変態のほうがマシ?
この物語はフィクションです。
「結局のところさ、変人と変態ってどっちがやばいやつなんだろう?」
閑散としたキャンパス内の食堂で、深刻そうな表情をした男子大学生が二人座っていた。
一人はやせ形で、顔は整っておりイケメンに分類されるであろう容姿をしている。
もう一人はふっくらとした身体をしており、チェック柄のシャツをズボンに入れ込み、赤いバンダナを頭に巻いてリュックを背負っていた。
やせ型イケメンが口を開いた。
「変人ってさ、要は人とは違うことをやってるやつのことでしょ?奇声を発したり、変な服装をしていたり、座ってるのにバッグからってるやつとかさ。」
「でも変態ってのは、ほぼ無害なんだよ。たまにネジがトんだ変態もいるけど。ふつうは生活の中に溶け込んで、そして自分で慰めるんだ。誰かの迷惑になんて本来ならないはずなんだよね。」
「だから変態と周囲から思われようと、それは不誠実なんかじゃない。むしろ誇るべきだと思う。」
落ち着いた口調と抑揚によって、やせ型イケメンの説得しようとする雰囲気は十分に伝わってきた。彼が言っていることは正しいかどうかは定かではない。しかし、適当に受け流せるような雰囲気ではなかった。彼の一言一句には熱がこもっており、相手の真意をうかがっているようなそんな気がした。
そうして彼の口が動く。
「だからこそ君に問いたい。」
彼の今までの熱弁は、すべてこの質問のために。
溜めにためた彼の口はシンプルなことばを紡いだ。
「女子高生に膝枕してもらうのって普通のことだよね。」
僕のことを変人認定して、質問をしたということに気づくまでそう時間はかからなかった。
奪った僕の時間を返せよこの野郎。
それから僕がカバンを椅子のそばに置くことはなかった。
ご高覧ありがとうございました。