるかもしれません。