00043 : 式って、こんな感じなんだねっ!
いよいよ入学式が始まった訳なんだけどさ、異様な緊張感が会場に漂っている。
異変を感じた入学生である1年生の中には泣き出す子もね。
先生達の顔も引き攣っているし顔も蒼いね。
大丈夫かなぁ、倒れなければ良いんだけど。
時間となり式が始まる司会の先生がプログラムを説明し、式が進行して行く。
在学生の歓迎挨拶で小学6年生の女子生徒が壇上に立って歓迎の言葉を。
詰まり詰まりながらだけど、何とか告げ終わる。
良く言えたよなぁ~、最早、小学校の入学式レベルで挨拶を告げるレベルではないかんな。
挨拶を終えた後は泣いてたのが印象的だった。
そして校長の挨拶何だけど、非常に遣り難そうだ。
小学校と言う組織のヒエラルキーではトップである校長ではあるんだが…貴賓が悪過ぎる。
町長レベルや県会議員レベルならば良かったんだが、なにせ天帝様と大統領が貴賓席へとな。
蒼白になり汗を拭き拭き告げた歓迎の挨拶は、非常に短いものだったよ。
学校名物の長い校長挨拶が直ぐに終わって良かったともね。
むろん本来は長々と話すタイプの先生なのだが、今日は異様に短かったね。
同じように町長の挨拶も短時間で済み…何故か大統領からの挨拶が。
まぁ、場を読んでか、短い挨拶ではあったけどね。
そして…何故か天帝様からの挨拶が!
いやいや、庶民が天帝様からお言葉を賜るのは稀。
大きな大会や特別な場でないと有り得ないことなんだよ。
小学校の入学式でお言葉を賜れるなど前代未聞と言えるだろうね。
「今日、この晴れの日を迎えた君達へ朕より祝いの言葉を送ろう。
入学おめでとう。
君達の同級として朕の友が入学するにあたり、本日の式を見た訳だ。
幼い君達と彼が共に歩み続けられるかは分からぬ。
だが、この式へ参加できたことを誇りに励んで欲しい。
長話は好かぬでな、朕からは以上である」
本当に短いなっ、をいっ!
それにぃっ、俺が共に皆と歩み続けられるか分からないって…どゆ意味?
何かあるんかいな?
そんな意味深な天帝様からのお言葉を承ってから式は終わったよ。
これで座り心地は非常に良いけど、非常に居心地の悪い特別席から解放されるね。
ホント、なんで晒し者にならなあかんのやっ!
式の後は順番に教室へと移動して行く。
俺は1組なので移動は一番最初となるみたいだな。
担任の先生が先導しての移動だけど、高学年の生徒が何人か補助に付いてくれてる。
まぁ、普通は幼児レベルの連中だからね。
並んで歩くのも侭ならないのが普通ではある。
あるのだが…このクラスへは、俺と一緒に幼稚園へ通った者達が集められているようでな。
俺は別に意識したつもりは無いのだが、俺と親しかった子達は全て早熟って良いほどに優秀なんだよ。
入学したばかり1年生とは思えない程に統率がとれた動きを見せている。
むろん、全員が同じ幼稚園から入学した者達では無いのだが、周りへ合わせてしまうようでな、自然とね。
その後は教室へと入って自己紹介をした後で教科書とプリントが配られる。
自己紹介と言っても幼児が行うことだ、実にたどたどしかったが、ほっこりもさせられるな。
ただ、俺と一緒の幼稚園からの卒園生達はシッカリと自己紹介していたよ。
話し方や考え方から見ると、3年生~4年生レベルだと言えるだろうな。
まぁ、実際に、そのレベルの知識は有していたりする。
いやね、幼稚園で色々とせがまれてねぇ。
だからさ、小学校で習うレベルの内容を面白可笑しく語ってみせたんだよね。
特に優秀な女の子が2人。
共に中学1年生レベルの知識を身に付けちゃったりする。
そして、非常におしゃまさんってね。
彼女達が俺へと纏わり付くもんで、他の女の子達が真似をしてねぇ。
俺の話しが好きって…将来、俺と結婚するそうな。
いやね、彼女達の父親が悔しそうに「パパと結婚するって言ってたのに…」っとか言ってたけど…知らんがなぁ。
そして俺の自己紹介の番とね。
升田の頭文字は‘マ’だから、結構後ろの方だったよ。
「初めまして、升田 慶と申します。
大鷹幼稚園からの入学です。
見ての通り体が大きいですが、間違いなく君達と同い年なので、よろしくお願いしますね。
ある理由で天帝様と親しくさせて頂いておりますけれど、私自身は皆と同じ庶民です。
特別な身分は有しておりませんので、安心してください。
家は団地奥に在って、そこから通っています。
家へ隣接して設けられている研究所の名誉所長も兼任していますが、狩人の升田家ゆかりの者でもあります。
祖父からは、将来狩人と望まれていますが、今の段階では決まってませんね。
そんな私ですけれど、一緒に学べたら幸いです」っと、自己紹介を終える。
したらね、担任の先生がさ。
「い、色々と突っ込みたいけど…君、升田君」
「はい、なんでしょう?」
「間違いなく、一般庶民では無いわよ、それ」
いや、失礼なっ!
何処へでも居る一般庶民ですよ、僕ぁっ!
「いやいや、普通ですよ、普通」
「え~っとぉ…無理があるからね。
取り敢えず、一年間は大人しく、ねっ」
どう言う意味やねんっ!
そんな感じで入学式が終わり、帰ることにね。
天帝様と大統領は既に帰られている。
そら忙しい方々だからねぇ。
校門では新聞記者とか雑誌記者がたむろして、出て来た父兄にたいして取材攻勢を掛けている。
俺と両親は麗輝様と共にリムジンで帰ったから巻き込まれなかったんだが…
困った連中だなぁ、ふぅ。




