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ねぇ、お姉様、私と婚約者取り替えっこしません?

作者: もちのき

 皆さまごきげんよう!私はラシュリー公爵家の次女であるアマンダですわ!ラシュリー公爵家は建国以来王様にお使えしているそれはそれはとてもえらい家柄ですの!


 その中でも抜きん出て優秀、そして輝かしい美貌を放つ方こそラシュリー公爵家の隠れ財宝であるお姉様!シトリー姉様ですわ!その辺の石ころなんて目じゃないんですのよ?


 ……あら、やだ。こんなこと言ってはお姉様に叱られてしまいます。淑女たるものお淑やかにしなくては。


 そんな完璧なお姉様。でも、私最近一つの不満を抱いてますの。なんなのですか!?その男は!


 幼い頃お姉様にベタベタひっついていたくせに、最近ではお姉様がどれだけわかり合おうと努力してもすげなく袖にする第一王子レオナルド!あんなんだったらまだ腹黒第二王子の方が幾分かマシですわ!!!


 大体、あいつ昔お姉様のこと好き好き言ってたくせに私と間違えたんですのよ?さいてー!!ですわ!


 そんな男お姉様に似合わない!!そこで私思いつきましたの。なら、お姉様の婚約者をすげ替えてしまえばいいのだと。


「というわけでお姉様!レオナルド王子はとてもじゃありませんが、お姉様に釣り合わないですわ!私と交換してくださいな!」

「アマンダ……またあなたはそんなことを言って。これは政略結婚なのよ。そんな勝手な都合で変えられるわけが……」

「お父様ぁ〜わたくしレオナルド王子と婚約したいんですのー。代わりにお姉様にはジャンをあげますわ」

「そんなこと認められるわけ」

「いいだろう!他でもないアマンダの頼みだからな!」

「お父様!?」


 お姉様があり得ないという顔でこっちを見ている。そんな顔もなんて麗しいのでしょうか。


「さすがお父様!わたくしお父様のこととても尊敬いたしますわ!」

「そうだろうそうだろう」


 ふっ、ちょろいですわ。


「ということで、お姉様私の婚約者はレオナルド王子となったので、お姉様はジャンのことよろしくお願いいたしますわね?」

「アマンダ……なにがということでなの……。ルピエール様にはちゃんと相談したの?」

「してませんわ!でもジャンなら分かってくれますわ!」

「そんなこといって……。私はどうなっても知らないわよ?」

「ジャンはとっても優しいのです!お姉様の次に好きですわ!だからきっとお姉様のことも幸せにしてくれるはずです!」

「……聞いてないし。はぁ」


 お姉様が深くため息をついておられます。そんな姿もアンニュイでとてもお綺麗ですわ〜。


「では、早速取り替えよう」

「えぇ、お父様!」


 翌日、学園に来ると早速レオナルド王子は最近お気に入りの男爵令嬢といちゃいちゃしていました。


「レオナルド王子殿下、この度婚約者となりましたアマンダ・ラシュリーと申します」

「なんだ、シトリーまたレミをいじめるつもりか!?」

「レミこわぁい」


 お姉様がそんな石ころいじめるわけじゃないでしょう!!


「あぁ、レミかわいそうに。あんな怖い女は放っておいてあっちに行こう」

「レオナルド様ぁ」


 なんなんですの!?あの人たちむかつきますわ!


 しかも、私と姉様を間違えるなんて!こんなの石とダイヤモンドを見間違えるようなものですのよ!?


 怒りまくった肩を落ち着けるために深呼吸をする。


 いけないいけない。ここは外ですのよ?お姉様のように淑女らしくラシュリー公爵家のものとして恥じぬよう……やっぱむかつきますわ!


 大体婚約者ということを抜きにしても、家臣の顔すら覚えていないなんて。しかも、今日陛下から婚約者が変わったことは聞いているはずですのに。これは為政者としても問題ですわね……。


「やぁ、アマンダ嬢」

「あらあら、これはこれは、レオン殿下。ごきげん麗しゅう」

「アマンダ嬢、貴重なあなたの時間を少し僕にいただいてもいいかな?」

「もちろんですわ」


 金髪碧眼の輝かしい王子にエスコートされ、生徒会室に入った。扉が閉じた瞬間勢いよく手を振り払う。


「よくもおかしなことをしてくれたな!!アマンダ嬢!!」

「あらあら〜なんのことかしら〜」


 金髪の髪の毛を逆立てて猫のように威嚇している王子を尻目に口笛を吹く。


「下手な口笛をやめろ!耳障りだ!」

「あら、ジャンはまるで小鳥の囀りのようだって褒めてくれましたわよ?」

「あいつの目と耳にはフィルターがかかってるからな!ってそんなことはどうでも良いんだよ!シトリーがジャンと婚約ってどういうことだ!?」

「どうもこうもありませんわ。お姉様とあの方はあまりにも不釣り合い。だから取り替えたそれだけのことです」

「ないとは思うが万が一にでもお前がレオナルドと結婚してしまったらどうするつもりだ!俺もシトリーと一生婚姻できなくなる!」


 腹黒王子が頭抱えてますわ。


「元々レオナルド王子とお姉様は婚約してたから、貴方とは結婚できませんでしたわ」

「できそうだったんだよ!もうすぐ俺が第一継承権をもつ王子になって、シトリーと結婚できそうだったのに……!こうなったら仕方ない。なんとしてでも、あいつを蹴落とすぞ」

「言っていることは意味が分かりませんが……蹴落とす目的は同じですわね!協力してあげますわ!!」

「俺がお前に協力してんだよ!……まぁ、いい。今まで集めてきたあいつの仄暗い噂を叩けばホコリが出るはずだ。これ以上ないぐらいに追い詰めるぞ!」

「えぇ!」


 集めたらそれはまぁでてきましたわ。わんさかと。私達はそれを国中の貴族が集まる学園の卒業パーティーで披露することにしました。


「シトリー・ラシュリー!!お前をレミをいじめた罪で婚約破棄とする!」

「はい」


 呼ばれたのは婚約者でしょうから、お姉様ではありませんが広場に出ます。私の顔を見て皆さんざわめいていますわ。それはそうでしょうとも。だって私お姉様じゃありませんもの。


「シトリー!お前は公爵令嬢であることをいいことにレミを多く虐げてきた」

「その前に少しいいでしょうか。レオナルド殿下」

「人の発言を遮るとは何様のつもりだ!……まぁ、いい。貴様と喋るのもこれで最後になるだろうからな」

「ありがとうございます」


 えぇ、もう2度とその変なツラを拝むことはありませんわ!


「まず私はシトリーではありません。アマンダ・ラシュリー。今の殿下の婚約者ですわ」

「な、なんだと!嘘をつくな!」

「嘘はついておりませんわ。会場の皆さんの顔をご覧ください」


 殿下はたった今訝しげな目を全員から向けられていることに気が付いたのか、少し足を半歩退けた。


「そ、それがどうした!じゃあシトリーとアマンダの2人でやったのだろう!」

「いいえ、違います。そしてその口でお姉様のことを呼び捨てにするのはやめてほしいですわ!お姉様はもう殿下の婚約者ではありません」

「ひっ、」


 あら、私としたことが穢らわしい口でお姉様のお名前をあまりにも汚されるものですから、殺気立ってしまいましたわ。


「お兄様」

「なんだ、レオン。今お前の発言は許可していない」

「今から話すことは、先程アマンダ嬢がおっしゃったことに関係することなのです」

「ふんっ、まぁ、いい。無能が2人揃ったところで、何かが起こるわけでもない。話してみよ」

「ありがとうございます」


 あ、今腹黒王子の青筋がピキッとたちましたわ。これはキレてますわね。


 淡々とそして逃げ場のないように腹黒王子がレオナルド王子……いや、石ころの罪状を読み上げていく。


 あぁ、石ころが焦ってますわ!それもこれもお姉様を軽んじるから悪いのですわ!まぁ、こんなやつに家臣として傅くなら、まだ腹黒王子の方がマシですわね。


「……以上となります。衛兵」


 衛兵がレオナルド王子を捕まえる。


「おい!何するんだ!俺を誰だか分かっているのか!第一継承権をもつ王子だぞ!」

「あぁ、その継承権ですが先日正式に陛下より私が受け賜りました。なので、安心していいですよ。レオナルド」

「レオン……!貴様!」

「じゃあな、無能。大人しく牢獄に埋まっておけ」

「最後の最後で、腹黒が出てますわ。腹黒王子」

「いいんだよ。最後ぐらい。今まで散々馬鹿にされたしな。それより不敬罪で捕まえるぞ」

「何のことかしら」


 おほほと笑う私を腹黒王子が見つめたあと、人好きのする笑顔を浮かべる。


「皆さん、お騒がせしてしまい申し訳ありません。先ほどお話しした通りレオナルド王子は廃嫡となり、私が第一継承権を持つ王子となります。そして、シトリー・ラシュリー公爵令嬢こちらにきてください」


 お姉様が戸惑いとそして期待の表情を浮かべながら壇上へあがります。あぁ、なんて美しいのかしら。


「シトリー嬢、一生あなたを守るのでどうか私の隣にいてくださいませんか?」

「はい、喜んで」


 会場中が拍手で溢れる。悔しいですけど、お姉様が幸せそうなら認めてあげなくてはいけませんわね。よりによって腹黒王子なんかに!とは思いますけれど。


「アマンダ」


後ろを振り返る。


「ジャン!もう留学から帰ってきたんですわね!」

「あぁ」


 相変わらずかっこいいですわ……。茶色の髪に瞳、そこに浮かぶ優しい笑顔。


「ねぇ、少しおかしなことを聞いたんだけどアマンダと僕が婚約破棄してたって本当?」

「えぇ!本当ですわ!お姉様と交換してたんですの!」

「そう、交換。……ねぇ、アマンダ」

「なにかしら?」

「君の自由奔放さは好きだけど、少し分かってもらわないといけないようだね」


 その後あれやこれやとジャンに屋敷へ連れて行かれ、お姉様と腹黒王子との結婚式に出る時には、私のお腹には命が宿っていました。


「お姉様!おめでとうございます!」

「ありがとう、アマンダ。体大丈夫?」

「えぇ!大丈夫ですわ!ジャンもとても優しくしてくれてますの!」

「優しく……ね。ルピエール様、私の可愛い妹をくれぐれもよろしくお願いしますね?」

「えぇ、もちろんです。王太妃殿下」

「そういえば、お姉様とジャンは婚約していなかったのですか?」

「えぇ、ジャン様に連絡だけしてね。……私が婚約者になんてなったら殺されるわ」

「お姉様?」

「いえ、なんでもないの。お幸せにね」

「はい!お姉様も!」


 再び壇上にあがり、腹黒王子と幸せそうに微笑むお姉様を見つめる。ウエディング姿のお姉様は地上に舞い降りた女神のようですわ……。


「アマンダ、僕たちもいつか結婚式をあげようね」

「えぇ!もちろんですわ」


 結婚式よりも先に子供ができたけど、私はお姉様の幸せな顔を見れて、優しい旦那様に囲まれてとても幸せですわ!


評価☆☆☆☆☆、感想お待ちしております!

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[良い点] 内容がスラスラと頭に入り、映像がイメージできます。文章にリズムがあります。
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